ITエンジニアの健康管理とワークライフバランス|健やかに過ごすための10のアイデア

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今回のコラムでは、ITエンジニアが健康的に仕事を続けるための生活習慣や対策、そしてワークライフバランスの重要性について紹介します。高い生産性を維持しながら健康被害のリスクを軽減し、充実したプライベートを送るためにはどうしたらよいか?ITエンジニアに限らず、デスクワーカーの皆さんにも起こり得るものですので参考になれば幸いです。

 

ITエンジニアが健やかに過ごすための10のアイデア

 

ITエンジニアの健康問題を踏まえて、健やかに過ごすための10のアイデアを紹介します。

 

1.すべての基本となる睡眠。睡眠時間を7~9時間確保する

十分な睡眠時間を確保することは、健康的に仕事を続けるうえでもっとも重要な要素といえます。

 

通常、疲労やストレスは睡眠で回復していますが、睡眠不足が慢性化すると十分な回復が難しくなります。結果的に集中力や作業効率が低下し、ミスも増えてしまうでしょう。ストレスが蓄積することで、長期的に見ると、精神的・肉体的な健康問題を引き起こすリスクも高まります。

 

理想的な睡眠時間は個人差がありますが、多くの人が7~9時間の睡眠を必要としています。また、睡眠の質も重要です。たとえば、寝る直前に飲酒や喫煙をしたり、熱いお湯で入浴したりといった、副交感神経を刺激する行為は睡眠の質を低下させます。

 

残業が多く、どうしても睡眠時間が十分に確保できない場合は、できる限り就寝・起床時間を一定に保つことからはじめましょう。残業後に帰宅して、すぐに寝るのがもったいなくてつい夜ふかししてしまう…、そういった生活をしているなら、どこかで悪循環を断ち切る決断が必要です。

 

2.腰への負担が少ない椅子を使い、作業姿勢も見直す

長時間作業を行うITエンジニアにとって、仕事中に使う椅子は非常に重要です。椅子を選べるのであれば、腰に負担のかかりづらい、自分の体に合った椅子を選びましょう。なお、オフィス指定の椅子があり、自分で選ぶことが難しい状況でも、腰痛対策用のクッションなどを購入することで改善が見込める場合があります。

 

また、椅子は高さも重要です。理想的な姿勢をとったときに、足の裏が床につく高さに調整できる椅子を選びましょう。

 

また、適切な作業姿勢を意識することで、肩こりや腰痛、目の疲れなどが一定程度改善される可能性があります。椅子に深く腰をかけて、足の裏が床にぴったりとつくように高さを調整します。机の高さは、キーボードに手を置いたときに手の甲が水平になる高さが理想的です。これを守ると、紙とペンを想定したデスクよりかなり低くなるはずです。

 

モニターの位置は目線よりやや下を向くくらいの高さに設置すると、目を大きく開く必要がなくなり目が乾きづらくなります。ただし、頭が前に傾いてしまうと首肩の筋肉に負担がかかるので、バランスが大切になります。

 

 

3.目への負担が少ないモニターを使う

仕事中ずっと見つめることになるモニターは、椅子と並んで重要な要素です。

 

目の疲れを防ぐためには、フリッカーフリーやブルーライトカットなどの機能が搭載されたモニターを選ぶとよいでしょう。また、モニターの手前や後ろ側をモニターと同程度に明るくすることで、瞳孔の拡大・縮小を抑制でき、目への負担を軽減できると考えられています。

 

ユニークな方法として、電子ペーパーモニターを使う方法があります。これは紙と同じ反射光で文字を読むデバイスで、透過光を使った液晶モニターより視覚疲労が少ないとされています。

 

また、反射光のほうが目から入ってくる情報に集中しやすいとする研究もあり、電子ペーパーモニターを使うことで、コードレビューなどの集中力を要する作業をより早く、しかも目に優しく行える可能性があります。

 

4.座りっぱなしは避け、1時間に1度は体を動かす

ITエンジニアの業務は、どうしても長時間座って集中しなければならないことが多くなります。しかし、座りっぱなしの状態が続くと健康被害のリスクが高まります。

 

たとえば、長時間同じ姿勢を取り続けることで血栓ができるリスクが高まるほか、下半身の血行が悪くなることで静脈瘤の危険性も高まります。また、動かないことで代謝が落ち、肥満をはじめとした生活習慣病になるリスクもあります。

 

さらに呼吸が浅くなり、脳まで酸素が行き渡りづらくなって、集中力の低下が起こるといった問題もあるため、定期的に立ち上がって動くことを心がけましょう。少なくとも、1時間に一度、5分程度は立ち上がる、軽い運動やストレッチを行うとよいでしょう。また、スタンディングデスクの利用も効果的です。

 

5.朝は明るく、夜は暗く。光を意識して生活する

光は体内時計に大きな影響を与えます。朝はできるだけ日の出とともに起床して、カーテンを開け、日光を浴びましょう。そうすることで体内時計が調整され、夜、入眠しやすくなります。

 

一方、夜間の強い光は、睡眠に入る前の体内時計のリセットを妨げる可能性があります。たとえば、PCのモニターや、スマートフォンから発せられる強い光は、体内時計を狂わせると考えられています。

 

就寝2〜3時間前から、できるだけPCやスマートフォンは利用しないようにして、室内を薄暗くしましょう。部屋の照明は白くて明るい蛍光灯のような照明ではなく、明るすぎない電球色が適しています。照明の色と明るさを調整できるLEDライトを取り入れて、時間帯によって変化させるのもおすすめです。

 

