PHPは、動的なWebコンテンツ開発に欠かせないスクリプト言語です。世界的に人気の高い「WordPress」にもPHPが使用されており、サーバーサイド言語としても高いシェアを占めています。
現在も一線で利用されているPHPですが、いくつかの理由から「オワコン」「時代遅れ」などといわれることがあります。それはなぜでしょうか。
ここでは、PHPの基礎知識や将来性を不安視される理由、エンジニアにとってのメリットや、PHPエンジニアのキャリアパス、PHPに関連する資格などを網羅的に紹介します。
PHPは、動的なWebコンテンツ作成に欠かせない、サーバーサイドスクリプト言語です。
Webテクノロジー専門の第三者調査機関「W3Techs」によれば、PHPはサーバーサイドスクリプト言語において、実に76.1%のシェアがあります(2024年6月時点)。
これは、世界中のWebサイトの40%以上を占めるとされるCMS(コンテンツ管理システム)「WordPress」がPHPでつくられていることも大きく関係しているでしょう。
出典:W3Techs – World Wide Web Technology Surveys
PHPは1995年に発表されました。有志の組織「The PHP Group」によって管理及びライブラリの開発が行われている、オープンソースソフトウェアです。
PHPの正式名称は「Hypertext Preprocessor」。Hypertextは「HTML」、Preprocessorは前処理プログラムのことで、「HTMLの前処理プログラム」といった意味合いとなります。
その名前のとおり、PHPはHTMLの文章内に部分的に埋め込んで記述される言語となっています。また、PHPは柔軟性も高く、SQLやMySQLを含むさまざまなデータベースとの統合が容易であることも特徴です。
PHPは、世界で最もシェアの高いCMSである「WordPress」の機能と動作の大半を支えています。
WordPressを利用してあらゆる動的なWebサイトを作成できるほか、PHPを用いてWordPressのようなCMS(コンテンツ管理システム)を作成することも可能です。
そのほかに、次のようなものが作成できます。
・掲示板
・問い合わせフォーム
・予約システム
・顧客管理システム
・社内管理システム
また、次のようなことに用いることもできます。
・あらゆるAPIとの連携
・MySQLなどのデータベースとの連携
・バッチ処理の作成
こうした柔軟性の高さから、「Wikipedia」や「Slack」などのWebサイト、サービスがPHPで作成されています。
PHPは、「オワコン」や「時代遅れ」などといわれることがあります。その理由として、次のようなものがあげられます。
・他の言語で代用できる
・処理速度が遅い
Web開発において、PHPにこだわる必要は必ずしもないかもしれません。例えば、世界的に人気のPython、日本で根強い人気のあるRuby、またJavaなどでも代用できることがほとんどでしょう。
また、PHPはインタプリタ型言語であり、コンパイラ型言語(C/C++、C#、Java)に比べて処理速度が早くありません。こうした理由から、PHPはときに「終わった言語である」と表現されるようです。
しかし、PHPには将来性があると考えられます。その主な理由は次の4つです。
・WordPressに使われている
・サーバーサイドで広く使われている
・PHPのシステム保守案件が多い
PHPは、世界中のWebサイトの40%以上を動かしているWordPressに採用されています。特に日本においてはCMSの8割がWordPressという圧倒的なシェアです。
そして、サーバーサイドスクリプト言語としても、PHPは約8割のシェアがあります。こうした圧倒的なシェアにより、PHPで作成されたシステムは非常に多く、それに伴って非常に多くの保守案件の需要があります。
こうした理由から、PHPは新鮮味のない枯れた技術ではあるものの、将来性は安定しているものと考えられます。
ここまで説明したように、PHPには多くのシェアがあり、今後も保守案件の需要が多いと考えられます。それ以外にも、PHPにはエンジニアにとってのメリットがあります。
1つ目は、構文がシンプルで学習コストが比較的低いことです。ユーザーが多いため、わからないことがあっても、インターネットで答えが見つけられる可能性も高くなっています。
2つ目は、強力なフレームワークが豊富に用意されていることです。適切なフレームワークを利用することで、初心者でも開発工数を短縮でき、生産性を大きく向上できます。
そして、応用が効くこともメリットといえるでしょう。PHPで学ぶ出力や変数定義などは、他のプログラミング言語でも必要となるものなので、他の言語を勉強するときに、PHPで学んだ知識を生かせます。
