IT業界で女性の活躍が期待されている理由と女性が働きやすい5つの理由

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近年、IT業界では女性エンジニアの活躍が期待されています。ITエンジニア=激務といったイメージを持つ女性は少なくないようですが、専門職であることによる安定性や、給与水準の高さ、テレワークなどの柔軟な働き方ができることなど、女性にとっても魅力的な条件が揃っている職種でもあります。

 

このコラムでは、IT業界に女性エンジニアが少ない理由や、女性が活躍することの重要性、そして女性エンジニアにとってIT業界が働きやすい理由について詳しく解説します。

IT業界における女性の現状と活躍の重要性

まずは、現在のIT業界における女性の活躍状況を、データをもとにみていきます。

 

日本のIT業界における女性割合は20~30%程度

総務省が2019年にまとめた「女性活躍の推進に関する政策評価」のレポートによると、日本の情報通信業における女性労働者比率は19.7%となっています。女性は約5人に1人程度であり、男性より明らかに少ない状況です。

 

これは諸外国に比べても低い割合のようです。総合人材会社のヒューマンリソシアが2023年にまとめた調査によると、日本において情報通信業に就いている女性の割合は28.9%ほどでした。

 

もっとも高いのは台湾で41.8%、さらに、同じアジア圏のマレーシア(40.4%)やフィリピン(36.8%)も割合が高くなっています。日本の28.9%という割合はイギリスやフランスよりは多く、日本だけが少ないわけではありませんが、まだ伸びしろがあるものと考えられます。

 

実際、2019年の調査では19.7%だったところ、2023年の調査では28.9%まで伸びを見せていることは注目に値するでしょう。この2つのデータは調査元が異なるため直接の比較はできませんが、女性のIT業界への進出は徐々に進んでおり、今後も期待できるものと考えられます。

 

出典:女性活躍の推進に関する政策評価|総務省

出典:IT分野のジェンダーギャップに関するグローバル調査|ヒューマンリソシア

 

IT業界は深刻な人手不足。今後の女性進出がカギに

女性エンジニアの活躍推進は、IT業界の人材不足への対応という観点からも極めて重要です。IT業界ではエンジニアが不足しており、将来的にさらに深刻化することが懸念されています。2019年にまとめられた「IT人材需給に関する調査」によれば、2030年時点で、少なくとも16万人、最大で79万人のIT人材が不足すると考えられています。

 

現状、ITエンジニアの7~8割程度が男性であると考えると、女性エンジニアの活用は有効な解決策となり得ます。IT業界の人材不足解消は国家としての課題であり、今後は企業と社会が一体となって、女性エンジニアの活躍を後押ししていくことが不可欠となると考えられるのです。

 

出典:IT人材需給に関する調査|みずほ情報総研

 

日本のIT業界に女性が少ない理由とは?

ではなぜ、IT業界で働く女性は少ないのでしょうか。主に2つの理由が考えられます。

 

IT業界をよく知らない女性が多く、激務のイメージも強い

2023年に、10代・20代の女子学生を対象として行われた「ITエンジニアに関するイメージ調査」では、「あなたはITエンジニアになりたいと思うか?」という質問に対して、約80%の女子学生が「なりたくない」と答えました。

 

しかし、その大きな理由は「そもそも何をするのかよくわからない(45.3%)」「難易度が高そう(27.3%)」といったものであり、ITエンジニアという職業がそもそもよく知られていないことが原因であるとわかります。

 

さらに、「残業が多そう」「急な休みがとれなそう」といった過酷な労働環境のイメージが先行しており、女子学生の目にIT業界が魅力的にうつっていないことがわかります。これには、現在の日本に、女性エンジニアのロールモデルが不足していることも考えられるかもしれません。

 

出典:ITエンジニアに関するイメージ調査|株式会社ロックシステム

 

理工系の女子生徒が少ない

IT業界で働く女性が少ない理由のひとつとして、理工系分野に女子生徒が少ないという事情があげられます。令和3年にまとめられた「女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究」(内閣府の委託により三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施)によると、工学部の女性比率の全国数値は15.2%と非常に低い水準です。

 

