WeWork Japanとエクストリームのトップ対談

WeWork Japan 合同会社 ジョニー ユーCEO「新しい働き方と出会い」

#インタビュー

新型コロナウイルス感染症拡大を機に一気に広まったテレワークの普及にともない、新しいオフィス環境を提供する企業にも注目が集まりました。一方、コロナ禍が過ぎ去った今、感染症予防以外の観点でオフィスの意義を再考する企業が増えています。エクストリームでも2023年8月より本社のあるメトロポリタンビル内にあるWeWorkと契約し池袋開発室として活用しています。

日本におけるオフィスのありかたとイノベーションをテーマに、WeWork Japan 合同会社 CEO ジョニー ユー氏(以下、ジョニー)と株式会社エクストリーム代表取締役社長 CEOの佐藤(以下、佐藤)が対談しました。

 

「フレキシブルオフィス」とエクストリームの出会い

 

 

– まずは事業の紹介とお二人の出会いについて教えてください

 

ジョニー:

WeWorkはフレキシブルオフィスを提供している会社です。フレキシブルオフィスとは、色々な人が様々な使い方ができるオフィスで、短期契約から長期契約までさまざまな契約形態で提供しています。

 

これまでのコワーキングオフィスやシェアオフィスは、短期で使いたい事業者や、日本における与信が積み上がっていない外資系企業など、一部の方にとって使いづらいものでした。WeWorkは多様な契約形態を備えているため、そうしたお客様への働く環境のご提供や、さらに経費削減にも貢献しています。また入居メンバー様からは好立地で使い勝手がよいとも言っていただいています。

 

また、WeWorkの大きな特長は共用エリアを真ん中に大きく据えているという点です。作業をするためのオフィスという側面だけではなく、人との偶然のつながりの中で新たな出会いを生む場として機能し、そうして構築された人とのつながりからイノベーションが起きると考えています。

 

実は、WeWorkの発祥の地であるアメリカでは、こうした形でイノベーションを起こすことがすでに当たり前となっています。このような新しいオフィス環境はこれからの日本にこそ需要があると思っています。

 

どんな方であっても、安心安全な場所で、かつWeWorkのスタッフがお手伝いをすることで自然に他者との出会いが生まれます。また月間数百件開催しているイベントの中からも新しいクリエイティビティが生まれています。このような活動が、結果として日本社会への貢献にもなっていると信じています。

 

▲WeWork Japan 合同会社 CEO ジョニー ユー氏

 

佐藤:

われわれは18年前に4人で池袋の小さなワンルームマンションで創業しました。当時オフィスを探した際には、すぐに契約という大きな壁にぶち当たり、時間がかかった記憶があります。部屋が借りられないと当然オフィス家具などの必要なものを買えないので、業務の開始に時間がかかってしまいました。創業直後の「よしやるぞ」という気持ちを維持することが大変でした。あの時にWeWorkさんのようなフレキシブルオフィスがあればどんなによかっただろうと思います。

 

エクストリームはデジタル人材事業、受託開発事業、そして自社IPを活用したサービスの提供やライセンスアウトを行うコンテンツプロパティ事業という三つの事業を行っています。WeWorkに入居したきっかけは、受託開発事業において、これまでウォーターフォール型だった開発プロセスが、アジャイル型にシフトしてきたことです。プロジェクトの進捗に応じて必要な人員が変化し、

大きな人数の変動に対応するために、オフィスのスペースや席数をフレキシブルに変える必要がありました。そんな時に、オフィス利用まで非常にスピーディーに行うことができ、さらに現在のWeWork内の当社「池袋開発室」は本社と同じビルなので、コミュニケーションも円滑に進むので利用させていただくことになりました。

 

▲本社と同じメトロポリタンビルのWeWorkに入居している「池袋開発室」

 

– WeWorkの入居者様はどのような方がいらっしゃいますか。

 

ジョニー:

WeWorkは、これまでエクストリーム様のようなIT企業を中心に使っていただき、ここまで成長することができました。一方で、コロナ禍の影響もありIT業界以外でも働き方を変えなければ、という意識が生まれているように思います。

最近では、日本を代表する航空会社や自動車メーカー、セキュリティ意識が非常に高い金融業などIT業界以外のあらゆる企業にもWeWorkを使っていただけるようになりました。

数年前には固定したオフィス以外で働くことは考えられなかったような企業様にも使っていただいているのは、日本の大手企業の意識が変わってきたからだと感じています。

 

 

– セキュリティ意識の高い企業が入居するようになったのは、出会いの場が大切だという考え方にシフトしてきているからでしょうか。

 

ジョニー:

それもあると思いますが、セキュリティ水準を満たすための努力が実ったという側面もあるかもしれません。日本では金融業の企業様にオフィスを貸し出すには、金融庁の認可を取得するためにセキュリティ基準を満たしていることを事業者が示す必要があります。これが非常に難しかったのですが、認可を取得できたことで、金融業を含むお客様に使っていただけるようになりました。

 

 

佐藤:

