PYPLインデックスから読み解く、プログラミング言語のトレンド

#エンジニアブログ

 

プログラミング言語の人気は、IT業界のトレンドを反映する鏡のようなものといえます。Google検索エンジンでのチュートリアル検索回数を基にした「PYPLインデックス」は、まさにその人気を測るバロメーターといえ、今後のキャリアパスの参考にもなるでしょう。

 

この記事では、PYPLインデックス2024年版の最新データから、今注目のプログラミング言語ランキング、シェアを伸ばしている言語、減少している言語、そしてこれから習得すべきプログラミング言語について解説します。

 

PYPLインデックスとは?

 

PYPLインデックスは、正式には「PYPL PopularitY of Programming Languageといい、Google検索エンジンでチュートリアルが検索されたプログラミング言語を、その検索回数によってランク付けしたものです。

 

検索回数が多いほどランキング上位になるため、現状のシェアだけでなく、注目度や話題性、これから学ぼうとしている人の多さを判断する指標となります。

 

TIOBEインデックスとの違い

PYPLインデックスと並んで有名なプログラミング言語ランキングに「TIOBEインデックス」があります。

 

TIOBEインデックスは、あらゆる検索エンジンでのヒット数や、サードパーティベンダー数、学習講座数、熟練エンジニアの数なども集計しています。こうした特徴から、すでに普及しているプログラミング言語が上位にランクインしやすくなる、遅行指標としての色合いが強いことがわかります。

 

一方のPYPLランキングは「Google Trends」のデータを使用し、チュートリアルが「検索された頻度」でランク付けをしています。そのため、今話題になっている、またはこれから話題になりそうなプログラミング言語がランキングに反映されやすく、先行指標として機能する特徴があります。

 

データで見るプログラミング言語の今

 

ここからは、「PYPL PopularitY of Programming Language」2024年版をいくつかの角度から見ていきます。

 

PYPLインデックスには、US版、UK版、ドイツ版、フランス版、インド版、さらにワールドワイド版がありますが、ここでは、テック業界のトレンドをより強く反映させるため、”GAFAM”やNVIDIA、Teslaなどのビックテック7社が本拠地を構えるアメリカ(US)のランキングを参考にします。

 

 

【2024年】PYPLインデックス(US版)

 

出典:https://pypl.github.io/PYPL.html

 

20年間シェアが安定している4つの言語

 

“PYPL PopularitY of Programming Language” by Pierre Carbonnelle is licensed under CC BY 3.0

 

20年間シェアが安定している言語は次の4つです。

 

・ C/C++

・Java

・C#

・JavaScript

 

C言語とC++は、OS開発や、組み込みシステムの開発に用いられる言語であり、Javaは大規模な企業システム開発や、Webアプリケーション開発の分野で利用されている言語です。これらはITシステムやWebサービスの根幹を構成するものであり、現代においてなくてはならない言語といえます。

 

C#はマイクロソフトが開発した言語で、Webアプリ開発などに用いられています。OSシェアで圧倒的な1位を誇るWindowsと相性がよいことから利用事例が多く、需要も高くなっています。

JavaScriptは、ブラウザ上で動作する唯一のプログラミング言語であり、動的なWebサービスの開発に用いられます。現在もフロントエンド開発での需要が高いことに加え、Node.jsの登場によりサーバーサイドの開発にも使用できるようになり、引き続き安定したシェアを確保しています。

 

シェアを伸ばし続ける「Python」と「R言語」

 

“PYPL PopularitY of Programming Language” by Pierre Carbonnelle is licensed under CC BY 3.0

 

この20年間、安定してシェアを伸ばしてきた言語が「Python」と「R言語」です。

 

この2つの言語は、統計やデータ分析の分野で多く利用されてきました。ビッグデータを活用することの重要性が広く認識されるようになった2010年代以降、大量のデータを効率的に処理・分析できるツールの需要が高まり、「Python」と「R言語」のシェアが飛躍的に伸びた背景があります。

 

