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人材派遣業向けSFAを自社開発。現場目線の開発プロジェクトPhase1

#インタビュー

属人化からの脱却、SFA開発背景

 

デジタル人材派遣で長年の実績をもつエクストリームは、事業をさらにスケールさせるために営業の業務効率化を推進しています。営業の業務は営業スタッフに属人化する傾向にあり、各々の提案スキルや管理能力に依存していました。この状況を打破するために営業品質の標準化やレベルアップは欠かせません。そんな自社の抱える課題を解決するために、派遣業の営業管理に特化したSFA(セールスフォースオートメーション)を自社プロダクトとして開発しました。自社の営業が抱える課題を自社のITエンジニアたちがダイレクトにキャッチアップして開発に反映。まさにエクストリームだからできるプロダクト開発です。今回は、SFAの開発背景とプロダクトの特長について、受託開発事業の責任者であるの永田とプロジェクトリーダーの小林に話を聞きました。

 

- このツールの誕生背景を聞かせてください。

 

 

永田

「当社の開発したSFAは、エクストリームが長年にわたって抱えている課題を解決する手段として誕生しました。その課題とは、営業活動の属人化です。これまで、各営業スタッフが持つ情報が適切に共有されておらず、ある営業スタッフが退職すると、情報や知見がまるごと失われてしまうという問題でした。また派遣業界は人材の流動性が高く、経験豊富な人から業界初心者まで幅広く存在します。これが原因で個々の営業品質にばらつきが生じ、営業組織全体の予算管理や売上の予実コントロールが困難となっていました。

 

このような状況が発生した原因の一つに、人材事業に特化した営業情報を一元管理するツールの不在があります。これまで当社は、さまざまなExcelを併用して営業情報の管理を行っていました。しかし、Excelの中でも、クライアント管理用のExcel、日々の行動管理用のExcelなど、多様なExcelシートが存在するだけでなく、Excelとは異なるツールを用いて業務をする場合もあるなど、社内に管理ツールが乱立する状態になっていました。

 

これにより、営業スタッフが日々の業務をこなすためには、複数のツールを一つ一つ確認し、使い方を覚える必要がありました。これでは、業務の効率が悪いですし、情報の抜け漏れも発生していました。

 

また、複数のツールの併用には限界があります。営業スタッフの人数が少ない派遣会社であれば、Excelだけで管理が可能かもしれません。しかし、営業スタッフが20名、30名、50名以上と増えるにつれて、各ツールの使い方にばらつきが生じます。その結果、管理者が全体の状況を横断的に把握することが困難になり、効率的な運営が難しくなってしまします。

 

こうした状況の中、システムを統一しようという動きにつながったのです。システムを統一すれば、情報の入力や共有が容易になり、使用者による操作のばらつきも解消されます。さらに、管理者は誰がどんな行動をしているのかを同一のシステム上で把握できるため、より効率的な管理が可能になります。既存のツールには自分たちの要求にマッチするツールはないため、自分たちのニーズに合わせて必要な機能を持つものを自らフルスクラッチで開発する方針に舵を切ったのです。」

 

真に現場で”使える”ツールへ。徹底的にユーザーに寄り添う開発

 

- プロジェクトはどのように進められましたか。

 

 

小林

「開発プロジェクトの発足当時は、プロジェクトリーダー、システムエンジニア、そしてプランナー兼ディレクターの私の3名でスタートしました。私は企画の骨子を作成しましたが、永田には営業的な視点から、企画に肉付けをする業務をしていただきました。たとえば、われわれが何をビジネスゴールとするのかを可視化した社内提案や、必要な機能を織り込んだ要求仕様書の作成、そしてシステムの中長期的な将来像を具体化する作業を担っていただきました。

 

プロジェクトの初期段階では、永田が作成した要求仕様書を基に、必要な機能の洗い出しをおこないました。その後、画面設計書やワイヤーフレームを作成し、実際に営業チームとすり合わせを進めていきました。このとき営業スタッフからも「これがあったらいいね」や「これは不要だね」といったフィードバックが得られたので、それらを反映しつつプロダクトの最終形態をつくっていきました。」

 

- 開発を進めるにあたり、営業スタッフの意見を積極的に取り入れたと聞いています。具体的にはどのような手段で営業スタッフの意見を吸い上げたのでしょうか。

 

 

小林

「プロジェクトの初期と中期以降で、営業スタッフとのコミュニケーション方法は大きく変化しています。初めは週に一回の営業チームとの打ち合わせのみで欲しい機能のすり合わせなどを行っていました。しかし、次第に業務に対する認識に大きな齟齬があることに気づいたのです。そこで、私自身が毎日開かれる営業報告会に参加し、営業スタッフがどのような情報を交換しているかを見聞きできるようにしました。これは大きな転換点で、営業間のコミュニケーションでどのような情報が重要かを深く理解できるようになっただけではなく、開発メンバーと営業スタッフの認識のギャップを瞬時に修正するできるようになりました。

 

たとえば、「顔合わせ」や「提案」といった、クライアントの状態を示す営業用語は、管理ツールでは頻繁に目にするものです。しかしこれらが実際の営業報告会でどのような文脈で使われているかを知ることは、営業報告会に参加して初めて理解できたことでした。これらの営業用語が具体的にどの状況で使われるかを把握したことで、システムの設計の基本思想を具体化し、操作性を向上させるための重要な手掛かりを得ることができました。

