DX時代のキャリアプラン④

DX推進はインハウスorアウトソーシングにする?職種ごとの最適な人材戦略とは?

#DX

 

本記事シリーズではデジタル・トランスフォーメーション(DX)を牽引する役割を担うデジタル人材「DX推進人材」について、職種やキャリアプランなどを紹介してきました。

 

DX推進人材を扱う中で、課題になるのが「内部で育成するのか、外部リソースを活用するべきか」という点です。内部で育成するには時間やコストが必要になるうえに、DX推進人材の採用コストは上昇を続けています。

 

このような現状を踏まえると、DXを実現するためには内部人材の育成や中途採用によるインハウス戦略と、外部企業に開発機能を外注するアウトソーシング戦略の使い分けが重要になります。

 

シリーズのまとめとして「DX推進のインハウスとアウトソーシング」をテーマに、DXのフェーズごとに分類した人材活用戦略について紹介します。

 

 

DXの段階を整理して、どのような人材が必要か見極める

 

 

DX推進人材をインハウスで育成するか、アウトソーシングで対応するのかを考える上では、まず取り組もうとしているDXプロジェクトの方向性を整理するところから始めましょう。

 

デジタライゼーション(オペレーションのデジタル化)

 

 

DXの中でも最も初期段階にあたるのが、業務効率化のためのペーパーレス化やオンライン化、社内システムの構築などの施策です。顧客向けでは、アプリ開発やEC構築などが含まれます。

 

DXの初期段階に位置するこのような施策は、一般的に「デジタライゼーション」と呼ばれます。デジタライゼーションはDXの全ての領域で必要になるため、ビジネスデザイナーのような上流工程をはじめ、実際の開発を担うプログラマ / エンジニア、UI / UXデザイナーまで、全てのDX推進人材が携わることになります。

 

既存ビジネスの収益増強

 

 

DXのもうひとつの領域が、既存ビジネスを進化させる取り組みです。いわゆる効率化ではなく、収益増強を目的にする「攻め」のDXである点がポイントです。商品企画や在庫管理にAIの需要予測を取り入れたり、Web上での消費者行動データを経営に活用する「データドリブン経営」などが好例と言えるでしょう。AIやデータ分析に関するプロジェクトでは、先端技術エンジニアやデータサイエンティストなどの専門人材が必要になります。

 

新規ビジネス企画の立案

 

 

DXは「IT技術を活用してビジネスモデルや組織を変革させ、企業価値を向上させる施策」と定義されますが、新しいビジネス企画を立ち上げるものと、既存のビジネスを進化させるものに大別されます。

 

この中で新規ビジネスの立ち上げは、DXの中でも特に難易度の高いものと言えます。デジタルビジネスの新しいアイデア、ビジネスモデルの構築、事業計画の策定、実行フェーズの運用ノウハウなど幅広い知識が求められるため、プロダクトマネージャーやビジネスデザイナーが中心になってプロジェクトを牽引します。

 

DX推進人材、インハウスとアウトソーシングの見極め方

 

続いては、前述の各段階に必要なDX推進人材をインハウスとアウトソーシングで比較した際のメリット・デメリットについて比較していきます。

 

 

プロダクトマネージャー、ビジネスデザイナー:インハウスがおすすめ

DXプロジェクトを成功させるためには、事業責任者を任命することが絶対条件であると言っても過言ではありません。事業責任者は危機感を持ってDXに取り組み、最後まで事業にコミットする役割が求められます。そのようなリーダーは、やはりインハウスの人材から抜擢することが一番でしょう。

 

実際に、IPA(情報処理推進機構)の調査「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」の調査でも、上記の職種はインハウスで育成する企業が多いという調査結果になりました。

 

プロダクトデザイナーやビジネスデザイナーは業界や競合、自社資産など自社を取り巻く状況を深く理解する必要があるため、管理職クラスや事業部のエース級人材など、内部人材から抜擢されるケースが多く見られます。

 

テックリード、データサイエンティスト / 先端技術エンジニア:インハウスがおすすめ

テックリードはDXに関するシステムの設計から実装までを担当できるスキルが必要になるため、情報システム部門のリーダー格が抜擢されるケースが多いでしょう。自社のIT環境に精通しているため、即戦力として活躍できるという利点もあります。