2つの言語のシェアの違いは、主にその汎用性にあるといえるでしょう。R言語は、データ解析や統計モデリングに特化した言語であり、統計学の結果を算出することに関してはPython以上に適していると考えられています。

 

一方のPythonは、機械学習モデルが構築しやすく、近年急激な伸びを見せているAIシステムやIoT機器との相性がよいなど、汎用性・柔軟性の高さが特徴です。近年では、AI開発やブロックチェーン開発、IoT開発などにも用いられるなど、広い分野で活躍しています。

 

また、Pythonは習得が比較的簡単で学習コストが低いことも特徴です。こうした特徴は、エンジニアが不足している現状ともマッチしており、シェアを伸ばした理由のひとつとなっています。

 

近年伸びを見せている5つの言語

 

“PYPL PopularitY of Programming Language” by Pierre Carbonnelle is licensed under CC BY 3.0

 

ここ10年で大きくシェアを伸ばした言語もあります。代表的なものが次の5つの言語です。

 

・Swift

・Go

・TypeScript

・Rust

・Kotlin

 

Swiftは、Appleが開発したiOS、macOS、watchOSアプリ開発のための言語です。読みやすく書きやすいコードや、処理速度の速さが特徴で、2014年のベータ版の提供開始から一貫して高いシェアを誇っています。まだ新しい言語であり、今後もApple製品と共に一定のシェアを占めることでしょう。

 

GoはGoogleが開発した、Webサービス開発やサーバーサイド向けのプログラミング言語です。プログラミング環境の改善を目的に開発されたため、文法がシンプルでわかりやすく、初心者でも学びやすい言語といえます。学習コストの低さは、エンジニア不足になっている現代の事情にもマッチしています。

 

TypeScriptはマイクロソフトが開発しました。JavaScriptに静的型付けとオブジェクト指向を加えたプログラミング言語であり、JavaScriptとの互換性を保ちつつ、安全性と開発効率を向上させています。次世代型JavaScriptとして、今後さらにシェアを伸ばす可能性があります。

 

Rustは、Firefoxで有名なMozillaが開発した言語です。C/C++に代わる安全かつ高速な言語を目指して開発されており、安全性の高さや処理速度の高さが評価されています。OS開発やクラウドプラットフォーム開発、さらにゲームやWebアプリ開発などの分野で活躍しています。

 

Kotlinは、Androidアプリ開発で用いられる主要なプログラミング言語です。Javaを改良して開発されており、互換性を保ちながら、より短く簡潔なコードで開発できます。文法がシンプルな分、学習コストが低くなっており、Javaに比べて短期間で習得できるでしょう。

 

こうして見ていくと、ここ10年でシェアを伸ばしたのは、①「スマートフォンアプリの開発に関わる言語」、②「歴史あるプログラミング言語をシンプルにした言語」の2種類だとわかります。

 

シェアを減らし続けている3つの言語

 

“PYPL PopularitY of Programming Language” by Pierre Carbonnelle is licensed under CC BY 3.0

 

 

シェアを伸ばした言語がある一方で、シェアを減らし続けてきた言語もあります。代表的なものは以下の3つの言語です。

 

・Perl

・Visual Basic

・PHP

 

Perlは1987年に発表された歴史あるプログラミング言語で、データベース操作やテキスト処理を得意とします。一方で、文法の読みにくさから学習コストが高く、近年ではPythonなどに取って代わられつつあります。

 

Visual Basicは、主にWindowsアプリケーションを開発することを目的としてマイクロソフトが開発しました。Windowsデスクトップアプリケーション開発に特化しているため汎用性が低く、近年ではJavaScriptやPythonに移行するケースが多くなっています。

 

この3つの中で将来性があるのはPHPといえるでしょう。PHPはWeb開発に特化したサーバーサイドのプログラミング言語で、現在も多くのWebサイトやWebアプリケーションで利用されています。

 

PHPは最先端のプログラミング言語とはいえず、ゆるやかな衰退が予想されているものの、全世界のWebページの3割強を占めるとされるWordPressがPHPで動いているほか、サーバーサイド言語として今も70%以上のシェアがあると考えられています。

