「PUBG」日本オフィス室長が語る eスポーツにおけるゲームコミュニティの重要性

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2017年3月にリリースされたバトルロイヤルゲーム「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」(以下PUBG)は、登場するやいなや全世界で社会現象的な大ヒットとなりました。それまでPCゲームがあまり盛んでなかった日本においても多くのプレイヤーを獲得し、「PUBGのためにゲーミングPCを購入する」という人も現れたほどです。

 

そして早くも2018年からは国内唯一の公式リーグ戦、「PUBG JAPAN SERIES」がトップレベルのチームとプレイヤーを集めてスタートし、eスポーツとしての展開も始まっております。

 

一方でPUBGの成功に目をつけたいくつものゲーム会社により、2018年以降数多くの「後追い」タイトルが出現する状況も続いています。そんな中でPUBGはeスポーツタイトルとして今後どのような戦略をとっていくのか――。

 

PUBG株式会社日本オフィス室長の井上洋一郎様に、主にゲームコミュニティ形成の観点からお話をお伺いします。

 

 

――本日はよろしくお願いします。まずは井上様がPUBGに携わるまでの経緯を教えてください。

 

井上洋一郎氏(以下、井上):以前は別のFPS(ファーストパーソンシューター、一人称視点のゲーム画面で銃撃戦などを行うゲームジャンル)タイトルの運営プロデューサーをしていました。そこで関わったタイトルを、大会開催やユーザーコミュニティの盛り上げをしながら育てていくことで、長期間にわたって人気を持続させながら運営するという経験を経て、2018年5月にPUBGにジョインしました。

 

当時PUBGはすでにビッグタイトルになっていましたが、一般論として、ある程度大きくなったゲームでも「長期間伸び続ける」のは難しく、盛り上がりを維持できずに徐々に人気が下火になってしまう傾向がよくあります。そういうところで、私が前職の経験も活かしてPUBGが「長くサービスを続ける」ということに貢献できるのではないかと考えたのがジョインしたきっかけです。

 

ちょうど自分が入社した時、PUBG MOBILEのサービス開始に向けてモバイル版をどう盛り上げていくかを模索し始めているところでした。モバイル版とPC版をあわせたコミュニティ運営、そしてeスポーツとしてのPUBGをいかに盛り上げるかというのが自分のテーマでしたね。

 

▲井上洋一郎氏

 

――まずはこのPUBGというゲームの2年間を振り返ってみていかがでしょうか。

 

バトルロイヤルというゲームジャンル自体はPUBGが完全にオリジナルというわけではなく、MOD文化――つまり、プレイヤーが既存のゲームをもとにして、自らゲームを作っていってしまう文化――の中から形成された既存のタイトルのコミュニティというのはあったわけです。コミュニティの中にさまざまな人がいたなかで、ブレンダン・グリーンという人が中心的なMOD開発者だったのですが、彼と一緒に新しいバトルロイヤルゲームを作ろうというのがPUBGのそもそもの開発のきっかけです。当初は「あのブレンダン・グリーンが作ったゲーム」というふれこみでプロモーションをかけていきました。そういう意味では、当初はここまでビッグタイトルになると想定はしていなかったと聞いています。

 

――PUBGはコアな層はもちろんのこと、比較的ライトなプレイヤーにも受け入れられていった結果、同時接続が300万を越えるようなゲームになるわけですが、広い層を取り込めた要因は何だったのでしょう?

 

井上:ゲーム設計の部分でしょうね。PUBGもリアルな銃撃戦をともなうFPSで、そうしたものは通常コアなゲーマーのためのものです。しかしPUBGはFPSでありながら銃撃戦以外の要素、プレイヤー全員がアイテムを探し集めて戦ったり、生存を図ることが出来るゲームという特徴があります。プレイヤーのスタート地点も、アイテムの場所も、安全地帯の発生場所も毎回違いますから、銃撃戦がどうしても苦手でも、アイテムを集めて、敵から隠れて逃げ延びて、というだけでも毎回違ったストーリーを楽しむことができる。そして毎回違うストーリーがユーザー同士のコミュニケーションのネタになる。

 

それから、100人で同時に戦うというゲームなので、5対5のチーム戦のゲーム等と比べると「敵に倒される」ことへの責任感が薄くてすむ。オンラインゲームでは味方が弱くてイライラするとか、自分が弱くて迷惑をかけるのが怖いといったことがありがちですが、PUBGにはそれがあまりなくて、ゲームオーバーになっても「もう一回プレイしよう」というモチベーションになります。

 

 

