日本eスポーツ史上最大規模2万6千人を動員!

さいたまスーパーアリーナ「VCT Playoff Finals」レポート

#eスポーツ

6月25日から26日にかけて、『VALORANT』の国内公式大会「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan」の決勝大会が行われ、世界大会へと進む日本代表チームが決定しました。

 

 

コロナ禍で日本のeスポーツシーンは長きに渡り、オンライン大会の開催を余儀なくされる状況が続いていましたが、本大会は情勢が落ち着いたタイミングと重なったこともありオフラインで有観客にて実施。会場は国内でも有数の収容数を誇るさいたまスーパーアリーナとあって、大会は大きな注目を集めました。

 

今回は国内eスポーツシーン史上例を見ない大規模なイベントとなった大会のレポートに加え、『VALORANT』開発・運営であり同大会を主催するRiot Gamesの日本法人より下田氏のコメントから当日の模様を振り返ります。

 

日本eスポーツ史に残る大規模大会に

 

『VALORANT』の国内大会は2020年6月のタイトルリリース以来数多くのプロチームが参加しており、徐々に規模を拡大してきました。2022年4月には日本代表として世界大会に出場した「ZETA DIVISION」が3位に躍進し、日本の競技シーンに対する国際的な注目度も高くなりつつあります。

 

今大会は2022年シーズン2度目の公式国内大会であり、優勝チームはデンマークで開催される世界大会へ日本代表チームとしての出場権を得られます。5月から開幕した予選を勝ち抜いた3チームが今回の「Playoff Finals」へと進出しました。

 

迎えた世界大会への切符を争う大会本番。会場は連日満員となり、声を出しての応援はできない中でも配布されたスティックバルーンを叩いて選手のプレーにエールを送ったり、応援ボードを掲げたりと、会場は大盛り上がりに。6月ながら両日とも最高気温30度を越す真夏日になりましたが、会場内も負けないほどの熱気に包まれました。

 

配信で視聴されることの多いeスポーツ大会ですが、現地観戦では大型モニターの映像や音響による視聴体験も重要となります。今大会はアリーナ中央に対戦ステージを配置し4面の超大型モニターで会場全体どこからでも観やすいように工夫されていました。海外の大型大会でも見られるような形式で、音が反響する環境下でもゲーム音や実況も聞こえやすいものでした。

 

ゲームのルール上、試合が始まれば1時間近く会場内は照明を落とした状態が続きますが大きな混乱は見受けられず、予定された時間通りに大会は進行。休憩時間中や開場前には場内コンコースに飾られたゲームのキャラクターが描かれたパネルで記念写真を撮影する来場者の姿も目立ち、大会グッズを購入できる物販ブースには長い列ができるなど試合以外でもファンを楽しませる工夫が見られました。

 

 

大会自体もスムーズに進行し、配信の視聴者数も2日間合計で50万人に到達。オフライン開催の会場規模だけでなく、全体で見ても日本eスポーツ史上で有数の大規模な大会・イベントになったと言って間違いないでしょう。

 

Riot Games下田氏「これからもチャレンジを」

 

2日間で観客動員2万6千人、視聴者数50万人を記録した今大会を『VALORANT』の開発・運営を手掛けるRiot Gamesはどのように感じたのか。同社日本法人のPR&コミュニケーションマネージャーを務める下田健二朗氏にコメントを頂きました。

 

──今大会がオフラインで実施された経緯はどのようなものだったのでしょうか?

 

下田健二朗氏(以下、下田) 今年5月にVALORANTのオフラインイベントをRAGEさんに開催いただいたのですが、そこへ来場された方の熱量が非常に高く「ファンは大きな大会を求めている」と感じました。そこでパートナー企業と協力して「日本で最高の競技シーンを実現しよう」と動きましたが、これほどの会場で実施できた点についてはタイミングが良かった面も大きいです。

 

──イベントを振り返って、率直な感想はいかがですか?

 

下田 競技性の高い『VALORANT』の魅力が受け入れられただけでなく、観戦文化を築くことができたと実感しています。Z世代か、それよりも若いと見られる世代の来場者が多かったことも印象深いです。

 

──これまでの大会と比較しての反響の大きさや、印象に残っている出来事はありますか?

 

下田 弊社では2017年に『リーグ・オブ・レジェンド』の世界大会を中国・北京のオリンピックスタジアム(鳥の巣スタジアム)で開催しており、いずれ日本でもそれくらい大きな規模の大会をという展望はありました。国内大会と国際大会との違いはありますが、それと比較できるほどのイベントをこれほど早く実現できたことには正直驚いています。

 

──最後に、今後のオフライン大会やイベント開催に向けての展望をお願いいたします。

 

下田 日本での『VALORANT』競技シーンの視聴者数はeスポーツ先進地域とされる北米にも引けを取りません。これからも日本らしいカルチャーの中でチャレンジを続けていけるよう取り組んでいきます。

 

「有料で観戦する」文化の定着へ、大きな前進

 

当初の予定では今大会はオンラインで完結する予定だったこともあり、オフライン開催の発表は6月8日と、本番から約3週間前の告知になりました。急なスケジュールかつ出場チームが確定していない段階から入場チケットの先行抽選が行われましたが、それでも募集を上回る多数の応募が集まり、特定のチームや選手ではなくタイトルの競技シーン全体がファンを獲得していることを証明しました。

 

また、予定を変更してこれほど大規模なイベントを急遽行うことは非常にハードルが高いとも考えられますが、それが無事に成功した要因としては大会運営を担う「RAGE」の存在が挙げられます。RAGEは株式会社CyberZ、エイベックス・エンタテインメント株式会社、株式会社テレビ朝日の3社協業によって運営されるeスポーツイベントおよび、eスポーツリーグのブランドで、他タイトルでも数多くの大会やイベントを成功に導いて来ました。

 

 

この大会では、席種によって6,000~2,000円と有料の観戦チケットが両日完売となったことも注目すべきポイントです。配信自体は無料で見ることができる大会を有料でも2万人以上が観戦に訪れたという数字は、日本国内で「お金を払ってeスポーツを応援しに行く」という文化が醸成されつつあることを予感させるものです。

 

もちろん今大会は『VALORANT』というタイトルの人気に、RAGEを構成する3社の運営力など多数の要因が重なり合っており、急激に他タイトルでも同様の発展に繋がるとは断言できませんが、日本eスポーツ界におけるイベントの成功例として、収益構造など新たな可能性を感じずにはいられないものになったと言えるでしょう。

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