 

PHPは、質実剛健なプログラミング言語であり、ライブラリやリファレンスも充実しています。学習コストは比較的低く、今からでも学ぶ価値が十分ある言語といえるでしょう。

 

これから学習するなら? 習得すべきプログラミング言語を考える

 

 

プログラミング言語のトレンドを踏まえて、これから学習するプログラミング言語を考えます。一度習得した技術はできるだけ長く一線で使えたほうがよいですし、初心者であれば学習コストの低さも重要になるでしょう。

 

プログラミング初心者の場合

プログラミング初心者の方には、Go、Python、JavaScriptなどがおすすめです。

 

学習コストを抑えたいなら、まず検討したいのは「Go」です。Goはプログラミング環境の改善を目的に開発されたその成り立ちから、とてもシンプルで学習しやすい文法になっているため、比較的早く習得できるはずです。近年では、クラウドネイティブ技術の分野でも注目されており、将来性も期待できます。

 

シェアの大きさと将来性で考えるなら「Python」がよいでしょう。AI、機械学習、データ分析など、今後さらに伸びると予想されている分野で活用されていることが魅力です。初心者でも理解しやすい文法になっており、ライブラリやフレームワーク、チュートリアルなども豊富。効率的に習得できるはずです。

 

Webページなどのフロントエンド開発を主眼に置くなら「JavaScript」です。動的なWebページにとって必須の言語であり、JavaScriptを習得したあとは、TypeScriptを習得するキャリアパスも描けます。また、Node.jsの登場によってサーバーサイド開発にも利用できるようになり、活躍の場も広がっています。

 

学習した知識を長く使えるのは?

学習した知識をできるだけ長く使いたいのであれば、今後も安定したシェアが予想される、Java、C/C++、Pythonなどの言語がおすすめです。

 

Javaは、大規模システム開発で広く採用されており、大規模プロジェクトで長期間にわたって活躍できる可能性の高い言語です。改良型のKotlinが登場していますが、Javaで開発されたシステムは非常に多いため、習得した知識を長期間に渡って活用できるものと考えられます。

 

C/C++は、OSや組み込みシステムなど、様々な基盤となるシステムで利用されています。また、IoT機器の開発にもC言語は必要であり、引き続きあらゆる企業がC/C++エンジニアを必要とするでしょう。C/C++の習得難易度が高いことも、エンジニアの価値を高める要因となっています。

 

Pythonは、AI、機械学習、データ分析など、今後さらに伸びると考えられている分野で活用されています。さらに、汎用性が高く特定の分野に依存しないため、時代の変化にも対応しやすいと考えられます。長く活用できる可能性の高い言語です。

 

高収入を狙うなら

高収入を狙うのであれば、近年、日本国内での平均年収が高くなっている、Go、Kotlin、TypeScriptなどの言語がよいでしょう。

 

GoはWebサーバーやネットワークサービスなどの開発で高いパフォーマンスを発揮できるため、大規模なシステム開発にも対応できます。KotlinはAndroidアプリ開発、TypeScriptは大規模なフロントエンド開発で使用されるケースが多くなっており、それぞれ高い需要があります。

 

これらの言語はまだ新しく、まだエンジニアが少ないことが背景にあります。そのため、現時点では高収入が期待できますが、時代と共に変化するはずです。自分がしたいことをはっきりさせつつ、継続的に市場動向を観察することが大切といえるでしょう。

 

まとめ

Pythonが依然としてトップを維持し、AIや機械学習分野での需要の高まりから、その地位はさらに強固なものになるでしょう。また、安定したシェアを誇るJava、C/C++、C#、JavaScriptに加え、近年急速にシェアを伸ばしているGo、Swift、TypeScript、Rust、Kotlinにも注目です。これらの言語は、今後もIT業界の発展を牽引していくと考えられます。

 

プログラミング言語の選択は、キャリアパスや開発したいものによって大きく変わるため、この記事を参考に、ぜひ自分に合った言語を見つけてみてください。

 

掲載日:2024年8月15日

 

 

関連する記事