LIFFアプリ・LINEミニアプリの活用事例にみる今後の可能性

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LINEアプリ内で動く「LIFFアプリ」と「LINEミニアプリ」。企業の公式サイトと連携し、会員証としての利用や、オーダーシステムとして利用されるケースが増えています。

 

iOSやAndroid向けのネイティブアプリがたくさんある中でLIFFアプリ/LINEミニアプリは存在感を示しているのはなぜでしょうか。それは、ユーザー登録が簡単なことでの利用率の高さや、企業とユーザーの接点のつくりやすさ、そして、OSを問わないことでの開発コストの抑制など、幾つかのメリットがあります。

 

ここでは、LIFFアプリ/LINEミニアプリとはどのようなものかを解説するとともに、実際の利用事例を通して、現在の利用のされ方や、今後の可能性をみていきます。

 

LIFFアプリ・LINEミニアプリとは

 

LIFFアプリ:LINEアプリ内で機能するWebページ

 

「LIFF」は「LINE Front-end Framework」の略で「リフ」と読みます。LINE株式会社が提供するアプリのプラットフォームのことで、このプラットフォーム上で動作するウェブアプリを「LIFFアプリ」といいます。

 

LIFFアプリは、LIFF SDK(ソフトウェア開発キット)を利用して開発した、LINEアプリ内で機能するWebページのことで、登録時に取得できる専用アドレスに、スマートフォン版のLINEアプリや、PC版のLINEアプリからアクセスすることで動作します。

 

LINEミニアプリ:スマホ版LINEでのみ機能。メッセージ機能あり

 

LINEミニアプリも、LIFFと同じくLIFF SDKを利用して開発します。LIFFと同じコードでつくられるアプリですが、こちらはスマートフォン版のLINEアプリ内でのみ機能する点が異なります。

 

また、サービスメッセージ機能が使えるのもLIFFアプリと違う点です。この機能は、ユーザーが操作したアクションに対する確認や応答をメッセージとして送付できる機能で、操作の手助けなどができます。告知やプロモーションには利用できません。

 

LIFFアプリ・LINEミニアプリのメリット

 

LIFFアプリにはメリットがいくつもあります。ここでは、iOSやAndroid向けアプリと比べたときの、LIFFアプリの代表的なメリットを紹介します。

 

インストール不要だから利用を促しやすい

 

LIFFアプリとLINEミニアプリは、LINE内で動作するWebページです。そのため、すでにLINEを利用しているユーザーであれば、新たにアプリをダウンロードする必要がありません。初回の簡単な認証をクリアすれば、その後はスムーズに利用できます。

 

従来の方法だと、LINEやSNSなどからApp StoreやGoogle Playに誘導して、そこでユーザーにアプリをダウンロードして貰う必要がありました。また、アプリをインストールしてからもユーザー登録が必要なため、面倒に感じて離脱してしまうユーザーもいました。

 

しかし、LIFFアプリ/LINEミニアプリはLINEユーザーIDと紐付くため、初回の認証画面でボタンをタップするだけで登録が完了します。手間がほとんどかからないため、利用を促しやすく、ユーザーが離脱する可能性も低くなります。

 

ユーザーのLINE IDを取得でき、LINE Payとの連携もスムーズ

 

前述の通り、LIFFアプリ/LINEミニアプリはLINEユーザーIDと紐付きます。そのため、LINE IDを元にユーザーの識別ができ、面倒な会員登録が必要ありません。ユーザーにとってはサイトやアプリに登録したという意識が薄く、自然にサービスに取り込めます。

 

さらに、決済システムのLINE Pay/PayPayとの連携も可能です。連携させるための手間も少なく、別途決済システムを用意する必要もなくなるため、ECサイトやオーダーシステムを展開する際にコスト面で有利です。

 

iOS/Android両方の開発が不要で自由度も高い

 

LIFFアプリ/LINEミニアプリは、LIFF SDKを利用して開発するWebベースのページで、LINEアプリがインストールされているスマートフォンであれば利用できます。そのため、iOSとAndoroid版のネイティブアプリを両方開発する必要がなくなり、開発にかかるコストを抑えられます。

 

