世界中のプレイヤーと腕前を競い合う対戦ゲーム。誰もが最初は初心者ですが、練習や研究の積み重ねによって上達していく体験も醍醐味のひとつではないでしょうか。
目に見えない“ゲームの上手さ”を数値化したものをゲーム内では「ランク」や「レート」と呼び、この数値を上げていくことは、自身のスキルアップを実感できる貴重な指標でもあります。
この指標はゲーム内のマッチングにも活用されており、実力伯仲した試合が楽しめるよう、基本的にはこの指標が同程度のプレイヤーと対戦できるように調整されています。
実は、この指標は私たちがゲーム内で確認できるもの以外にも存在していることをご存知でしょうか。今回は「内部レート」と呼ばれる、腕前を評価するもうひとつの指標について解説いたします。
通常、私たちが目にしているランクやレートといった指標のことを、ここでは「公開レート」と呼ぶことにします。公開レートはランク戦の勝敗によって算出・変動するもので、ゲーム内や外部サイトから誰でも確認できます。
それとは別に、ユーザーには見えないゲームシステム内で「データ上はこれくらいの腕前」と評価されているものが「内部レート」になります。こちらの算出方法については明言されていないゲームが殆どですが、公開レートが変動しないカジュアルモードの試合の勝敗も評価対象になっていたり、ゲームによっては試合内容やスコアなどのパフォーマンスが判断材料になっていたりすると考えられています。
個人戦のゲームであれば、パフォーマンスが勝敗に直結しやすいため内部レートの影響は大きくありませんが、複数人のチーム戦で行うゲームの場合は、自身のパフォーマンスが良くてもチームが負けてしまうケースや、その逆も発生します。すると「試合に負けて公開レートは大きく下がったが、個人のパフォーマンスは良いので内部レートはあまり下がらない」というような現象が起こり、こうした積み重ねによって「公開レート」と「内部レート」の2つのレートに乖離が発生してしまうのです。
内部レートが大きく影響するシーンとして、マッチングや試合後の公開レートの増減時があげられます。例えば、公開レート「シルバー」に対して、内部レート「ゴールド」のプレイヤーの場合、対戦相手には「ゴールド」のプレイヤーが選ばれやすくなります。
そして、試合に勝てば、内部レートに近づくように、公開レート「シルバー」のプレイヤーはいつもより大幅に内部レートが上昇するのです。
このように、内部レートはプレイヤーの実力に応じたランク設定や、出来るだけ適したマッチングを行うために存在しています。
対戦ゲームのプレイヤーには、ランク戦を沢山プレイしているベテランプレイヤーばかりではなく、中には、プレイし始めたばかりの初心者や、プレイ時間こそ長いもののカジュアルモードばかり遊ぶ人など、様々なスタイルのプレイヤーがいます。
もし、内部レートが存在しなければ、高いスキルのあるプレイヤーと初心者がカジュアルモードで対戦することになってしまいます。そうなれば、初心者に勝ち目はなく、接戦の楽しさを味わうことなくゲームから離れてしまうかも知れません。
また、そのタイトルは初心者であっても、同一ジャンルのゲームをプレイしていた経験などを生かし、短いプレイ時間ながら高い実力を持っているプレイヤーも存在します。内部レートがなければ、彼らが実力に見合ったレートへ上がるまで常に試合で大活躍を続けなければならず、他のプレイヤーの試合体験を損なってしまうかも知れません。
プロ級の腕前の持ち主から、ゲームそのものをあまり遊ばないようなビギナーまで、本当に幅広い人々が同じ条件でマッチング・対戦できるeスポーツタイトル。だからこそ、できるだけ実力が近いと予想される試合を組み上げるためには、内部レートによる手助けが不可欠なのです。
対戦における重要な意義を持つ内部レートについては、対戦ゲームに親しんでいる人ならその存在を認知している人も多いと思われます。しかし、算出方法が不透明であり、自分や他人の内部レートが高いか低いかさえも把握できない仕組みのため、時にはプレイヤーの不満や悩みを引き起こしてしまうケースもあります。
例えば、内部レートの存在を知らない初心者が「試しにやってみよう」とプレイしたら負け続けてしまい、スコアも良くないために内部レートがかなり低くなってしまうケースです。その後、上達したとしても内部レートが低いため試合に勝ってもランクが上がりづらい状態が長く続き、実力に見合わないランクで停滞してしまう原因になります。
また、実力が近くなるようにマッチングが組まれたとしても、当然ながら全てのプレイヤーには得意不得意があり、パフォーマンスの好不調にも左右されるため全ての試合が接戦になる訳ではありません。ちょっとした流れや調子、運の偏りによって一方的な負け試合を味わうと、プレイヤーが「内部レートが不当に上昇して強い相手と戦わなければいけなくなったのでは」と疑いたくなる気持ちも十分に理解ができます。
こうした悩みや不満を解消するためにも内部レートを公開してしまえばよいのでは?という意見も見られますが、そうなるとチームの勝利よりも個人のスコアを高く保つためだけのプレイをする人が増えてしまうかも知れません。もしくは、内部レートが高いアカウントを売買するなどの不正行為を助長する可能性さえ考えられます。
「モード・ルール別の内部レート」を設定していたり、大まかな仕組みを明かしているタイトルも存在するなど、プレイヤーのためのシステムが不満に繋がらないよう、開発者としても工夫を重ねているマッチングの仕組み。
せっかく試合に勝利したのにレートが殆どあがらない、味方のパフォーマンスがレートに見合ってないように感じる等々、どうしても納得いかないシーンで槍玉にあげられがちな内部レートですが、皆さんが気持ちよくプレイ出来ている殆どの試合には、見えない「内部レート」が上手くサポートしてくれています。
「内部レート」の存在を知らないままでも、ゲームを遊ぶことは可能ですが、存在と仕組みを知っていれば納得できるシーンもきっとあるはずです。