プロゲーマーも通勤制に?広まる「ゲーミングオフィス制度」とは

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ゲームを用いた対戦競技「eスポーツ」で活躍するプロ選手たち。中でもチーム競技で活動する選手たちは「ゲーミングハウス」と呼ばれる施設で共同生活を送りながら練習を行っている、というイメージも定着しつつあるのではないでしょうか。

 

ゲーミングハウスは、ゲームのプレイ環境だけでなく選手の生活環境もチームがサポートしやすく、一括でのスケジュール管理や食事の提供などマネジメント面でもメリットがあるため、多くのチームで採用されているシステムです。

 

しかし、最近ではチームが準備する居住地と活動拠点が別の場所にあり、選手が拠点へと毎日“通勤”する「ゲーミングオフィス」制度も増えつつあります。今回はプロゲーマーの世界でも変化しつつある働き方について紹介します。

 

 

プロeスポーツチームが活用するゲーミングシェアハウスは、日本国内でeスポーツが浸透する以前から海外では取り入れられてきたシステムであり、ゲームに適した環境とデバイスを提供するだけでなく、トレーニングジムや専属シェフを完備するなど選手に向けた福利厚生のような側面を持った施設としても活用されてきました。

日本国内では、そこまで充実した施設を準備できるケースは多くはありませんが、それでも選手が一堂に会し、チームが用意した高水準のPCとインターネット回線を使って活動できる施設づくりは一般的になっています。

 

その要因のひとつがチーム競技のeスポーツにおけるコミュニケーションの重要性です。試合や練習自体はオンラインでどこからでも参加可能ではあるものの、作戦会議や試合を振り返っての反省会などは対面形式の方がスムーズなため、ゲーミングハウスを持たないチームも大会前には合宿形式の「ブートキャンプ」を行うなどしてチーム力向上を図っています。

 

 

また、eスポーツでは地域を問わずに選手選考が可能なため遠隔地のプレイヤーや外国人プレイヤーをチームに迎え入れることも珍しくありませんが、その際に個別に居住地を探す手間を省けるメリットもあり、特に外国人選手が来日前に手続きや環境の整備を進められることの安心感は大きいでしょう。冒頭でも述べたように生活のサポートやマネジメント面でも恩恵があり、特に選手の年齢層が若いeスポーツでは私生活のバックアップが充実していることをアピールして未成年の選手をチームに預けてもらうこともあるようです。

 

このようにメリットが大きいゲーミングハウスですが、人数分の個室に練習部屋、そして共用スペースを揃えるにはコストも非常に高くなります。オンラインでの練習が十分に可能なネットワーク環境などさまざまな条件を満たす物件は戸建を借りるなどしなければならず、首都圏ではかなり厳しい条件になってしまいます。

 

その点、練習場所と生活拠点を別々にしたゲーミングオフィス制なら練習場としてオフィスを、そして選手の居住用には通常のアパートなどを借りれば実現可能なため、物件のハードルは大きく下がります。

 

チーム運営目線だけでなく選手目線で見ても、オフィス制はゲーミングハウス制に比べるとプライベートが確保されるため、共同生活に不慣れな選手にとっては嬉しい要素になるでしょう。毎日の通勤があることで身だしなみに気を付けるようになったり、職業柄どうしても運動不足に陥りがちな側面の解消を狙ったりと、ゲームのプレイとは直接関係のない要素でも少なからず効果を発揮するとも考えられています。

 

現住所からオフィスへ通勤可能な選手は引っ越しが不要になるというのもメリットのひとつで、チームに所属しながら自分の家を持てるため既婚の選手の家庭も尊重されており、これから活躍する選手の年齢層が高くなると、ゲーミングオフィス制の価値はより高まっていくかも知れません。

 

もちろんオフィス制が一方的に良いというわけではなく、ゲーミングハウス制では毎日の通勤が必要なかったり帰宅用の交通手段を気にせず深夜まで自由に練習が可能だったりと、時間の部分でオフィスに比べて自由度が高いと言え、冒頭で紹介したようなメリットも重視して、まだまだこちらのシステムを採用する例も少なくありません。

 

以前は「eスポーツといえばゲーミングハウス」という風潮も漂いつつありましたが、ここ数年でeスポーツチームにおける拠点の構え方は多様化しています。部門ごとのゲーミングハウスに加えてブートキャンプにも活用できるオフィスを保有している大規模なチームもあれば、オフィス制もシェアハウス制も導入せずに個々人が自宅から活動に参加するチームも珍しくなく、その選択肢はさまざまです。

 

新型コロナウイルスの影響下では多くの企業でもリモートワーク導入が進みましたが、そのまま出勤回数を減らした勤務体系を維持している会社もあれば、完全オンラインでは作業効率が低下するとの指摘もあり、働き方の多様化が進んでいるとされる昨今。実はプロゲーマーの世界でも、働き方が変化しつつあるのです。

 

掲載日:2024年4月11日

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