フリーランスの保険【健康保険・労災・民間保険を詳しく解説】

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会社員からフリーランスになったとき、「保険」について不安を感じる方は多いかもしれません。会社員であれば、健康保険や労災などは会社に任せっきりで済みますが、フリーランスはすべて自分で行う必要があります。

そんな不安を解消するために、このページでは、フリーランスが加入できる保険の種類を、公的な制度、民間の保険商品問わず、徹底的に紹介していきます。

手続きに少々手間がかかる保険もありますが、どれも難しい制度ではありません。さらに、保険料を抑えるための工夫も紹介していきますので、最後まで読んでいただければ、きっとフリーランスの保険に関する不安が解消されるはずです。

 

フリーランスが加入する健康保険

会社員は会社が適用される健康保険に加入するのが普通ですが、フリーランスの場合どのような保険に加入できるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

 

国民健康保険

国民健康保険は、個人事業主など会社員でない人が加入する健康保険です。加入手続きは住まいのある市区町村の役所で行い、加入期限は退職の翌日から14日以内となっています。

国民健康保険の内訳は、基本である「医療分保険料」と、後期高齢者のための「支援金分保険料」の合算となり、40歳~64歳では「介護分保険料」も加算されます。

保険料は世帯を1単位として、被保険者の人数や収入・年齢によって変動します。また、国民健康保険は各自治体によって運営されているため、自治体によって保険料そのものが異なります。(※税方式を採用している市区町村では「国民健康保険税」と呼んでいます)

 

会社の保険の任意継続

会社員からフリーランスになった場合、勤務先で加入していた健康保険を継続する「任意継続」という制度が使える場合があります。退職日までに継続して2ヶ月以上健康保険に加入していれば、退職後2年間継続できます。

任意継続の申し出は、原則、自分で行います。「協会けんぽ」や「関東ITソフトウェア健康保険組合」など、加入していた組合に直接連絡を取って手続方法を確認しましょう。

任意継続の申し出は退職日から20日以内に行う必要がありますので、注意が必要です。

今まで勤務先が払ってくれていた分も自分で支払うことになるため、保険料はほぼ倍になるものの、それでも国民健康保険より安くなるケースもあります。また、扶養家族がいる人は、任意継続したほうが保険料を安く抑えられる場合があります。

気をつけたいのは、国民健康保険と違って滞納に非常に厳しいことです。加入していた組合によって対応は異なるものの、納付期限については1日の遅れも許されず、遅れた時点で即脱退となるケースがあるので注意しましょう。

 

フリーランスの健康保険料を抑える方法は?

 

健康保険は必ず加入する必要がありますが、保険料を抑える工夫はできます。ここでは4つの方法を紹介します。

 

健康保険組合に入る

特定の職業の人が加入できる「健康保険組合」に加入することで、保険料を抑えられる場合があります。さまざまな健康保険組合がありますが、ITフリーランスの場合、文芸美術国民健康保険組合(以下、文美国保)に加入できる可能性があります。

文美国保は、文芸・デザイン・美術などに関わる職業に従事する方を対象とした保険組合です。ITフリーランスでは、ライターやWebデザイナーが対象となり、エンジニアは原則加入できませんが、Webデザイン系の業務を主に行っている方は加入できるケースもあるようです。

文美国保の保険料は、収入に関わらず一律なので、収入が多く国民健康保険の保険料が高い人ほどメリットが大きくなります。文美国保の保険料は月額21,100円(令和3年度)で、家族は一人あたり月額11,600円です。40歳から64歳までの被保険者は、介護保険料として月額5,200円が追加されます。

なお、文美国保への加入には組合加盟の各団体への加入が必要です。一例として、日本デジタルライターズ協会や、日本ネットクリエイター協会があり、それぞれ入会金や年会費がかかります。

 

家族の扶養に入る

親や配偶者が勤務先の健康保険に加入している場合、被扶養者としてその健康保険に加入できる場合があります。主な条件は、年間の収入が130万円未満かつ、自身の年収が被保険者となっている家族の年収の半分未満であることです。

手続きは被保険者である家族が勤務先に申し出て、加入先の保険組合が加入可否の判断を行います。フリーランスになったばかりで収入が少ないなど、条件に当てはまる場合は積極的に活用したい制度です。

 

保険料の安い自治体に引っ越す

健康保険料は全国一律ではなく、自治体によって異なります。扶養家族が多いほど差は大きくなり、一番安い自治体と高い自治体を比べると、最大で年間20万円程度の差が出る場合もあります。

フリーランスは会社員と違って、住む場所や働く場所に融通がきくことが多いはずです。もし都合がつくのであれば、保険料の安い自治体に引っ越すのも賢い方法といえるでしょう。ただし、その場合はあわせて住民税の税額も確認しましょう。