PHPエンジニアの主な仕事内容として、次のようなものがあげられます。
PHPエンジニアにとって、最も需要の多い仕事はWeb開発です。企業のWebサイト、WordPressを使ったサイト、ポータルサイトやECサイトなど多岐にわたります。
とくにECサイトではPHP活用の幅が広く、決済機能や在庫管理機能、宿泊施設の予約やチケット購入機能などの実装などを行います。
企業の業務用システム開発にもPHPが利用されています。例えば、請求書や見積書の作成システム、経理システムや在庫管理システムなどの構築などです。さらに、保守・運用も担うケースが多くなっています。
ゲーム開発における、データサーバーに関する業務もPHPで行われることがあります。ゲーム本体の制作に使われることはほとんどありませんが、データの保管・出力にPHPが利用されることは比較的多くなっています。
PHPエンジニアとして活躍するためには、次のようなスキルの習得が必要です。
・他言語の知識
・サーバーに関するスキル
・フレームワークの知識
PHPは、Web開発に使用されるスクリプト言語です。そのため、HTMLやJavaScriptの知識も必要になります。PHPの知識だけでは開発の幅が狭くなってしまうため、Web全般の知識を習得することが大切です。
また、PHPはサーバーサイドスクリプト言語であるため、サーバー環境構築に必要な、いわゆるLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)も欠かせないスキルとなります。
そして、PHPの豊富なフレームワークを使いこなすには、フレームワークに関する知識と、継続的な情報収集が欠かせません。こうした知識の有無は開発効率に大きく影響し、大規模なプロジェクトの参加にも必要となります。
代表的なPHPエンジニアのキャリアパスは次のようなものです。
・PHPスペシャリスト
・マルチエンジニア
・プロジェクトマネージャー
PHPスペシャリストは、PHPに特化したエンジニアです。PHPに関する高い専門知識、フレームワークやデータベース、サーバーまわりなど、PHPのことならすべて対応できるスペシャリストといえます。
マルチエンジニアは、その名の通り、あらゆる言語を扱えるエンジニアのことです。例えば、JavaやPython、Rubyなどの知識を習得することで、Web開発を網羅的に行えるようになります。ここでは、PHPの応用性の高さが有利に作用するはずです。
プロジェクトマネージャーはプロジェクトの案件責任者です。必ずしもPHPエンジニアとしての経験が必要な職種ではなく、コミュニケーション能力やマネジメント能力が求められます。例えば、PHPエンジニアからマルチエンジニアを経てプロジェクトマネージャーになれば、Web開発に関する幅広い知識がプロジェクト管理に役立つことでしょう。
PHPエンジニアが、自らのスキルを証明するために役立つ資格として、次のようなものがあります。
・PHP7技術者認定初級試験 ITSS レベル1
・PHP5技術者認定初級試験 ITSS レベル1
・PHP5技術者認定上級・準上級試験 ITSS レベル⅔
・PHP5技術者認定ウィザード
初心者向けの内容で、実務経験がなくても受験できます。PHPの特徴や操作、関数、データベースなどの基礎知識が必要です。
・PHP8技術者認定初級試験 ITSS レベル1
・PHP7技術者認定初級試験 ITSS レベル1
・PHP5技術者認定初級試験 ITSS レベル1
上記の3種類があり、対象となるPHPのバージョンが異なります。最新はPHP8ですが、PHP5、PHP7を習得することで、既存システムの保守・改修に関する幅が広がります。
PHP上級者を対象として、実践的な知識とスキルが求められる試験です。
・PHP8技術者認定上級・準上級試験 ITSS レベル2/3
・PHP5技術者認定上級・準上級試験 ITSS レベル2/3
上記の2種類があり、こちらも対象となるPHPのバージョンが異なります。上級と準上級は、正解率で切り分けられます。5割以上の正解率で準上級、7割以上の正解率で上級となります。
PHPの最上級資格で、上級試験で正解率85%を取得した人が自動的に該当します。名刺などに専用ロゴを使用できるようになるため、対外的なアピールに繋がります。
PHPは、枯れた技術ともいえ、今後大きくシェアが伸びることはないかもしれません。しかし、現在もWeb開発において重要な役割を果たしており、保守案件の需要も考えると将来性は安定していると考えられます。
PHPエンジニアとしてキャリアを積むことで、マルチエンジニア、プロジェクトマネージャーなどのキャリアも見えてきます。また、PHPで学んだ知識は他の言語でも応用しやすいこともメリットといえるでしょう。このコラムで紹介したことで、キャリア構築の手助けになれば幸いです。
掲載日:2024年10月1日