総予算は5.7兆円?岸田内閣の注目政策をピックアップ

「デジタル田園都市国家構想」とは?3つのポイントでわかりやすく解説

#DX

「デジタル田園都市国家構想」

 

最近、ニュースでこんな言葉を目にしたことはありませんか?岸田政権が掲げる「新しい資本主義」における経済成長戦略「デジタル田園都市国家構想」は、推進交付金などのべ5.7兆円(※)にのぼる大規模な予算額で注目を集めています。詳細は後述しますが、この規模の予算が動くということは、IT系企業や地方都市の公的機関で働く人にとって、思わぬところで影響を受ける可能性がある大規模政策です。今回はこのデジタル田園都市国家構想についてわかりやすく解説します。何を目指しているのか、私たちの暮らしはどう変わるのか、等のポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

※2021年補正予算と2022年当初予算合計

 

「デジタル × ローカル」で成長へ デジタル田園都市国家構想の基本を紹介

 

 

内閣官房公式サイト「デジタル田園都市国家構想実現会議」ページは、デジタル田園都市国家構想について以下の説明から始まります。

 

地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、構想の具体化を図るとともに、デジタル実装を通じた地方活性化を推進するため、デジタル田園都市国家構想実現会議を開催します。

 

 

上記をざっくりとまとめてしまえば、デジタル技術で都市と地方の格差の解消を目指す政策を意味します。産業や教育施設など、都市部に集中している都市機能をデジタル技術によって変革し「地方の魅力をそのままに、都市に負けない利便性と可能性」を目指す政策がデジタル田園都市国家構想です。

 

例えば地方都市から都会へ人口が流出する理由として、雇用が少ない、大学などの教育機関が無い、などの理由が挙げられます。これらの課題をデジタル技術を使って解消し、かつ地方都市の魅力を向上させることを目指しています。

 

デジタル田園都市国家構想で暮らしはどう変わる?

 

 

働き方

デジタル田園都市国家構想で推進される事業のひとつが、サテライトオフィスの整備です。プログラマーなどIT系の職種にとっては、地方都市を離れずに仕事ができます。また、スマート農業(ロボットやAIを活用した農業)やスマートヘルス事業なども推進されており、デジタル技術を活用した雇用が生まれていくと予想されています。

 

暮らし方

デジタル田園都市国家構想は働き方だけではなく、地方都市でのライフスタイルにも大きな影響を与えます。代表的な例がスマートシティです。例えば、5G通信による遠隔診療や自動走行車の送迎などの先進的なサービスを共通プラットフォームで利用できる、高齢者や子育て世帯が暮らしやすい街づくりなどが想定されます。

 

デジタル田園都市国家構想 3つのポイント

 

①地方格差の是正

高齢化や過疎化、教育格差などは日本社会全体の課題ですが、特に地方都市はその影響が甚大です。その一方で、近年はリモートワークの普及により地方移住が注目されつつあります。デジタル技術を活用して課題の解決を目指す「ローカル×デジタル」の施策を推進するため、様々な補助金・交付金が予定されています。

 

②官民問わず、さまざまな業界をIT技術で変革

デジタル庁の資料(※)によると「健康医療、教育、防災、モビリティなどの主要サービス分野に関しては国が必要なツールや基本パッケージを開発し、積極的に地域に提供していく」と提言されています。さらに地方大学や高専を活用して先端人材を育成する点も強調されており、いわゆる「官・民・学」を横断して多額の予算が導入されると予想されています。

 

デジタルから考えるデジタル田園都市国家構想

 

③ウェルビーイング、持続可能性の考慮

デジタル田園都市国家構想の特色のひとつが、ウェルビーイングを意識した政策である点です。ウェルビーイングとは身体や精神、社会との関係性が良好な働き方・暮らし方を指します。GDP(国内総生産)など経済規模を測る指標とは異なる豊かさとして、近年では「働き方改革」の中で注目されるようになりました。デジタル田園都市国家構想では「ウェルビーイング指標を定期的に測定、(中略)恒常的に改善」と提言されています。つまり、今までは明確な指標が無かった「暮らしやすさ」をデジタル技術によって数値化することにより、地方都市の魅力を底上げする狙いです。

 

人手不足が進行中!デジタル田園都市国家構想、今後の課題

 

 

デジタル技術を活用した変革に備える必要がある

新型コロナウィルス感染症対策によるリモートワークの導入など、すでに多くの地方都市および自治体がデジタル化対応に追われています。しかしデジタル田園都市国家構想はこれらと別枠で、総額5兆円以上の予算が計上されている大型政策です。デジタル技術を駆使した新規事業の創出、モデルプランの策定などの変革にどれだけ早く備えられるかどうかが、今後の大きな分かれ目になると予想されます。

 

デジタル人材は不足中

デジタル田園都市国家構想の課題として挙げられているのが人材不足です。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)を担う高度な専門人材=デジタル人材は、地方都市のDXを進める上でも欠かせない存在です。多額の予算が計上されるということもあり、他の地方自治体と人材の獲得競争が発生するかもしれません。「DX推進課」を設置してスマート自治体化を進める長野県をはじめ、すでに一部自治体ではデジタル人材の獲得に動いています。フリーランスなど外部人材の活用も含め、デジタル人材のリソース確保は十分に考慮しておく必要があるでしょう。

 

まとめ

・デジタル田園都市国家構想は、特に地方都市の自治体で働く人やIT系人材に大きな影響を与える可能性がある。

・「官・民・学」を横断したプロジェクトが推進される。

・デジタル人材の争奪戦が起きる可能性があり、すでに多数の企業や地方自治体が動き出している。

 

今後も本トピックスではデジタル田園国家都市構想やDXなど、IT業界のトレンド情報を発信していきます。ぜひ参考にしてください。

 

 

 

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