巻き戻し&AI活用も?eスポーツタイトルの練習モードが進化中

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どんな競技においても本番で実力を発揮するためには、日常からしっかりとした練習の積み重ねが重要です。

 

ゲームを用いたeスポーツでも基礎的なテクニックを身につけるために練習は必要で、公式戦に臨むプロ選手に限らず、一般のプレイヤーも練習モードをプレイして初歩的な操作から応用テクニックまでをトレーニングしています。

ゲームにおける練習モードは、基本的な操作を覚えるための「チュートリアル」のイメージが強い方も多いかも知れませんが、eスポーツが競技として人気や注目を集めるようになったこともあり、各タイトルの練習モードが大きく進化しています。実践的な練習ができるよう、さまざまな手法が導入されているeスポーツタイトルの練習モードについて、詳しく見ていきましょう。

 

実戦的な練習モードにエイム専用トレーニングソフトも

 

『Apex Legends』や『VALORANT』などのタイトルが知られているFPSジャンルでは、敵を狙うエイム操作の重要性が高く、特に入力に対して画面の照準が動く幅の大きさである「感度」を自分に適した設定にするため、多くのプレイヤーが練習モードでエイム操作の調整・トレーニングをしています。

 

単に敵に照準をピッタリ合わせるだけでなく、使用する銃などの武器アイテムごとに異なる反動を制御する「リコイルコントロール」と呼ばれる技術も求められるため、FPSタイトルではゲーム内に登場するすべての武器が自由に試射できる「射撃練習」モードの搭載が標準的になりつつあります。

 

また、より実戦的なトレーニングができるよう練習用の的が左右に動いたり、適度に撃ち返してくるNPCが配置されたりという設定も可能になり、過去にはソロプレイモードやNPCとの対戦を練習に活用していた人も珍しくありませんでしたが、今では練習モードひとつでさまざまなシチュエーションにできるのが当たり前になっています。

 

さらにPC向けのFPSタイトルでは、ゲーム内モードだけでなく「エイムトレーニング専用のソフトウェア」も登場しています。人気タイトルのマップや武器を再現しており、入力の精度がスコアとして表示されるなどミニゲーム感覚で練習に取り組めるようになっています。エイム操作はFPSジャンルに限らず他のジャンルでも活用できる技能であり、ゲーム練習用のソフトが開発されているというのもユーザーからの需要の高さを感じられる事実ではないでしょうか。

 

試合途中の再現やAI活用で進化する「トレモ」

 

同様に練習モードの進化が著しいジャンルのひとつが格闘ゲームです。かつて、ゲームセンターで人気を博し始めた時代では、ゲーム筐体にソロプレイ用のアーケードモードと対戦モードのみという非常にシンプルな構成が定番だった格闘ゲームですが、今では家庭用ゲーム機でもプレイできるようになり、じっくりと練習できるトレーニングモード、通称「トレモ」は必須の存在です。

 

基本的な操作の練習ができるのはもちろんのこと、格闘ゲームでは特定の技が何フレームで発動して次の技を出すまでに何フレーム硬直するか、などの細かな情報がコンボの組み方や攻防において非常に重要です。現在はトレモでそうした情報が可視化されて確認できるなど、タイトルの研究が進み競技シーンのレベルアップにも繋がっているのではないでしょうか。

 

 

他にもキャラクターを使用する上で覚えておきたいコンボに挑戦できるモードも多くのタイトルで採用されており、FPSと同様にミニゲーム感覚で操作の上達に繋げられる仕組みは人気の要素です。いきなり誰かと対戦するのではなく手軽に操作を練習できるシステムは初心者にも嬉しいポイントで、新規ユーザー獲得のためにも対戦ゲームでは重要な価値がある仕組みと言えそうです。

 

格闘ゲームのトレーニングモードでは攻撃を受ける役としてNPCキャラクターが配置され、攻撃をガードしたり自動で反撃したりと、その行動も自由に設定できるのも便利なポイントです。加えて昨今は特定の動作をレコーディングして指定したり、複数の動作からランダムな挙動をするよう設定出来たりと、より対人戦や特定のシチュエーションを想定した練習ができるようになっています。

 

中でも2024年にリリースされた『鉄拳8』はトレモに力が入っており、自動で録画された対戦のリプレイ映像から特定の場面を指定して再現されたトレーニングができるシステムを導入。初心者向けに「この場面はどうすべきだったか」とおすすめの行動を提示してくれる仕組みも取り入れています。

 

同作では他にもAIがプレイヤーの普段のプレイを分析・再現した「AIゴースト」とも対戦が可能で、上級者であってもなかなか自分では気付きづらい癖や傾向を対戦相手側の視点からチェックできるようになるなど、上達の手助けとなるような試験的な仕組みが多数導入され、多くのユーザーの手助けとなっています。

 

ここで紹介した以外にもパズルゲーム『ぷよぷよ』では練習モードで手順の巻き戻しが可能になったり、アクションFPS『Overwatch』ではユーザーがカスタムモードを活用して作成した練習用ゲームを公開・利用できるようになったりと、各タイトルで練習モードはユーザーのニーズに応える形でどんどん発展しています。

 

NPCとの試合が練習モードの代用とされていたこともあれば、ゲームセンターの格闘ゲームではセットとなっている筐体から申し込みされると必ず対戦が始まってしまうため、練習用の「ソロプレイ専用」の筐体が設置されるなど、ユーザーによってさまざまな工夫が凝らされてきた対戦ゲームの練習事情。現在は新規プレイヤー取り込みに向け、メーカー側がより便利な環境を目指して工夫を盛り込むようになっており、今後もさらなるアイデアが見られそうです。

 

掲載日:2024年6月11日

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