フリーランスと「お金」の話。資金繰りで慌てないため独立前から知っておきたいこと

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会社員生活に別れを告げ、自由な働き方へ舵を切る。フリーランスという選択は、あなたの人生を大きく変える可能性を秘めています。しかし、その自由と引き換えに、会社員時代とは違った「お金」との向き合い方が重要になってきます。

 

今回のコラムでは、フリーランスの資金繰りに関する基本的な知識やノウハウを解説。キャッシュフロー管理のコツや、資金が足りなくなる前にしておきたい対策、万が一の時に検討したい公的な貸付・融資、給付金や助成金なども紹介します。

ぜひ、フリーランスになってからの資金繰りのヒントにしてください。

資金ショートを防ぐために知っておきたい基礎知識

 

 

フリーランスにとって、キャッシュフローの管理は事業継続の要です。

 

2022年に行われたインターネット調査によれば、69.1%のフリーランス・自営業者が、一時的に資金繰りが厳しくなった経験があると答えています。その理由の大半は、コロナや家庭の事情などですが、16%は「計画性がなかった」と答えています。

 

不注意が原因で資金繰りが悪化することを避けるには、まず、報酬が振り込まれるタイミングと、出費の内容・タイミングを正確に把握する必要があります。

 

出典:フリーランス・自営業の収入・支払いに関する調査を実施!|ペイッター

 

支払いサイト:「仕事をした月」と「報酬が振り込まれる月」は違う

 

仕事を受注してから報酬を受け取るまでの期間は、クライアントとの契約によって異なります。例えば、「月末締め翌々月15日払い」の場合、4月1日に納品した仕事の報酬は6月15日に振り込まれるため、最長2ヶ月半のタイムラグが発生します。

 

これを「支払いサイト」と呼びます。支払いサイトを意識せずに、「大きな仕事を受注したからパソコンやプリンターを新調しよう!」とお金を使ってしまうと、報酬が振り込まれる前にクレジットカードの請求が来て、資金がショートしてしまう…といったことになりかねません。

 

フリーランスは、仕事をした月で収入を考えるのではなく、報酬が振り込まれる月で考えるようにしたほうが確実です。クライアントごとの支払いサイトを理解し、入金のタイミングを正確に把握しておくことで、資金ショートを未然に防げます。

 

なお、令和6年11月1日に「フリーランス保護新法」が施行されました。その中の4条では支払いサイトについて定めており、発注事業者がフリーランスに業務委託をした場合、原則として、受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間に支払うこととされています。

 

今後、発注事業者(フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの)からの業務委託に関しては、支払いサイトは最大でも60日となります。なお、フリーランス同士の業務委託には適用されないため注意が必要です。

 

【PR】エクストリームフリーランスは支払いサイトが「15日」

 

フリーランスが自由に案件を閲覧して応募できるプラットフォーム「エクストリームフリーランス」は、業務委託契約の際の支払いサイトを一律15日に設定しています(作業月末締め翌月15日支払い)。今月の報酬を翌月15日に受け取れるので、資金繰りの心配を大幅に減らせます。

 

エクストリームフリーランスは、年間7,000件以上の案件実績数があるデジタル人材の総合エージェント。事業の安定のためにも、どのような案件があるか、エクストリームフリーランスのウェブサイトを覗いてみてはいかがでしょうか?

 

 

【税金・保険・年金】会社員は天引き、フリーランスは自分で払う

 

会社員の場合、健康保険料、年金(厚生年金)、住民税、所得税などは給与から自動的に引かれるのが一般的。そのため、受け取った給与は、そのまま生活費や貯蓄に回すことができます。

 

しかし、フリーランスはすべて自分で支払う必要があります。この違いを理解していないと、クライアントから振り込まれた報酬の全額を、生活費や事業経費にあててしまい、健康保険料、年金(国民年金)、住民税、所得税などが払えなくなるので注意が必要です。

 

税金

フリーランスが支払う税金は、次の4つです。ただし、すべての人が4つ全部を支払う義務があるわけではありません。課税対象になるかは事業の所得額や就業状況によって異なります。

 

【フリーランスが支払う主な税金】

・住民税(年4回払い)

・所得税(年1回。3月15日)

 

課税対象者

・個人事業税(年2回。8月末、11月末)

・消費税(年1回。3月末)

 

このうち、うっかり忘れやすいのが「住民税」です。年4回、納付書で納めるか、口座引き落としで納めます。最近では、クレジットカードなど電子マネーでの支払いが可能な自治体も増えています。

 

税金についての詳細と節税方法についてはこちらの記事も参考にしてみてください。

健康保険

フリーランスの場合、健康保険の加入には3つの選択肢があります。

 

1.国民健康保険に加入する

2.社会保険を任意継続する

3.国民健康保険組合に加入する

 

【国民健康保険】

・原則、6月から翌年3月までの10回払い

・保険料は収入や家族構成、年齢によって変動する

 