WeWorkはセキュリティが担保されているだけではなく、明るさや雰囲気も非常に魅力的ですよね。いわゆる「テレビドラマで見たようなすてきな空間」を実現してくださっているのは、従業員にとって非常にポジティブな影響を与えると思っています。本社勤務のスタッフをWeWorkに案内すると、特に女性は「ここで働きたい」って言います(笑)。

 

ジョニー:

WeWorkはデザインにこだわっているので、そう言っていただけてうれしいです。今女性の話があがりましたが、これからの日本の経済成長には女性の活躍が欠かせないと考えています。その観点からもWeWorkでは、女性が働きやすい環境で、生産性をアップできる環境を作るということを意識しています。

 

コロナ禍が与えた働き方への影響

 

– コロナ禍を通して、場所を問わない働き方が定着したと思いますが、コロナ前と比較して変化を感じますか。

 

ジョニー:

国によっても違いますが、アメリカと日本を比較すると、アメリカではコロナ前は郊外から車で通勤するのが一般的でしたが、渋滞で会社まで1時間半かかってしまうことがよくありました。それがコロナ禍を経てリモートワークが一般的になったことで、通勤時間がなくなりました。

 

アメリカが日本と異なる点は、家が広いので、家の中でオフィス環境を整えることが比較的簡単にできることです。一方日本では公共交通機関が整っていますし、電車などはきっちりと時間通りに動くので、コロナ後は住居を会社のある東京に戻して週のうち何日かはオフィスにいくというような柔軟な働き方が定着しているように思います。また、そうしたフレキシブルなニーズにもWeWorkは対応しています。

 

 

– 最近は大手企業も入居を始めているそうですね。その理由は何だとお考えですか。

 

ジョニー:

WeWorkは2019年ごろから急成長をしていますが、拠点を増やすことよりユーザーの声を聞くことに重点をおくようにしました。

たとえば大手企業に使っていただくためにはどのようなニーズに応えなければならないかを考え、細かな要望にも応えるようにして、可能なこと全てに取り組みました。このような姿勢が少しずつ評価され、大手企業にも使っていただけるようになったのだと思います。

 

また今は大手企業であっても優秀な人材を採用するために様々な試行錯誤をしているので、WeWorkで働けることを魅力のひとつとして求職者にアピールしていただいています。

 

「新しい働き方」が提供できる価値

 

– フレキシブルオフィスであるWeWorkの入居メンバーが増える中で、大手企業とベンチャー企業とがつながるということも起きるでしょうか。

 

ジョニー:

そうですね。すでに新宿や渋谷では実際にマッチングが起き、オープンイノベーションが生まれています。すべての拠点で自然にそれが起きるわけではありませんが、WeWorkをひとつのプラットフォームとして横のつながりをつくっていただくことは可能です。

 

WeWorkのコミュニティを通していただければ、全国的なネットワークの中でおもしろい会社とのマッチングを実現できる可能性もあります。

 

 

佐藤:

事業を進めていくにあたって、一人でできることには限りがありますからね。設立時に一番必要なものは人脈だと思います。早く事業を軌道に乗せるには、人脈を得る出会いの場は絶対に必要です。WeWorkは、多様性を重視してお互いを尊重し合い、助け合い、人との絆を大切にしていると聞いています。私自身もそのような、他の方の意見を尊重し、一人一人の才能を認めることが大切だと思っています。

 

また、WeWorkオフィス内では、新たな出会いをサポートしているとも聞きました。個々の出会いを中心とした開かれた環境だからこそ、新たな企画や発想が生まれそうです。大企業、中堅企業、フリーランスの立場に関係になく、コミュケーションを取れる環境がイノベーションには重要かと思います。

 

ジョニー:

現在WeWorkの拠点は7割以上が東京にありますが、日本が成長するためには東京だけでは足りないと思っています。地方都市も含め全国に拠点があるからこそより多様性のあるネットワークが生れると考えています。たとえば、地域によって文化や商習慣が異なることもありますが、各拠点のコミュニティチームがサポートをすることで、そうした多様性を生かしたコラボレーションを実現していきたいです。

 

「場所の提供」と「デジタル人材提供」のコラボレーションの可能性

 

– 場所としてのオフィスだけではなく、出会いの場としてのオフィスからどのようにイノベーションが起こるでしょうか。

 

ジョニー:

私たちの基本的な考え方として、入居メンバーの皆様が喜んでくれることだったら何でも検討したいと思っています。入居メンバーの皆様が成長していくことが、私たちの事業においても財産だからです。3〜4人くらいでWeWorkを使い始めていただくケースが多いのですが、入居してから5〜10年先、そして上場するまでずっと使っていただきたいですね。WeWorkから日本のユニコーン企業がたくさん出ているよねと言っていただけたら、これ以上に嬉しいことはありません。

 

これまでのシェアオフィスは、コンシェルジュがいたり、住所が登記できたりすることが価値でした。WeWorkはもっとビジネスとして価値のあるサービスを提供して相乗効果を生んでいきたいのです。