――日本でのPUBGのコミュニティ展開というところでお話を聞きたいと思います。PUBGにはオンライン/オフラインのコミュニティや、いろいろなイベントがあったりしますが、全体的にみたときの御社の基本戦略を教えていただければと思います。

 

井上:いま特に日本で取り組んでいるのは、認知度の向上です。PUBGというゲームは海外での知名度は非常に高くて、入管の職員もホテルのフロントも、あのPUBGの人間かと声をかけてくるような状況です。それに比べると日本での認知度はまだ十分ではない。PUBGの認知度を上げるというのは、新しいユーザーの獲得につながるばかりでなく、既存のPUBGコミュニティのプライドを満たして満足度を上げるうえでも重要なことです。新しい人が入ってくるというのがコミュニティの活性化には欠かせないですからね。そのためにもPUBGがいろんな人に知られているという状態を作りたいと考えています。

 

――ブランドの認知度の向上という点で、どんなことを重要視していますか?

 

まずは一番手軽にプレイできるモバイル版を中心に施策を実施しています。モバイルは基本的にこれからの時代は誰でも持つ端末になるので、市場としての成長の余地も大きい。PC版のユーザーはゲーミングPCを買う経済力があって、リアルなシューティングが好きな社会人男性に偏りがちですが、一方でモバイル版はユーザー層が幅広く、イベントを開催すると女性や学生などもたくさん来ます。運営面でもPC版のイベントを開催する場合、機材調達や通信インフラの面で困難を伴うことがありますが、モバイル版のイベントは比較的容易で、ユーザーはいつでもどこでも集まれる。PUBGの認知度を上げ、ユーザーの裾野を拡げるという意味でモバイル版は重要です。実際、PUBGのオフラインのコミュニティはモバイル版を中心に多くのユーザーの方が自主的に活動してくださっています。

 

一方で我々としては、モバイル版の「PUBG MOBILE」からはじめた人が、ゲームとしての面白さを知り、もっと体験をしたいと思ったときに、PC版でのプレイをはじめるなどの流れを作っていきたいと思っています。

 

また、モバイル版とPC版をつなぐという意味では、その役割を果たすのがPUBGのeスポーツ、特に公認のPC版PUBGのリーグ戦であるPUBG JAPAN SERIES(PJS)だと思っています。

 

 

――PJSがスタートしてから、これまでの手ごたえはいかがでしょうか。

 

井上:おかげさまで動画配信される試合の視聴者数が順調かつ継続的に伸びています。PJSはPC版PUBGの大会なのですが、視聴者にはモバイル版のユーザーも多い。モバイル版のユーザーもプレイの参考になるからということで見てくれているのですが、それはPC版の開発運営で得た知見をモバイル版につぎ込んで、両コンテンツでなるべく同じゲーム体験になるようにしているからでもあります。

 

幅広い層がプレイできるモバイル版から認知を拡げていって、eスポーツ大会のPJSをより多くの人に見てもらって、その中からPC版をやってみたいという人が出る形につなげていく。ただ一方で、モバイル版をメインに取り組むゲーミングチームというのもでてきているので、モバイルの競技シーンも活性化させたいとは思っています。

 

もう一つeスポーツに取り組む上で非常に重要だと思っているのは、きちんと興行として成立することを目指すことです。具体的には、さまざまなスポンサーに入ってもらって、ビジネスとして成り立つようにする。それができればPUBGの選手もチームも職業として成り立つでしょう。まだまだ時間はかかりそうですが、そこまでできたら本当の意味での成功といえます。

 

その実現のためには、多くの人に「見て」「楽しんで」「感動していただく」こと以外ありません。動画の視聴者数が伸びているという点では実現に向けて近づいているといえます。

 

――「PUBGのeスポーツ」の強みについて教えてください。

 

身近なコミュニティから出た選手が自分たちの代表として世界で戦うこと、またそれを応援することが「eスポーツ」の一番盛り上がるところだと思いますが、「身近なコミュニティ」、「世界で戦う舞台」という条件がPUBGというタイトルにはそろっています。PUBGは日本でもeスポーツとして本格的に取り組むプレイヤーがたくさんいますが、一方でモバイル版の人気により裾野が広がり、コア層からライトユーザーまで含む広い「身近なコミュニティ」が形成されているゲームです。日本国内のリーグを勝ち抜いて、そこから階段式に世界の大舞台に挑戦する選手たちは「身近なコミュニティ」の代表で、コミュニティ全体で応援することになります。

 

そしてPUBGは「バトルロイヤル」というジャンルを牽引してきた、グローバルな知名度のあるコンテンツだからこそ、世界で戦う舞台を提供できる。そこが強みだと思います。

 

――ありがとうございます。

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