国民健康保険料は、ほぼ毎月必ず支払うものです。近年は高齢化の影響から、支払う保険料が高くなっています。忘れずに毎月の支払予定に組み込みましょう。

 

支払いは、送られてくる納付書を使って現金で支払う他、銀行引き落としも可能です。また、クレジットカードなど電子マネーでの支払いができる自治体もあります。

年金

【国民年金】

・毎月払い(国民年金保険料は一律16,980円(令和6年度))

・前納(6ヶ月、1年、2年)割引あり

 

国民年金保険料(掛金のこと)は、毎月支払います。こちらも、忘れずに毎月の支払予定に組み込みましょう。資金に余裕があれば、前納(6ヶ月、1年、2年)すると払い忘れがなくなり、割引も受けられます。

 

支払いは、送られてくる納付書を使って現金で支払う他、銀行引き落としも可能です。また、クレジットカードや電子マネーでの支払いも可能です。

 

資金が足りなくなる前に。資金繰りの具体的な方法

 

 

フリーランスとして活動していると、資金の流れに一時的な滞りが生じることがあるかもしれません。そうした状況に備え、資金が不足する前に活用できる手段を知っておくことが重要です。

 

クレジットカードを使用して経費の支払いを伸ばす

 

経費の支払いにクレジットカードを利用することで、支払いを一定期間引き延ばせます。

 

クレジットカードは、月末締め翌月26日支払いといったように、締め日から実際に引き落とされる日まで1ヶ月近いタイムラグがあります。この猶予期間をうまく利用することで、一時的な資金繰りの調整に役立つ場合があります。

 

また、クレジットカードによっては、利用額に応じたポイント付与やキャッシュバックが得られるため、経費削減にもつながります。ただし、使いすぎにはくれぐれも注意しましょう。

 

フリーランスの場合、個人用のクレジットカードを経費の支払いに利用できますが、それとは別に、事業用のクレジットカードをつくっておくと、資金を分けて管理しやすくなります。

 

ファクタリング(請求書買取サービス)を利用して支払いサイトを短くする

 

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社が買い取って現金化するサービスのことで、請求書買取サービスとも呼ばれます。

 

フリーランスの場合、クライアントに対して発行した請求書をファクタリング会社に渡すと、本来のクライアントからの支払期日を待たずに振り込みを受けられます。特に支払いサイトが長いクライアントの場合、大幅に短くすることが可能です。

 

ファクタリングは審査が比較的厳しくなく、担保や保証人も不要なことが多くなっています。最近では、フリーランス向けのサービスも多数登場しており、利用しやすいはずです。ただし、利用には手数料がかかり、受け取れる報酬は減るので注意しましょう。

 

国や自治体の「給付金・補助金・助成金」を活用する

 

フリーランスは、国や地方自治体から支給される、給付金、補助金、助成金などの対象になることがあります。これらの資金は返済不要であるため、活用できれば事業費に余裕ができます。

 

個人事業主が利用できるものは、必ずしも多くありません。また、事業内容や、事業のフェーズによっても利用できるものが異なります。しかし、メリットが大きいため、国や地方自治体が提供するさまざまな支援プログラムを定期的にリサーチすることは大切です。ここでは、主な補助金を2つ紹介します。

 

【補助金】小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、個人事業主を含む小規模事業者の販路開拓や、業務効率化を資金面から支援する制度として2014年にスタートしました。

 

過去には、新製品の開発に伴うWEBサイトの展開、リーフレットの作成について採択された実績もあります。事業の内容次第では十分可能性のある補助金といえるので、ぜひチェックしてみてください。

 

出典:小規模事業者持続化補助金|全国商工会連合会

 

【補助金】IT導入補助金

IT導入補助金は、業務のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に必要なITツールの導入にかかる費用を補助する補助金です。条件を満たすことで、個人事業主でも対象になります。

 

ITツールを対象にした「通常枠」以外にも、インボイス制度に対応した会計ソフトや、PCを導入するための「インボイス枠」、サイバー攻撃に備えるための「セキュリティ対策推進枠」などがあります。これらは、ITフリーランスでも申請できる可能性があるため、チェックすることをおすすめします。

 

出典:IT導入補助金

 

資金が足りなくなってしまったら。緊急時の対策

 

どんなに資金繰りに気を配っていても、予想外の事態が起こり、資金繰りが苦しくなってしまうことがあるかもしれません。 そんな緊急事態のために、資金調達の手段を知っておきましょう。

 

公的機関の「貸付・融資」を利用する

資金繰りが難しく、貸付や融資を受けることもあるでしょう。しかし、個人事業主の場合、銀行から融資を受けるのはかなりハードルが高いと考えられます。ビジネスローンなら比較的審査が通りやすいですが、一般的に高金利です。

 

そこで、最初に検討したいのが公的機関による貸付や融資です。民間の金融機関よりも低金利で、門戸も広く開かれています。事前に必要な書類や手続きを把握しておけば、一時的な資金不足を乗り切る助けになるはずです。

 