 

所得が少ない場合は軽減・減免制度を利用する

所得が一定の基準を下回る世帯には、国民健康保険料を軽減する制度が用意されています。フリーランスになったものの、収入があまり得られない場合は、住まいのある市区町村の役所に相談すると何らかの措置が適用されるかもしれません。

 

また、災害などで一時的に収入が減り、保険料が納められなくなったケースにも減免措置があります。申請にあたっては、事業の倒産や資産への損失など一定の要件が必要ですが、仮に減免はできなくても、猶予が認められる場合があるため、市区町村の役所に相談しましょう。

 

ITフリーランスも労災保険に加入できるようになった

 

2021年9月から、ITフリーランスなどの個人事業主も労災保険に加入できるようになりました。ITフリーランスとして対象になるのは、エンジニア職全般のほか、Webデザイナー、Webディレクター等です。

労災保険に加入すれば、仕事中や通勤中のケガ、病気、障害または死亡等をした場合に補償を受けられます。ITフリーランスの場合、外出する機会が少ない人も多いと思われますが、検討する価値はあるでしょう。

加入する際は、特別加入団体として認められた団体で手続きを行います。現時点(2021年10月)で特別加入団体として認められた団体はなく、「一般社団法人ITフリーランス支援機構」などの団体が特別加入団体の申請の準備を進めている状況です。

加入にかかる費用はまだわかっていませんし、勤務先が負担する分がないため全額自己負担とはなりますが、加入が可能になった際には検討したい制度といえます。

 

出典:令和3年9月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります|厚生労働省

 

フリーランスが利用できる民間の保険

労災が適用される、仕事中や通勤中のケガや病気への補償以外をカバーできる民間の保険サービスも用意されています。加入のメリットをみていきましょう。

 

賠償責任保険

納期遅延やミスによってクライアント企業が損害を被ったり、機器の紛失、コンピューターウイルスへの感染などで機密情報が漏洩したりした場合、フリーランス個人の支払い能力を超えた損害賠償を請求されることもあり得ます。そういった万が一のときに役立つのが「賠償責任保険」です。

フリーランスのための賠償責任保険では、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が提供しているものが有名です。年会費1万円の一般会員になることで、賠償責任補償と報酬トラブル解決のための弁護士費用の保険が自動付帯します。他にも、健康診断・人間ドックの割引などを含む福利厚生制度などが付帯します。

また、GMOクリエイターズネットワーク株式会社が提供している「フリーナンス」は、無料会員になると賠償責任保険が無料で付帯します。無料なのは、他のサービスの手数料で維持しているためです。維持費がかかりませんし、任意で選べるフリーランス向けの保険やサービスも用意されているので、登録を検討してもよさそうです。

 

所得補償保険

ケガや病気で働けなくなったときに所得の保障を受けられる民間の保険もあります。

前出の「フリーナンス」では、月額500円で一括10万円受け取れる「所得保障保険」と、年齢や内容で保険料が変動する「あんしん補償プラス」の2種類を用意しています。また、フリーランス協会の一般会員には、オプションで付帯できる「収入・ケガ・介護の保険(損保ジャパン)」が用意されています。

こうした民間の保険は、労災保険と違い、日常生活や旅行中のケガや病気を、国内・海外問わず補償してくれる場合もあります。基本的に自宅で仕事をしているフリーランスにとっては、仕事中に限った労災よりも費用対効果が高いかもしれません。

仕事の内容や保険料によって、ベストなものは人それぞれ異なりますが、労災と民間の保険をあわせて検討することで、自分に合った保険が見つかりやすくなるでしょう。

 

フリーランスの保険は控除or経費の対象になる?

 

ここまでで紹介した保険にかかる保険料は、保険料控除の対象になったり、経費として計上したりできるものがほとんどです。そのため、加入にあたっての負担は最低限で済むといえるでしょう。

なお、事務所として使用している場所(自宅の場合は按分)の火災保険料や地震保険料、仕事に自動車を使っている場合の自動車保険料なども経費として申請できます。こちらも、確定申告の際に忘れずに申請しましょう。

 

まとめ

このページでは、フリーランスが加入できる健康保険の種類や、保険料を抑える工夫、労災制度と民間の保険商品などについて詳しく解説をしました。

働き方改革の推進で、「フリーランス」という働き方が注目を浴びたこともあり、フリーランスを対象にした民間の保険商品が充実し、労災への加入も可能になるなど、ここ数年でフリーランスの保険を取り巻く環境は大きく変化しました。

保険の面において、フリーランスとして働くことのデメリットは以前に比べて小さくなりました。このページで紹介したことを参考にして、自分の働き方に合った保険に加入しましょう。

 

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