スペースやコミュニティを提供するだけでなく、新しいビジネスにつながるマッチングを働きかけたり、新規事業投資の知見を生かしたアドバイスなどをしたいと思っています。日本の組織は昔はサイロ的(部署が孤立している)な文化が一般的でしたが、今はみんなでがんばろうという文化に変わってきていると思いますので、今の日本の組織に合わせてサポートしていきたいですね。

 

 

佐藤:

おっしゃるように、事業を伸ばすためには、自分のテリトリーにいるだけでは成功しないですよね。

インターネットの世界では、情報が絶え間なく行き来しており、人と人とのネットワークもインターネットの世界では、既に存在していると思うのです。インターネットの空間の中で、色々な出会いがあったり、それがビジネスに発展したりすることはすでに実現されています。その一方で、WeWorkが人と人の繋がりをリアルで実現している取り組みはユニークだと思います。今後も積極的に利用していきたいです。WeWork入居メンバー同士、フリーランスなどの個人事業主と大手企業とはマッチングが難しいものなのでしょうか。

 

ジョニー:

今は大手企業同士しか付き合わない、という文化は薄れているので、マッチングの可能性は十分にあると思います。また大手企業に限りませんが、色々な方との出会いから次のアイデアやビジネスチャンスをつかみたいということを考えている方が増えています。私たちは多くのマッチングイベントを開催していますが、直接のやりとりが苦手なシャイな方にはコミュニティチームからのサポートという形でマッチング支援が可能です。

 

佐藤:

エクストリームではフリーランスのエージェントサービスを行っています。

入居している企業の方に、当社に登録しているフリーランスのエンジニアやクリエイターを紹介するという可能性はありますか?

 

ジョニー:

可能性は大いにあると思います。古くからの大手企業の中には、これまでフリーランスに対してアレルギー反応を示してしまう企業も多くあったかもしれませんが、最近は、フリーランスをうまく使う方がメリットを得られるという考え方もありますし、もっというとフリーランスと組んだ方がプロジェクトが上手くいくという例もよく聞きますしフリーランスから社員に登用されたというケースもあります。私たちもこれまで以上にフリーランサーとの関係構築を考えたいと思っているところですので、ぜひエクストリーム様とも協力できることがあれば嬉しいです。

 

「新しい働き方」がつくる未来の日本

 

ジョニー:

社会を動かすためには優秀な人材がお互いを刺激し、ネットワークを作っていくことが重要だと思います。これはこの30年ほどの間でアメリカのシリコンバレーでやってきたことですが、日本でもWeWorkのような環境があれば、安心して人と人が交流できネットワークを作ることができます。そうするとシリコンバレーと同じような成功が日本でもできる可能性があると思うのです。

 

日本は戦後に「日本をどうにか立て直さないといけない」という気概のもとで急成長ができたと思いますが、今もう一度日本に大きな成長のサイクルが到来しているのではないでしょうか。WeWorkもこの先もっと日本の入居メンバー様のため、社会のためになにをやっていけばいいか考えていきたいです。

 

佐藤:

私は、インターネットはマジョリティが有効に働くシステムだと考えています。たとえば中国が急成長した要因のひとつに、中国語圏でインターネットを介していち早く大きなコミュニティやサービスが生まれたからではないでしょうか。日本がソフトウエアで勝っていくためには、言語能力の習得など、人材育成も必要だと思います。

 

ジョニー:

そうですね。これから日本はビザを取るハードルが低くなるなど、どんどん人材を集めやすくなってきます。また最近はChatGPTのようなツールが出てきたことで、言葉の壁がどんどんなくなってきて、ほぼ同時通訳のようなこともできるようになりました。そうした技術によって、これまで不可能だったグローバルでのコラボレーションも可能になると思います。今の日本は外国人にとって、住みやすい環境になっているので、東京以外の都市にも優秀な外国人材が来られるようになると良いですね。

 

佐藤:

日本の未来を考える時に「ロボット」がキーワードになると考えています。例えば日本では工場のオートメーション化で使われている産業用ロボットが世界をリードしていると思いますがジョニーさんは「ロボット」についてどのようにお考えですか?

 

ジョニー:

確かに産業用ロボットは日本が一番だと思います。しかし、次に登場するのはコンシューマー用ロボットになると思います。特に日本は人手不足に直面していますので、ロボットの需要がますます高くなると思います。

 

日本のロボットは安全に対して高い信頼性があるので、介護ロボットのように身体に直接関係するロボットも、日本製のものならば安心感があります。また、日本ではロボットは「友達」という感覚があり、コンシューマー用ロボットの開発にぴったりの感覚を持ち合わせていると思います。

 

ロボットの導入により、少子化問題も解決され、より多くのことを実現できると思いますし、高齢者の社会参加も促せるのではないでしょうか。私自身の経験からも、人生には目的が必要であると思っています。これまで働くことができなかった方が目的を持って働けるようになれば、より多くの人が健やかに過ごせる社会になるのではないでしょうか。

 

 

– ありがとうございました。新しい働き方の実現は、個々の事業の発展に貢献するだけではなく、日本全体でイノベーションを起こすきっかけにもなるとあらためて気付かされました。今後ともエクストリームとWeWorkの関係の中で、ぜひセレンディピティを見つけられたらと思います。

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