現在、様々なソーシャルメディアが利用され、国内ユーザー数ではTwitterが4,500万人、Instgramが3,300万人、Facebookが2,600万人と続く中、LINEに至っては8600万人(2020年10月時点)とソーシャルメディアではLINEが最も利用者数が多い状況です。
※参照:https://www.comnico.jp/we-love-social/sns-users
実際に、LINEは個人利用においては、メインの連絡手段として使われており、また利用ユーザーが多いことに対して、企業においては公式な情報発信ツールの一つとして位置付けをしているところもあります。
そうした状況の中でLINEでは、トークルームで会話をする以外に、一部の商用サービスでネット注文の受付をする・予約ができる、などLINE上の機能を活用したサービス提供が可能になりました。このようにLINEを活用してサービスを提供する企業では、LIFFアプリを活用して、新たな情報発信をしています。今回は、LIFFアプリについて取り上げたいと思います。
LIFFは、2018年6月にLINEの「Messaging API」の新機能としてLIFF v1として公開された、LINEアプリでのWeb開発基盤のことです。
「Messaging API」とは、もともとLINE公式アカウント向けに提供されているオプションの一つで、ユーザーへのメッセージ配信、または反対にユーザーからのメッセージに対し自動的に応対するためのAPIです。トークルーム内で画像やボタンを表示して動きをつける、特定のメッセージが返信されるとそれに自動応答する、というようなことが可能です。
そんな「Messaging API」の拡張機能として、「LIFF」がリリースされました。LIFFは、「LINE Front-end Framework」の略で「リフ」と言います。
LIFFがリリースされる以前は、企業側がLINEアプリ上にWebアプリを開発する手段がありませんでした。LIFFが提供されたことで、企業はLINE上にアプリを開発できるようになり、ユーザーのLINEアカウントと企業のデータベースと連携して複雑な処理も可能になりました。LIFFで開発されたWebアプリをLIFFアプリと呼びます。
LIFFアプリを用いてサービス展開している企業はいくつか存在します。
例えば、スターバックスコーヒージャパンでは、トークルーム上でのコーヒーのカスタマイズ確認、スターバックスカードの表示、LINE payでの支払い対応、というように注文から支払いまでの一連の流れをLINE上で完結できます。また、クロネコヤマトでは、配達通知の際にクロネコ メンバーズとLINE IDの紐づけにLIFFを用いて、LINE上で荷物のお届け予定日時と送り状番号の照会をできるようになっています。化粧品販売を手掛けるロクシタンジャパンでは、LIFFでデジタル会員証を実装し、LINE上にプレゼントやクーポンを提示することでマーケティング施策・販促として活用しています。このように企業が提供するサービス内容に応じて多様に活用されています。
LIFFを用いることで、上記の事例のようにLINE上で様々なサービスを展開が可能ですが実際にLIFFでどのようなことが開発することができるのか、具体的なLIFFの機能について、以下に主要な5つを取り上げます。
LIFFがないLINEアプリでは、トークルームでLINE以外のアプリやブラウザを起動する時は、LINEアプリとは別に画面を切り替える必要がありました。LIFFを用いることで、画面を切り替えることなく、トークルーム内でアプリを起動・表示(表示幅もフル画面・トークルームの1/2等の調整可)することができるようになります。
ユーザーがトークルームで質問をすると自動返信できるチャットボット「LINE Bot」とも連携できます。LIFF無しでもLINE Botは使用でき、ユーザー自身がメッセージをLINE Botへ送ることができます。LIFFを使うと、文字のメッセージ以外にも画像やスタンプ・位置情報等、複雑な情報をLINE Botへ送ることができるようになります。
また、それ以外にもLINEアプリの入力フォームや外部のWeb APIと、LINE Botと連携ができるようになるので、LINE Botへの質問内容や回答内容の複雑化等、活用の幅も多様で広がりがあります。
ユーザーがLINE登録しているアカウント情報を取得して、それをWebアプリへ連携できます。これにより連携先のアプリへ切り替える際にログインを促す必要がなく、ユーザー
ごとに画面の表示内容を変えることも可能になるので、ユーザーの情報を活用したコンテンツ配信や機能設定が容易になります。
アンケート機能自体はLINEでも提供されていますが、企業でカスタマイズしたアンケート項目やアンケート結果の集計をしたい場合にはLIFFを用いる必要があります。
LIFFのアンケート機能では、時間帯をプルダウンで選択させる・入力文字のチェックをさせる、利用規約への同意リンク等も提供されているので簡単にアンケート画面を作成することが可能になります。
LINE上でQRを読み取り(対応端末は限定されます)、その結果をWebサービスと連携することができます。商品にQRコードを貼付し、それをLIFFアプリのQR読み取り機能で読み込ませて、キャンペーンの一環としてLINEアカウントへの案内・商品掲示やその場での当選結果へつなげる等、その誘導としても期待ができる機能です。
LIFFアプリの開発は、すでにWebアプリ開発しているエンジニアにとっては技術的にはそれほど難しいことではありません。LIFFアプリの開発は、Webアプリ開発(HTML/CSS/JavaScript)の他に、開発環境(SDK)・LINEアカウント(開発者向け・サービス向け)・サーバ環境を用意すれば開発することができます。サーバ環境はAWS/GCPと連携して動作します。このように業務で既にWeb開発をしているエンジニアであれば、LINEアカウント・LINE APIを学習すればLIFFアプリの開発は比較的容易にできる部分もあるかと思います。
ただ、その上で、LIFFアプリで求められるのが、通常のWebアプリ開発と異なり、LINEサービスを意識したアプリ開発をする、という点です。LINE上で展開できる機能が制約される中、例えば企業のサービスと連携させるために、どのようなサービスや機能を企画できるのか、LINEユーザーへどんなアプローチをすると効果的なのか、という視点です。そうした企画力やマーケティングの視点も通常のWebアプリ開発とは異なる要素なので、その要素があるとエンジニアとしての差別化ができるかもしれません。
LINEはLIFFアプリと似たサービスを「LINEミニアプリ」として提供し、2020年7月に企業のエントリー受付を開始しました。LINEミニアプリとは、LINE内で自社サービスを展開できる専用アプリで、店舗や企業向けのサービスです。特徴としてはアプリ自体のインストールが不要で、ホームタブにお気に入り登録できるようにし、ユーザーにアクセスしやすくしている点です。
そんなLINEミニアプリの開発ですが、実はLIFF(SDK v2.1)を使用します。そのため、LINEミニアプリは、LIFFとLINEミニアプリ独自機能で組み合わされたサービスと言えます。LINEもLINEミニアプリは、LIFFアプリの一種と公式定義しています。
このようにLIFFアプリは、LINEプラットフォームに展開できるアプリです。iPhoneのネイティブアプリのように新たにインストールする必要がなく、LINEアプリ内で展開できるためインストールの敷居も低く、既存のLINEユーザーにもアプローチができるので、これから期待できる機能です。
また、その学習コストはWeb開発をしているエンジニアや企業にとっては、LINE独自の知識(アカウント・API)を取得すれば、専用の開発言語を取得する必要がないので、比較的開発しやすいとも言えます。
LIFFアプリを通してユーザーへのアプローチを考えてみることで、サービスの新たな可能性に繋がっていくかもしれません。