台風直撃も、難波で大規模eスポーツ大会が開催

「VCJ 2023 Split 2 Playoff Finals」観戦レポート

#eスポーツ

6月3日、4日に、大阪市のエディオンアリーナ大阪でeスポーツ大会「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 Playoff Finals」が開催されました。

 

 

本大会は、2022年に日本チーム「ZETA DIVISION」の躍進で大きな盛り上がりを見せた人気FPSタイトル『VALORANT』の国内公式大会で、優勝すれば国際リーグへの出場権が得られる、国内競技シーンの頂点が争われる大舞台です。

 

今回は、現在の国内eスポーツでも有数の規模と視聴者数を誇る競技シーンのオフライン大会を、現地観戦のレポート形式で体験や規模感を振り返ります。

 

会場を問わず快適な観戦を実現

『VALORANT』の国内大会と言えば、昨年6月にもさいたまスーパーアリーナでオフライン開催され、合計2万人を超える来場者で賑わいを見せていたのは本コラムでも紹介した通りです。

 

2023年は3月にも大阪府大阪市のインテックス大阪でオフライン大会を実施しており、本大会と合わせて2度の国内大会がどちらも大阪での開催となりました。

 

『VALORANT』は今年から、公式大会のシステム変更によって海外リーグに参加しているチームもあり、競技シーンの環境は変化しています。そうした背景の中で収容人数では昨年と比べてやや小さな規模の会場を舞台に首都圏以外での開催にチャレンジした形になりましたが、結論から言えば3月の大会も今回も多くのファンが会場に詰め掛け、大会は成功裏に終わりました。

 

会場のエディオンアリーナは体育館のためフロアは長方形に広がっており、その中央に選手がプレイする対戦席や大型モニターが配置されていました。モニターに対して角度がついてしまう一階席の四隅付近には座席はなく、四方に観客席を設ける座席レイアウトに。試合中は映像が観やすいよう会場の照明は落とされますが、試合中の入退場には出入り口でスタッフが誘導灯を持って待機するなど、快適な観戦環境作りが行われていました。

 

試合環境を振り返っても2日間に渡って大きな中断やトラブルはなく、選手・観客どちらにも嬉しいスムーズな進行となりました。これまでいくつも大規模なオフライン大会を成功させてきた運営会社のノウハウがしっかりと活用されており、会場の条件さえ整えば首都圏以外でも十分に大会を開催できることを証明したと言えるでしょう。

 

△開場直後の2階席からの眺め

 

昨年の大会と比較しての変化もいくつかあり、ひとつは来場者へのスティックバルーンの配布が無くなったことです。声出し応援の解禁に加えて選手の音響面への配慮もその背景とアナウンスされており、簡単にバンバンと破裂音に近い音を出しやすいバルーンの配布は、今後の大会では少なくなるかもしれません。観客は大きな拍手で選手を後押ししており、チームの応援グッズや独自の応援ボードを掲げる熱心なファンや親子連れらしき方の姿も見られ、幅広い観戦スタイルが形作られていると感じられました。

 

特に印象に残った変化は試合間のインターバルで、過去のオフライン大会では長ければ30分前後の待ち時間が発生することもありましたが、今大会ではゲーム内容に絡めてキャスターが大会スポンサーを紹介したり、会場内の模様をオンライン配信に向けてレポートしたりと、来場者を楽しませる工夫が盛り込まれていました。

 

『VALORANT』の競技シーンは展開によって1時間近い長丁場の試合になることもあり、複数試合先取の形式ではインターバルを含めて数時間の観戦となります。オフラインで観客たちの待ち時間を退屈させない工夫は、オンライン配信の視聴者を離脱させないためにも重要で、その中でスポンサー紹介を行うのは広告効果の観点でも素晴らしい施策だったのではないでしょうか。

 

台風による交通機関ストップの影響

今大会では前日に当たる6月2日から3日にかけて台風の影響から、各地で大荒れの天候となり、東海道新幹線が運休となる事態に見舞われました。3日には運転再開となったものの混雑が続き、予定されていた時刻に選手の到着が間に合わなくなったために初日は定刻より大幅に遅れての開演となりました。

 

初日のチケットを購入していても残念ながら会場へ来られない方も出てしまったようで、そうした方へ、2日目の物販コーナーへは初日のチケットがあれば入場できるよう変更したり、迅速な対応によって大会は目立った混乱なく終えることができましたが、一時は大会の実施自体が危ぶまれ、中止も考えられる状況でした。

 

スポーツやコンサートのチケットは販売時に必ず公演中止などの不測の事態についての注意事項が明示されており、購入者もそれを了承した上での催行になっています。しかし屋内競技のeスポーツは天候に左右されづらく、中止になったり参加できなかったりというケースは非常に珍しいため、現実的にその可能性を考慮していた人はあまり多くなかったでしょう。

 

今回は初日のみ開演を遅らせましたが、無事にイベントは開催されました。「eスポーツ観戦にも中止はある」と再認識する良い機会だったとも考えられます。現在は、東京を拠点に活動しているチームやeスポーツ運営会社が多いため、首都圏から離れた開催になるほど交通機関の影響を受けるリスクとは付き合っていかなければなりません。

 

スポーツでは中止になった試合のチケットを活用して、試合が振り替え開催されることもありますが、それはスケジュールを調整しやすい専用スタジアムや確立されたチケット販売システムがあるからこそできる事で、eスポーツでは、まだそこまでの柔軟性の高い興行は難しく、時には中止になった大会がオンラインで代替開催されたり、開催地が変わってしまったりすることも起こるでしょう。ファンとしても、当面はやむを得ない事態の可能性も考慮しておきたいものです。

 

一極集中からの広がりに期待

今、最も人気あるeスポーツタイトルのひとつである『VALORANT』の国内公式大会として多くのスポンサーが集まる注目度の高いイベントでしたが、会場の環境はその期待に応える素晴らしいものでした。試合内容もハイレベルなチーム同士で連日接戦が繰り広げられ、観客も大いに盛り上がりました。

 

 

会場外の特設エリアには予選で敗退したチームも含めた、チームグッズの物販ブースが設けられ、プロ選手との交流の機会を求めて行列が作られる光景も見られました。首都圏でのイベントが目立つeスポーツの人気が局所的でないことを証明すると同時に、今後も地方で中大規模な大会を開催できるポテンシャルを感じさせるものでした。

 

大会やイベントの環境については会場の規定に沿う必要があるため、どんな場所でも同じ条件が再現できる訳ではなく、特に飲食物の持ち込み可否や座席の配置は運営サイドの工夫が及ばない領域でもあります。

 

これまでは幕張メッセや横浜アリーナなど多目的のイベントホールが使用されるケースが目立っていましたが、今回エディオンアリーナ大阪という体育館で良い大会が実現したことで、今後の選択肢も広がったのではないでしょうか。

 

 

 

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