日本とどう違う?海外のIT教育への取り組み

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2020年より日本ではプログラミングが小学校で必修化されます。総務省が公開している情報によると、モバイル端末の世帯保有率は94.8%で個人でも84.0%となっており、より個人単位での関わりが大きくなっていると言えます。今後社会に出ていく世代にとっても、スマートフォンやパソコンなどITとの関わりは避けて通れない必須のものとなることは想定されるため、小学校でのIT教育の必修化も必然と言えるでしょう。こうしたITの普及は当然ながら日本だけではありません。実際、海外ではどうなのでしょうか。今回は日本と海外のIT教育に対する取り組みについて紹介します。

 

 

日本の取り組み

2020年からの小学校でのプログラミングの必修化に向け、現在日本では国や企業が協力してプログラミング教育の実施に向けて様々な取り組みを行っています。そうした動きの中、文部科学省はその手引をWebサイトで公開しています。

「正多角形をプログラムで書いてみる」、「電気を無駄なく使うにはどうしたらいいか考えてみる」、「ロボットを動かすプログラムを作ってみる」など、演習形式でのプログラミング学習が企画されています。また、「未来の学びコンソーシアム」というプログラミング教育のポータルサイトもその一つで、プログラミング教育の普及と促進を目的として作られています。今後、国や地域が連携して子供たちがITを学べる環境が整備されていくことになります。

 

海外での取り組み

ではIT教育を重視している国は日本だけなのでしょうか?日本でのIT教育の整備はかなり遅れていると言われています。日本ではようやく2020年からIT教育が必修化されていきますが、海外ではすでに何十年も前からIT教育が始まっている国もあります。

 

 

① アメリカ

数多くの巨大IT企業が生まれており、IT教育もかなり進んでいます。プログラミング教育を全米に普及させるために「Code.org」というサイトが作られていて、Apple、Microsoft、Googleが協賛しています。Code.orgでは「Code Studio」と呼ばれる教育用のプログラミング環境の提供を行っており、アメリカの小学校で広く用いられています。

 

② イスラエル

サイバーセキュリティの分野で非常に発展しています。中等教育の段階からサイバーセキュリティの授業が始まり、大学に進学するための試験では選択科目に「サイバーセキュリティ」の科目があるほどです。人工知能を用いたサイバー攻撃に対する防御システムを開発する「Cybereason」などIT関連の企業を数多く輩出しています。

 

③ イギリス

義務教育が始まる5歳からIT教育が始まります。1990年からIT分野を教育カリキュラムに含めており、2014年には5歳から16歳までのプログラミング教育が義務化されています。「マイクロビット」と呼ばれるプログラミング教育用のマイコンボードが無償で子供たちに配布され、実際に動くロボットなどを作りながら学習しています。

 

④ ベトナム

国策としてIT産業発展に力を入れており、人材育成においてもIT専攻の大学や学部も増加していること、中には企業が運営する大学などもあり、官民連携でのIT人材の増加を実現させています。日本企業にはオフショア開発で知られることが多くなってきていますが、そうしたコスト重視の視点から、昨今では、より高度なIT技術を持つ人材確保の視点でグローバル企業からの囲い込みも進んでいるようです。

 

⑤ ロシア

10年ほど前からロシアでも、初等教育、中等教育でプログラミング教育が必修化されています。特に「アルゴリズム」の学習に重点が置かれていて、問題解決のためのアルゴリズムを作成できるようになることが学習目標の一つになっています。

 

 

公教育としてのITの背景とは

こうした動きの背景には、デジタル化社会の急速な発展が挙げられます。日本を例に言えば、冒頭でも述べたように、ITは社会にかなり浸透しています。今後の高度にデジタル化した社会で生活していくには、端末を操作する能力もさることながら、多くの情報が溢れている中から「情報を取捨選択し活用すること」、一般社会よりもグローバルにオープンなデジタルの世界で「セキュリティを確保すること」など、ITに関するリテラシーを含めた知識や認識は必要になってきますし、そうした環境で、今後IT教育を充足していくことで、時代に必要とされる人材を育てていくことが期待されています。

 

 

まとめ

今回は2020年のプログラミング教育の必修化に向けた日本の動きと、他の国のIT教育について説明しました。早くにIT教育に力を入れている国には、言わずと知れたITで有名な企業や、IT技術を利用した事業で起業するベンチャーがあるなど、国として注力したことがある意味結実している、ということなのかもしれません。その点でいえば、その国における、教育とIT人材、ひいてはITビジネスは密接に連動していると言えます。
日本ではIT教育に向けてようやく動き出しはするものの、海外にはかなり後れを取っています。学校でプログラミングなどITについて教えることができる指導者を確保していけるのか、などの懸念も指摘されていますが、日本のIT教育を発展させていくためにも、社会全体が一体となってIT教育について考えていくことが求められます。

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