【日本政策金融公庫】セーフティネット貸付

日本政策金融公庫は、民間金融機関を補完し、事業者を支援することを目的とした、財務省所管の特殊法人です。

 

セーフティネット貸付は、社会的、経済的環境の変化によって、一時的に事業そのものや、資金繰りが悪化してしまった企業や個人事業主を対象としています。一般貸付では、最大4,800万円を低金利で貸付を受けられるので、条件に当てはまる場合は検討する価値があります。

 

出典:経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)|日本政策金融公庫

 

【中小機構】一般貸付制度(共済契約者貸付)

中小機構は、国の中小企業対策の中核機関として、中小企業・小規模事業者をサポートする機関です。

 

一般貸付制度は、事業に必要な運転資金や事業に関連する資金、または生活資金として貸付を行う制度です。借入期間は6ヶ月から60ヶ月までで、年利率1.5%(2024年11月時点)の低金利で貸付を受けられます。

 

なお、この制度は中小機構の「小規模企業共済」の加入者向けとなっています。小規模企業共済は、小規模企業や個人事業主のための退職金ともいえる積立制度で、月々1,000円から積立が可能です。

 

6ヶ月以上掛金を納付すれば、積立した掛金は廃業時に共済金として受け取れます。いざという時に貸付を受けるためにも、加入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

出典:共済契約者貸付|中小機構

 

フリーランスを対象にしたビジネスローンを利用する

近年、フリーランスや個人事業主を対象としたビジネスローンを提供する金融機関が増えています。ビジネスローンは事業資金として利用することを目的としたローンであり、一般的なカードローンなどと比べると、金利も低く設定されています。

 

無担保・無保証で融資を受けられる商品が多く、オンラインで申し込みや審査が完結するため、急な資金繰りにも対応できます。ただし、公的な貸付や銀行、信用金庫からの融資に比べると金利はかなり高いことが多いことも事実です。

 

ビジネスローンは、返済計画をしっかり立て、最小限の金額を短期間借りるなど、十分なリスク管理をした上で利用するようにしましょう。

 

融資を受けやすくするための工夫

 

事業計画書や返済計画書を準備することで、融資を受けやすくなる場合があります。ここでは、具体的な工夫について紹介します。

 

事業計画書を作成する

企業の融資審査では、一般的に事業計画書を提出します。事業計画書には、経営理念や今後の事業に関する計画が書かれており、これが融資結果を大きく左右すると考えられています。

 

フリーランスの場合、事業計画書を作成する人は少数派です。しかし、融資を受ける際は事業計画書を作成した方が良いでしょう。事業計画書では、主に以下の3点が大切です。

 

・経営理念

・内容の精度

・実現可能性

 

こうした内容を融資担当者に理解しやすい形でまとめ、熱意が十分伝わる内容にすることが重要です。高い精度で計画が練られていて、かつ、実現可能性も高いと判断される内容であれば、融資を受けられる可能性が高くなります。

 

また、経営ビジョンを明確にすることや、競合分析を行い市場における自らの立ち位置を知ることは、自身にとってもプラスとなります。大きく飛躍するための第一歩となるでしょう。

 

無理のない返済計画書を作成する

融資を受ける際は、一般的に返済計画書の提出が必要になります。返済計画書とは、返済額や返済回数など、借入に関する情報をまとめたものです。

 

事業計画書や決算書と見比べたときに、返済計画に無理があると判断されると、融資を断られる可能性が高くなります。そのため、売上計画を基に、十分に実現可能で無理のない返済計画を立てることが大切です。

 

日頃から借り入れを行って金融機関との関係を築く

銀行や信用金庫などの金融機関からの融資を受ける場合、創業時や事業が順調なうちから融資を受けて、関係を築いておくことも一つの方法です。

 

金融機関は、無借金経営であることよりも、借りたお金を確実に返済してきた実績を重視します。そのため、借り入れを行ったら、担当者に対して定期的に決算報告を行うなど、信頼を積み重ねることが大切です。

 

そうすれば、いざ資金繰りが厳しくなったときに、借り入れを行える可能性が高くなります。

 

まとめ

フリーランスとして独立することは、自分自身のペースで働き、理想のライフスタイルを実現するための素晴らしい選択肢のひとつです。しかし、自由な働き方にはお金と慎重に向き合うことも求められます。

 

この記事では、フリーランスとして活躍する際に役立つ資金繰りの知識から、キャッシュフロー管理、保険や融資まで、幅広く紹介しました。これからフリーランスになる方も、すでにフリーランスとして活動されている方にも、必ず役立つ知識です。

 

正しい知識を持ち、しっかりと準備すれば、経済的な安定を築きやすくなります。新しい働き方にワクワクしながら、ぜひ、充実したフリーランス生活を楽しんでください。

 

 

なお、会社員からフリーランスになる前に知っておきたい準備や手続き、仕事の獲得などについては、以下のコラムにまとめています。合わせてご覧ください。

 

掲載日:2025年1月14日

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