 

データサイエンティスト / 先端技術エンジニアに関しても、データ分析やAI技術が重要性を増す中で、専門スキルを持つ人材を社内で育成する企業が増えています。リスキリング(学び直し)によって、技術系の社員をさらにレベルの高いDX推進人材に転換する取り組みも注目されています。リスキリングは一定の時間が必要なものの、データ分析やAI技術は今後ますます重要になると予想されます。若手人材を中心に、長期的な目線で育成する必要があります。

 

エンジニア / プログラマー、UI / UXデザイナー:アウトソーシングがおすすめ

エンジニア / プログラマー、UI / UXデザイナーはアウトソーシングを活用しましょう。システム開発に一定の人数が必要であり、プロジェクト規模が大きくなるほど関わる人数も増えます。

 

プロジェクトごとに最適なスキルや実績を持つ人材を採用することは難しいため、外部のSIerに開発工程を丸ごとアウトソーシングする方法がおすすめです

 

開発工程では業界理解以上にプログラミングやデザインといった技術面が重要になるため、内部人材を育成するよりも、アウトソーシングの方が遥かに効率的です。

 

「せっかくプロジェクトを立ち上げたのに…」DXのよくある失敗ケース

 

 

DXにおけるよくある失敗の一つが、事業責任者を外部人材に任せてしまうパターンです。「DXプロジェクト企画室」などの新規部署を立ち上げてITコンサルタントからビジネスデザイナーやプロダクトマネージャーを招聘したものの、契約の範囲内でしか業務に取り組んでもらえず、プロジェクトが有耶無耶になってしまい、そうこうしているうちに契約期限が終了してしまう……というパターンです。

 

自社や業界に精通したインハウスのプロダクトマネージャーやビジネスデザイナー、そして経営層が本気でDXに取り組むことで、社内にDXを推進する機運を高めることができます。経営層がDXに本気であれば、昔ながらの業務スタイルを遵守しようとする「社内の反対層」も、DX推進に巻き込むことができます。

 

インハウスの人材が自社の強みを活かしたIT戦略を策定し、開発工程の人的リソース・専門スキルの不足分はアウトソーシングを活用する。このような図式が、DX推進に最も適した人材戦略と言えるでしょう。

 

DX実現に向けて、パートナー選びの重要性

 

デジタル人材の人手不足問題は厳しさを増しているため、開発工程を外部のSIerに丸ごと委託する方法がおすすめです。SIerは最新の技術やトレンドに精通しているため、自社では保有していないノウハウが活かされたり、開発工程もより効率的になります。

 

ただし、アウトソーシング開発にはいくつかの課題があります。例えば、外部の専門家とのコミュニケーションの問題や、情報セキュリティのリスクが挙げられます。これらの課題を解決するためには、開発を担うアウトソーシング先の選定に注意しましょう。アウトソーシングする会社の技術力やノウハウによって、納品物の品質だけでなく、開発スケジュールなどにも大きな影響が発生してしまいます。

 

そのため、アウトソーシング先を選定する際は「コミュニケーションがきちんと取れる仕組みがあるか」「自社の事業を理解して開発に落とし込めるのか」「大型案件の開発実績があるか」などの要素を確認しておくと良いでしょう。

 

また、外部にアウトソーシングする以外の方法として、デジタル人材派遣を受け入れる選択肢もあります。たとえば社内に開発チームはあるけれど不足しているリソースを埋めたい場合や、開発期間中は社内のプロジェクトチームの一員として参画してほしい場合は、デジタル人材派遣を検討するといいでしょう。

 

さらに、プロジェクト開始直後は「デジタル人材派遣」を、中盤以降からは「アウトソーシング」に切り替えるというハイブリッドな方法を採用する企業も増えてきています。

 

まとめ

・自社が取り組むべきDXの段階を整理し、必要なDX推進人材を確認する

・DX推進人材をインハウスで育成するか、アウトソーシングやデジタル人材派遣で対処するかを適切に判断すべき

・DXの前段階としてデジタライゼーションを進めるためには、エンジニア / プログラマとUI / UXデザイナーなどの人材を確保する必要がある

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