幅広い分野で利用されている汎用性の高いプログラミング言語のPythonは、世界的に人気の言語で日本でのエンジニア人口も増えています。
AIや機械学習など最先端の分野でも使われており、比較的学習がしやすく、多言語からの移行やIT業界未経験の初心者でも勉強しやすい言語といえます。
ここでは、Pythonの基礎的な知識と、Pythonを扱うPythonエンジニアの仕事内容について解説します。また、Python3エンジニア認定基礎試験などの資格試験などについても紹介します。
Python(パイソン)は、オブジェクト指向のプログラミング言語です。1991年に最初のバージョンが発表され、その後も定期的なバージョンアップがされてきました。2023年10月には最新バージョンとなる「Python 3.12」が正式リリース予定です。
Pythonはソースコードがシンプルで読みやすく、誰もが同じようなコードを書きやすい特徴があるほか、Windows、Mac OS X、Unixなど幅広いプラットフォームで動作することが利点となっており、アプリケーション開発において一貫性を保ちやすくなっています。
Pythonの特徴として、標準ライブラリと呼ばれるモジュール群が充実していることがあります。これにより、エンジニアは基本的なタスクから高度な機能まで、幅広い用途に対応するアプリケーションを迅速に開発できるようになっています。
Pythonは将来性の高いプログラミング言語であると考えられています。ここでは、その代表的な理由を紹介します。
Pythonは、現在世界でもっとも人気のあるプログラミング言語です。プログラミング言語の人気調査を続けているオランダ企業「TIOBE」によると、Pythonは2023年9月にはじめてC言語を上回って1位になりました。
Pythonはコードがシンプルで読みやすく、多くのエンジニアやプログラマーが参入しやすいことが人気の理由のひとつです。その結果、Pythonエンジニアによるコミュニティが多く、日本語のチュートリアルも豊富なため、わからないことがあっても解決しやすい環境となっています。
また、Pythonは汎用性が高く、アプリケーション開発やAI・人工知能の開発、データ分析、ゲーム開発など、幅広い分野で利用されています。その結果、エンジニアはPythonを習得することで広い範囲での活躍が期待でき、その点も人気に拍車をかけています。
出典:TIOBE Index for September 2023
PythonはAI(人工知能)や機械学習、ビッグデータの分析、ディープラーニング、自然言語処理など、先端技術の開発にも利用されています。さらには、IoTや自動運転、ブロックチェーン技術などの開発にも利用されているため、今後も重要な役割を果たしていくと考えられます。
現在、注目されているこれらの分野には、多くの大企業やベンチャー企業が参入しており、多くの企業がPythonエンジニアを必要としています。この状況は、すでに活躍しているエンジニアにとっても、これから習得しようと考えている初心者にとっても、心強いといえるでしょう。
Pythonは、Webサービスの開発やWebアプリケーション開発に利用されています。この分野は、JavaやRuby、PHPなどのプログラミング言語が利用されてきた印象が強いものの、AmazonやFacebook、YouTubeやNetflixなどの有名サービスの開発にPythonが利用されており、すでに多くの実績があります。
Pythonはライブラリが豊富なほか、DjangoやFlaskなどのWebに強い有名なフレームワークも用意されています。これらが開発の土台として機能してくれるため、開発をスムーズに進めることが可能です。
Pythonが機械学習やAI開発に向いていることは、近年Pythonが注目されている特に大きな理由となっています。Pythonには、機械学習のためのフレームワークも充実しており、効率よく実装していくことができます。
また、ディープラーニング(深層学習)に関する実装も行えます。ディープラーニングは、近年大変な関心を集めている画像・音声認識、自然言語処理などの領域に強みを発揮することから、今後さらに開発が進んでいく分野であると考えられます。
Pythonはデータの収集・分析にも利用されます。Webページの情報を取得する「クローリング」、その中から必要な情報を抽出する「スクレイピング」などが可能で、テキストと画像データを自動収集して情報処理を効率化できます。また、収集したデータの変換や統計・分析も可能なため、データドリブンな意思決定のサポートに最適です。
こうしたデータ収集・分析は、機械学習のために必要な膨大なデータの収集に役立てられます。機械学習分野で幅広くPythonが利用されている理由のひとつです。
Pythonは、Windows、macOS、LinuxなどのデスクトップPC向けアプリケーションの開発に用いられるケースがあります。Tkinter、PyQt、wxPythonなどのGUIライブラリを活用することで、ユーザーフレンドリーなアプリケーションを効率よく開発できます。
また、Androidスマートフォンのアプリ開発にも利用されます。この場合は、Kivyをはじめとした開発用フレームワークが用いられます。
しかし現状、これらの開発にPythonが用いられることは多くありません。デスクトップアプリケーション開発であれば、Windowsの場合はC#、Mac OS Xの場合はSwiftが用いられることが一般的で、Androidアプリ開発にはKotlinやJavaが用いられます。