6.シャワーで済まさず、お湯に浸かって体を温める

入浴は筋肉の緊張をほぐし、リラックスさせる効果があります。もし、毎日シャワーを浴びるだけなら、バスタブにお湯を張って浸かるとよいでしょう。

 

理想的な入浴タイミングは就寝2~3時間前です。温まった体温が就寝に向けて徐々に下がっていき、入眠がスムーズになります。ただし就寝直前の入浴は副交感神経を刺激し、かえって睡眠を妨げる可能性があるためおすすめできません。

 

肩まで熱いお湯に浸かるのも気持ちいいですが、疲れているときは、体への負担が少ない半身浴がおすすめです。お湯の温度は38度程度のぬるめのお湯が適しており、リラックス効果と睡眠改善の両方を期待できます。

 

7.ウォーキングやサイクリングを取り入れる

長時間のデスクワークが多いITエンジニアにとって、適度な運動は健康維持に欠かせません。体を動かすことで体によい影響があることはもちろん、気分転換や睡眠の質の向上にも役立ちます。

 

もっとも取り入れやすいのは、有酸素運動(散歩、ジョギング、サイクリングなど)です。有酸素運動を習慣化することで、ストレス解消や睡眠の質の改善が期待できます。たとえば、1駅歩いてみる、自転車で通勤してみるといったことでも、長い目で見たときに大きな違いとなります。

 

一方で、過度の運動はかえって疲労を招きます。自分に合った運動の強度と時間を見つけましょう。また、就寝の2~3時間前に軽い運動を行うのもおすすめです。運動で一時的に体温が上がることで、就寝時の体温降下が促され、睡眠の質が高まります。

 

8.マインドフルネス瞑想を取り入れる

ITエンジニアは高い集中力が求められ、ストレスもかかりがちです。そこで心身のリフレッシュのために瞑想が有効と考えられています。

 

瞑想にはさまざまな方法がありますが、なかでも取り入れやすいのが「マインドフルネス瞑想」です。その方法は比較的簡単で、床や座布団の上にあぐらをかいて姿勢を正し、目を伏し目がち(半目)にして呼吸を意識します。

 

何かが頭に浮かんできても、雑念を受け入れるのがマインドフルネス瞑想です。ただ、考えてもそれを追わずに、また呼吸に意識を戻します。最初は2~3分、慣れてきたら10~30分ほどできるとよいでしょう。おすすめのタイミングは朝です。

 

研究によると、マインドフルネス瞑想は、不安や抑うつ、睡眠の質の改善に対して、認知行動療法などの確立された治療法と同等の効果が期待できると考えられています。

 

9.プライベートを充実させて新たな刺激とリフレッシュを

仕事以外の時間を充実させることは、心身のリフレッシュとストレス解消に効果的です。もし、特別な趣味がないのであれば、読書や音楽、スポーツなど、自分が楽しめるものを意識的に見つけてみましょう。

 

また、家族や友人との時間を大切にすることも重要です。社会的なつながりは、精神的な健康につながります。さらに、公園での散歩やデイキャンプなど、自然の中で過ごす時間はつくることもストレス軽減に貢献します。

 

語学学習など、新しいスキルを学ぶこともよいでしょう。仕事に直接関係のない新しいスキルを習得することで、脳に新しい刺激を与えてリフレッシュさせつつ、創造性を高めることができるはずです。

 

10.健康診断や人間ドック…定期的な健康チェックを受ける

ここまで紹介したことは、心身の不調を未然に防ぐためのアイデアです。これに加え、定期的な健康チェックを受けて、今ある病気や将来的な懸念を把握することも重要になります。

 

年齢によっては、勤務先が用意してくれる健康診断に加え、人間ドックなどを受けてより充実したチェックをすることも重要です。とくにITエンジニアは長時間のPC作業で目に負担をかけるため、眼底検査など定期的な眼科検診も受けるとよいでしょう。

 

心身の健康は、よい仕事と充実したプライベートの源です。不調を未然に防ぎつつ、今すでに起きている不調も見逃さないようにしましょう。

 

まとめ

ITエンジニアは心身に負担がかかりやすく、ワークライフバランスを崩しやすい職業です。睡眠不足、腰痛、目の疲れなどの身体的問題や、仕事とプライベートの境界が曖昧になることによる精神的ストレスを放置すると、仕事の効率が低下するだけでなく、心身の重大な不調につながる可能性があります。

 

健康的に仕事を続け、充実したプライベートを送るためには、十分な睡眠の確保、適度な運動、入浴、光への配慮、瞑想の導入などが効果的です。また、作業姿勢の見直し、定期的な休憩、腰や目に優しい道具の利用も重要です。さらに、趣味や家族との時間を大切にし、新しいスキルを学ぶなど、プライベートの充実を図ることも欠かせません。

 

こうして書き並べてみると、現実的ではないようにも感じられるかもしれません。しかし、心身の健康を保ち、生産性を向上させ、ワークライフバランスを維持するためには重要なことと考えられます。長い人生を充実させ、健やかに過ごすためにも、ぜひこれらの提案を少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

参考資料

快眠と生活習慣|e-ヘルスネット

ITエンジニアの健康問題 睡眠不足の解消と「技術の健康」がカギ|情報労連

健康づくりのための睡眠ガイド 2023|厚生労働省

ドライアイによる眼精疲労|公益財団法人 日本眼科医会

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章|「仕事と生活の調和」推進サイト(内閣府)

「健康」と松下幸之助|松下幸之助.com

電子ペーパと液晶タブレットで読書した時の視覚疲労の比較

「紙」に印刷すると間違いに気づく理由 | リコー経済社会研究所

瞑想とマインドフルネスについて知っておくべき8つのこと|厚生労働省eJIM

 

掲載日:2024年9月19日

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