また、LIFFアプリ/LINEミニアプリは基本的にWebベースのアプリのため開発の自由度が高く、企業としてはエンジニアの確保が比較的しやすいこともメリットといえそうです。

 

ネイティブアプリに比べると、ビジュアル面での自由度は低くなるため、サービス内容によっては物足りないケースもあると考えられますが、サービスの可能性を探っている段階であったり、極力予算を抑える必要があったりする場合は、開発コストを抑える有効な手段となり得ます。

 

LIFFアプリ・LINEミニアプリの事例

 

LIFFアプリ/LINEミニアプリはすでに多くの企業で使われています。LINEのユーザー情報を引き継ぐことで、会員登録が実質不要になるため、店舗の会員証として利用されるケースも多く、ECサイトとしての展開も注目されています。

 

ここでは、LIFFアプリ/LINEミニアプリの活用事例をご紹介します。

事例1:ロクシタン メンバーズカード

 

 

ロクシタンでは、2018年からLIFFアプリによるデジタル会員証サービスを活用しています。

 

LIFFアプリによるデジタル会員証を導入する以前は、会員登録の9割が店舗で行われていました。紙の会員証の作成は、お客様とお店双方に手間がかかりコストもかかります。

 

LIFFアプリによるデジタル会員証を導入したことで、会員証を忘れるお客様が減り、従来店舗での確認が必要だったポイント数の確認もお客様の手元でできるようになりました。さらに、お客様の会員ステージや属性に合わせたプロモーションも可能になりました。

 

店頭ではLINEの友だち登録のみを行い、その後の登録作業はメッセージ送信でフォローしています。これにより、店頭で登録作業を行う際の、お客様とスタッフ双方の負担が減りました。

 

出典:https://www.linebiz.com/jp/case-study/loccitane/

 

事例2LINE Starbucks Card

 

 

スターバックスでは、プラスチックのカードや、カードとして機能するiOSやAndroid向けのネイティブアプリを用意していますが、それらに加えLIFFアプリ版も用意しています。

 

プラスチックカードのように忘れてしまうことが少なくなり、アプリをダウンロードしたり個人情報を登録したりする手間もありません。また、20代~30代はLINEの利用者が多く、スターバックスの顧客との親和性も高いと考えられます。

 

LINE Starbucks Cardは、LINE PayとPayPayからのチャージが可能です。アプリ版ではクレジットカードの登録が必要ですが、LIFFアプリ版ではよりスムーズにチャージが行えます。

 

さらに、新商品の案内などをプッシュ通知できるため、ユーザーの購買を促しやすくなっています。スターバックスは季節ごとに登場する新製品が話題になることが多いため、ユーザーと企業の双方にメリットをもたらします。

 

事例3Gong cha モバイルオーダー

 

 

台湾発のグローバルティーブランド「Gong cha(ゴンチャ)」は、2022年から全店でLINEミニアプリを使ったモバイルオーダーシステムを導入しています。これは、来店前に商品と受取時間を指定し、事前決済まで可能なシステムです。

 

ゴンチャはユニークユーザーの30%が売り上げの80~90%を占めている、熱心なファンが多いブランドです。海外店舗ではネイティブアプリも展開していますが、日本ではLINEの普及率が非常に高く、ファンとのコミュニケーションも取りやすいと判断され、LINEミニアプリが導入されました。

 

このモバイルオーダーシステムには、紙のスタンプカードに変わる「モバイルスタンプ」機能が備わっています。従来の紙のスタンプカードは、定期的に新しいものに交換していたため、お客様がどのくらいゴンチャに通っているかはわかりませんでした。しかし、モバイルスタンプでは集めたスタンプの数がすぐにわかり、熱心なファンを店員が見分けることができます。そのため、熱心なファンへのより適切な声がけが可能になります。

 

出典:https://www.linebiz.com/jp/case-study/gongcha/?field_case_category_function_target_id%5B6591%5D=6591

 

事例4:カネボウ化粧品

 

 

カネボウ化粧品では、2017年から自社製品の効果的な使い方などを発信する「スマイルコネクト」アプリを提供。店頭顧客システムの購入履歴や肌データなどを連携し、好評を博してきました。

 