今後Pythonのシェアが伸びていき、Pythonエンジニアが増えるとともに、デスクトップアプリやスマホアプリの開発にPythonが用いられるケースは増えていく可能性があります。
Pythonエンジニアには、いくつかのスキルが求められます。ここでは、Pythonエンジニアに共通する重要なスキルと、分野ごとに必要となるスキルを紹介します。
Pythonエンジニアにとって必須となるのは、Pythonの文法と、Pythonでプログラムを実装する方法などの基本的なスキルです。
これらは、必ずしも丸暗記する必要はありません。すでに多言語で経験のあるエンジニアの場合、Pythonに関する書籍やコミュニティで必要なコードを調べたり、GitHub Copilotを用いたりするなどの方法で、必要なコーディングができれば問題ありません。
あとは、実際に業務でアウトプットを行い、Pythonエンジニアとしてのスキルを高めていくことになります。
先述の通り、Pythonには豊富な「ライブラリ」が用意されています。ライブラリには汎用性の高いプログラムがまとめられており、スピーディーなコーディングには必須となっています。
Pythonエンジニアにとって、ライブラリを理解し、活用することは重要なスキルです。作業効率が上がるだけでなく、バグやセキュリティホールも減らせるため、ライブラリを積極的に活用するスキルを身につける必要があります。
Pythonプログラミングスキルとライブラリへの理解は、すべてのPythonエンジニアに求められますが、携わる分野によって他のスキルも求められます。ここでは代表的なものを紹介しましょう。
主に、Webアプリケーション開発に携わるPythonエンジニアに求められるスキルです。Webアプリケーション開発では、Pythonエンジニアがサーバーサイド処理を実装するのが一般的です。そのため、サーバーに関する知識も必要になります。
AI(人工知能)エンジニア、ML(機械学習)エンジニアに求められるスキルです。Pythonとは別に、AIやMLに関する専門的な知識が必要になります。これらは、現在特に進化が早いジャンルのため、基礎的な知識を身につけることだけでなく、日々、知識のアップデートが欠かせません。
主にデータエンジニアに求められるスキルです。基本的なPythonプログラミングスキルのほかに、データベースやそのほかのデータを扱うためのスキルが求められます。
あわせて、インフラやクラウドに関する知識や、データ分析に関する知識も、一定レベルで身につけておいたほうがよいでしょう。
Pythonは、ほかのプログラミング言語と組み合わせることで開発の幅が広がります。中でも、RubyやPHP、JavaScriptなどの言語はPythonとの親和性が高く、組み合わせて使われるケースが多くなっています。
あくまで、Pythonの基礎的な知識を習得した後のことになりますが、Web系のエンジニアを目指すのであれば、これらの言語も習得するとよいでしょう。
Pythonに関する資格試験は国内外にあり、資格を取得することでPythonエンジニアとして一定のスキルがあることを証明できます。ここでは、代表的な資格を3つ紹介します。
Pythonの基本的な文法への理解を問われる試験です。難易度はあまり高くないとされ、基礎をしっかり学んだ初心者や、プログラミング経験者であれば、比較的合格しやすい資格といえます。
合格することで、Pythonに関しての基本的なスキルを示すことができ、また、この試験に挑戦することが、Pythonを体系的に学ぶきっかけにもなります。特に、実務経験のないPython初心者にもおすすめの資格です。
出典:基礎試験|一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会
Pythonの仕様やライブラリへの理解が問われる試験で、中級レベルの内容になっています。Python3 エンジニア認定基礎試験に合格した人が、次に目指す試験としても最適です。
この試験では、Pythonの仕様や、各種データの処理などに関する出題がされます。コーディング能力強化を目的として作られた資格のため、合格すれば、Pythonエンジニアとして一定のコーディング能力があり、ライブラリを理解していることの証明となります。
出典:Python 3 エンジニア認定実践試験|オデッセイコミュニケーションズ
Pythonは、未経験の人でも比較的習得しやすいプログラミング言語とされています。そのため、プログラミング未経験からPythonエンジニアを目指すこともできます。
近年はPythonを扱える日本人エンジニアが増えており、日本語の書籍や資料が充実しています。また、コミュニティでの交流も活発なため、わからないことを解決しやすい環境でもあります。
Pythonの学習は、書籍や教材を使用して独学で行えるほか、スクールに通ったり、講習会に参加したりするなどの方法もあります。先ほど紹介した各種試験への合格を目標として、ライフスタイルに合わせて学習を進めるとよいでしょう。
汎用性が高く、幅広い分野で利用されているPythonを習得することで、エンジニアとして幅広いジャンルで活躍できる可能性があります。AIや機械学習、IoT、自動運転などの分野で利用されている状況から、今後Pythonの存在感はより増していくものと考えられ、今から習得しても遅くはありません。
これからIT業界を目指す人にとって、Pythonエンジニアを目指すことは合理的な選択といえるでしょう。その際は、学習を進めながらエンジニア業界の研究も行い、Pythonエンジニアにどのような知識が求められるのか、最新の情報をチェックすることをおすすめします。