 

また、派遣スタッフとしても業務をおこなってきた私としては、営業報告会に参加したことで、自分と同じ派遣スタッフがどのように管理されているかを知る体験そのものが目から鱗の連続でした。営業チームがクライアントだけでなく、派遣スタッフに対してもきめ細かく対応していることを実感しただけではなく、クライアントや派遣スタッフを適切にサポートするために、どのような情報が役立つかが見えるようになりました。

 

- そうして生まれた、具体的な機能や、それらの開発の手法について教えてください。

 

 

小林

「まずご紹介したいのが、営業スタッフ全員が利用するダッシュボードです。これは、営業スタッフごとに設定されたマイページのようなもので、日単位や月単位で営業活動を一覧表示し、業務の進捗を視覚化できるよう設計されています。

 

次にクライアントのリスト機能があります。これは各営業スタッフが関わるクライアントの一覧を表示し、担当するクライアントのステータス、たとえば「提案」「顔合わせ」などの状態をリアルタイムで確認できるようになっています。

 

三つ目はタスクリマインダー機能です。これは営業スタッフが設定したタスクの期限に応じて自動的にアラートを発するもので、期限の前日と当日に通知が出ます。これにより、とるべき対応が遅れてしまい、案件を逃すことを防ぐことができると考えています。

 

最後に、細かい機能として、アクション促進機能があります。営業スタッフは多くのクライアントを管理しているため、クライアントによっては頻繁に連絡を取っておらず、関係が途絶えがちになることがあります。そこで、最後の連絡から一定期間が経過したクライアントに対して、「そろそろ連絡を取った方が良いかもしれません」とアドバイスする機能を導入しました。こうしてクライアントとの関係を維持し、最後の提案から一定の時間が経ったとしても別の提案がしやすい状態を維持できるようにしました。」

 

 

永田

「開発手法としては、営業現場のスピード感に合わせ、改善サイクルを早く回すために、アジャイル型の開発を取り入れています。一方、業務の根幹となる部分の設計はウォーターフォール型です。いわばハイブリッド形式の開発で、双方のメリットを取り入れられるように努めています。」

 

小林

「デザインについては、Googleが推奨するマテリアルデザインを参考にしました。基調は白で、部分的に青を使用しています。有彩色の使用を抑えることで、全てのユーザーが視覚的に認識しやすくなるよう配慮しました。これによって、Googleのアクセシビリティ基準にも適合した設計となっています。」

 

進化を続けるSFA。成果と今後の展望とは

 

- 2024年2月の社内リリースから約2か月が経過していますが、実際に使った営業スタッフから反響はありましたか。

 

小林

「営業スタッフからは、やはり連絡漏れがなくなったいう反響があります。特に提案数が多いときは、顔合わせまでの機会が得られても、その後のフォローアップが行き届かないことが現場で感じる大きな課題であったようです。導入によって、これまでフォローアップが漏れていた案件の回収率が顕著に改善したと聞いています。」

 

永田

 

「一方で、現時点はまだ既存ツールからの完全な移行を果したわけではありません。営業スタッフは、新しいSFAと並行してExcelも使用しています。SFAは営業の業務プロセス全体に影響を及ぼす大規模なシステムであり、すべての機能を備えるには1〜2年かかると見込まれています。そのため、導入は段階的に行っており、現在はフェーズ1の段階です。フェーズ2ではさらに操作効率を向上させ、フェーズ3で必要な機能を全て統合する準備を進めています。

 

現状のフェーズ1では、従来の複数のExcelで実現していた機能を一部取り込みました。そのためシステムのUIもExcelに似せており、Excelを使い慣れた営業スタッフが使いやすいよう工夫しました。これは、以前さまざまなツールを導入した際、毎回新しい操作の習得が必要であった経験から、できるだけ新しい操作を覚えることなく済むよう工夫をした結果です。

 

フェーズ1の状態でも、Excelと比較して改善した点はたくさんあります。先述のように、以前は異なる集計単位で営業成績を見るために複数のシートを切り替える必要がありましたが、今は同じシステム画面上で集計単位を変更できるようになり、作業効率が向上しました。

 

また、Excelでは手動操作による計算ミスや入力ミスが頻発していましたが、システムへの統合により、これらのミスが大幅に減少し、正確な数値が得られるようになりました。

 

2024年4月現在、フェーズ2の開発に既に着手しており、並行してフェーズ1に対する改善も進行中です。営業スタッフからのフィードバックを日々受け取り、迅速に対応できるようにエンジニアと協力しています。」

 

小林

「私はフェーズ1の開発期間から継続して営業会議に参加し、継続的に営業スタッフの生の声をキャッチアップしています。フェーズ1で取り入れなかった要望は、次のフェーズの改善点としてしっかりと受け止め、今後もより良いツールに進化させるよう努めていきたいと思います。」

 

 

「ないものは作ればいい」という発想でスタートした自社SFA開発プロジェクト。デジタル人材派遣の営業が求めるツールとして、これからもアップデートしていきます。そして同じ課題を抱える人材派遣会社や提案営業の会社向けにSaaSとしてのリリースも視野に入れて、フェーズ2、フェーズ3へと開発を進めていきます。

 

※こちらのインタビューは2024年4月に実施されました。本文中の情報は取材当時のものになります。

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