しかし、2020年春以降、コロナ禍でお客様の来店が少なくなったことから、オンラインでのお客様との接点を強化する狙いで、「SENSAI」「KANEBO」「LUNASOL」の3つのブランドでLINEミニアプリを導入しました。

 

登録は店頭に設置したQRコードなどから行います。簡単な操作でアカウントを作成できることから、店頭スタッフが登録を勧める心理的ハードルが下がったといいます。

 

従来のアプリと比べて、お客様の反応が大きく違うのはメッセージの開封率です。LINEミニアプリのメッセージ開封率は70%に到達することもあり、関連リンクのクリック率は10~15%となっています。これは、従来のアプリの実に2倍近い効果です。

 

お客様へのアンケートでも「LINEから利用できるので使いやすい」「会員カードを持ち歩かずに済む」「キャンペーンや新商品の情報がいち早くわかって助かる」といった好意的な声が寄せられており、現在ではネイティブアプリを廃止し、LINEミニアプリに一本化されています。

 

出典:https://www.linebiz.com/jp/case-study/kanebo/?field_case_category_function_target_id%5B6591%5D=6591

 

事例5:飲食店での利用事例

 

 

飲食店では、LINEミニアプリを店内オーダーシステムや順番待ちシステムとして利用している事例があります。

 

コロナ禍をきっかけに、LINEミニアプリによる店内オーダーシステムを導入した「アガリコ餃⼦楼」では、LINEミニアプリの利用率が実に80~90%となっています。これにより、店舗スタッフの人数を常時減らせるようになり、人件費の削減に繋がりました。

 

LINEミニアプリの導入からわずか1ヵ月で友だち数が1,000名ほど増加し、しかも、オーダーシステムをきっかけにオンラインでユーザーとの接点を獲得できるため、キャンペーンなどの配信が可能になり、リピート率の向上にも貢献しています。

 

同じくコロナ禍をきっかけにLINEミニアプリを導入した「ティースイーツラボ・コンテナート」では、お客様の順番待ちシステムとしてLINEミニアプリを活用しています。

 

長い行列ができる人気店のため、店頭での待機列が問題になっていましたが、LINEミニアプリで待ち時間を知らせることで行列が解消され、3密を回避するとともに、長い行列による近隣からの苦情もなくなったといいます。

 

出典:LINEミニアプリ先⾏事例のご紹介

事例6:美容室での利用事例

 

 

画像出典:https://ex.salonanswer.com/line/

 

美容室でもLIFFアプリ/LINEミニアプリの利用が広がっています。

 

吉祥寺の美容室「1001mille」は、もともと外部予約サイト経由の予約件数の多い美容室でした。しかし、外部予約サイトの手数料は高く、かつリピート率も高くないことが悩みでした。

 

そこで、LINE経由で予約できる体制を構築し、LINEミニアプリ経由の予約でポイントを2倍付与。同時に、ポイントカードを兼ねた会員証もLINEミニアプリに統合しました。

 

その結果、導入からわずか3ヵ月で、LINEミニアプリ経由の予約が外部予約サイト経由の予約数を上回りました。さらに、電話予約が減ったことでスタッフが接客に専念できるようになりました。

 

埼玉県にある美容室「efface」では、理美容サロンに特化したPOSシステム「Salon Answer」が提供するLINEミニアプリを導入しています。このLINEミニアプリは、POSシステムとの連動が可能になっており、キャッシュレス決済にも対応します。

 

LINEミニアプリから予約を受付けつつ、来店のお礼や、クーポンの自動配信なども可能です。とくに来店のお礼メッセージは効果が大きく、お礼メッセージを受け取ったユーザーのリピート率は実に9割を超えているといいます。

 

奈良県にあるサロンチェーン「ジャパンプロデュース」でも、LINEミニアプリを導入しています。老若男女が通う地域に密着したチェーン店ですが、まずLINE公式アカウントで友だちになることで、どの世代のお客様でもスムーズにLINEミニアプリに誘導できるといいます。

 

また、予約1週間前と2日前にリマインド通知を送ることで、無断キャンセルが減ったといいます。さらに、LINEミニアプリ内に友達紹介クーポンを用意することで、既存顧客からの紹介も増えました。

 

出典:https://www.linebiz.com/jp/case-study/mille/?field_case_category_function_target_id%5B6591%5D=6591

https://www.linebiz.com/jp/case-study/efface/?field_case_category_function_target_id%5B6591%5D=6591

https://www.linebiz.com/jp/case-study/japan/?field_case_category_function_target_id%5B6591%5D=6591

 

LIFFアプリ・LINEミニアプリの活用事例にみる今後の可能性

 

LIFFアプリ/LINEミニアプリの6つの活用事例から、いくつかの共通点がみえてきます。ここでは、LIFFアプリ/LINEミニアプリの持つ可能性をまとめます。

 

会員証機能としての活用

 

LIFFアプリ/LINEミニアプリを会員証として利用する方法は、概ね好評を博しています。

 

従来の紙やプラスチックの会員カードには、持ち歩くのが面倒だったり、財布の中から探しづらかったりといったデメリットが大きく、嫌う人も少なくありませんでした。かといって、ネイティブアプリはダウンロードの手間もあり、会員証のためだけにアプリをダウンロードしたくないと考える人もいると考えられます。

 

その点、LINEユーザーであれば、LIFFアプリ/LINEミニアプリを利用した会員証は大変便利です。アプリの追加ダウンロードの必要がなく、財布もかさばりません。それでいて、公式アカウントからプロモーションやセール情報なども送れるようになるため、顧客のみに低コストでプロモーションができます。

 

LIFFアプリ/LINEミニアプリを会員証として利用する方法は合理的で、LINEアプリ自体の利用率が大きく落ち込まない限り、利用数は増えていくことでしょう。

 

オーダーシステムとしての活用

 

オーダーシステムとしての利用も増えていく可能性があります。店外/店内オーダーシステムの多くはウェブページベースで、ウェブサイトやSNS、もしくは店内のQRコードから誘導するかたちを取っていました。

 

場合によってはそちらのほうがシンプルな場合もありますが、LIFFアプリ/LINEミニアプリの場合、オーダーシステム利用後にお客様とオンラインで接点を持てるメリットがあります。

 

オンラインでの接点を獲得するため、「LINE友だち登録で1品プレゼント」といったキャンペーンを行っている店舗は少なくありませんが、オーダーシステムの利用で接点を獲得できれば、より利用率も高くなり効率的といえるでしょう。

 

LINE PayPayPayとの連携による電子決済

 

LIFFアプリ/LINEミニアプリでは、LINE Pay及び、同じZホールディングス傘下のPayPayとの連携が可能です。

 

たとえば、前述のオーダーシステムにこれらの決済システムを連動させ、テイクアウト利用時や、店内飲食時の決済をお客様のスマートフォンで完結させることもできます。お店側にとってはスタッフの労力が減るばかりか、レジ締めなどの手間も少なくなり、人件費の削減に繋がります。

 

また、ECサイトの展開も期待されています。LIFFアプリ/LINEミニアプリによるECサイトは、別サイトと見比べて離脱される可能性が低いと考えられています。また、LINE PayやPayPayは利用年齢制限がないことから、未成年者の買い物との相性がよいと考えられ、今までのECサイトとは異なった需要を掘り起こせる可能性があります。

 

まとめ

 

NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によれば、スマホ・ケータイ保有者におけるLINEの利用率は、10~50代で8~9割以上となっています。そのLINEをベースに展開する、LIFFアプリ/LINEミニアプリは、まだまだ可能性を秘めていると考えられます。

 

LIFFアプリ/LINEミニアプリにもデメリットはあり、たとえば、ネイティブアプリと比べるとデザインの自由度などは制限されます。しかし、会員証、予約・オーダーシステムなどに求められることは、特別感ではなく日常的な使いやすさです。その点において、LIFFアプリ/LINEミニアプリにはアドバンテージがあります。

 

開発側からすると、iOSとAndroidそれぞれにネイティブアプリを開発しなくてよいため合理的ですし、利用する側にとっては会員登録の手間がなく、新規アプリでスマートフォンの容量を圧迫することもありません。

 

LINEアプリ自体が現在の利用率を保ち続ける限り、LIFFアプリ/LINEミニアプリの存在感はさらに増していくことでしょう。

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