そもそも、若い女性にとってITエンジニアのイメージはよいものではなく、興味を持たれにくい状況です。それに加え、理工系を専攻する女性も少ないため、おのずからIT業界にも女性が少ない状況となっているといえるでしょう。

 

出典:女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究|三菱UFJリサーチ&コンサルティング

 

IT業界が女性にとっても働きやすい5つの理由

男性の多いIT業界ですが、女性にとっても働きやすい環境であることは意外と知られていません。ここでは、女性にとって働きやすい代表的な理由を紹介します。

 

他業種に比べて収入が高い

ITエンジニアは給与水準が高いことで知られています。経済産業省が行った調査によると、日本のIT人材の平均年収は、20代で413万円、30代で526万円、40代で646万円でした。全業種の平均年収は457.6万円(令和4年)ですから、ほかの業種に比べて高い水準にあることがわかります。

 

ITエンジニアは高度な専門性を必要とする職業であり、人材も不足しています。各企業が優秀なITエンジニアを確保するために争っている状況のため、基本的に売り手市場です。就職及び転職もしやすい状況であり、これは女性の経済的自立や豊かな生活に貢献できる魅力のひとつになっているといえるでしょう。

 

出典:IT人材に関する各国比較調査結果報告書|経済産業省

出典:民間給与実態統計調査結果|国税庁

産休・育休から復職しやすい

ITエンジニアは技術職です。一度身に着けた経験と技術は、現場を離れてすぐになくなるものではなく、知識の定期的なアップデートこそ必要ではあるものの、産休・育休後も復職しやすい傾向にあります。

 

そして、このことを魅力に感じている女性エンジニアは少なくありません。2021年に女性エンジニアを対象に行われた調査では、ITエンジニアになろうと思った理由について、「手に職をつけたい(61%)」「専門的なスキルを身に付けたい(58.4%)」など、専門的なスキルを身に付けることを重視している人が多い結果となりました。

 

業界や職種によっては、産休や育休取得で業務をしていない期間ができると、復帰が難しくなってしまうことがあります。しかし、ITエンジニアは専門職であり、かつ人材不足のIT業界であれば、一時的に離職した女性の復職は比較的容易なのです。

 

出典:女性エンジニアの光と課題|キャリアデザインセンター

勤務時間・勤務場所の自由度が高い

IT業界は、テレワークやフレックスタイム制度を導入する企業が多く、子育てしながら働ける環境が整っています。

 

内閣府が2023年にまとめた調査では、情報通信業のテレワーク実施率は実に73.9%にのぼりました。次に実施率が高い業種は、電気・ガス・水道業の44.8%であり、IT業界だけ圧倒的にテレワークを実施している企業が多いことがわかります。

 

必ずしもフルリモートではなく、週に1、2度オフィスに出向くといった企業や、半分程度は出勤といった企業も多いようですが、それでも自由度の高さは圧倒的で、勤務場所や時間にとらわれない柔軟な働き方がしやすくなっていることがわかります。

 

産休や育休からまずはテレワークで復帰する…といったことがしやすくなっているため、子育て世代にとっても働きやすい業界といえるはずです。

 

出典:第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査|内閣府

 

男性との体力差が出にくい

一般的に、男性と女性は体力に違いがあり、職業によっては女性にとって不利に働きます。しかし、ITエンジニア業務は主に頭脳労働であり、男女の体力差が仕事上の障壁になりづらいといえるでしょう。

 

以前は、泊まり込みのような状態で開発を進める現場も少なからずありましたが、近年はIT業界も多様化しており、ITエンジニアの働き方もさまざまです。そのため、体力差による不利益を被ることは少なくなっており、基本的に、女性と男性は同じ条件で活躍できるといえるでしょう。

 

文系からのチャレンジもしやすくなっている

近年のIT業界ではIT人材が不足していることもあり、理工学系出身者だけでなく、文系出身者も増えています。「IT人材白書2020」によれば、文系出身者がIT業界で活躍している割合は約30%となっており、今後も増えることが予想されます。

 

それに伴い、プログラミングスクールや、オンライン学習などのサービスが増え、社会人が働きながらプログラミングスキルを身に付けるチャンスが増えました。確実に文系出身者も活躍できる環境になってきており、このことは、理工系出身者の少ない女性にとってもよい傾向といえるはずです。

 

出典:IT人材白書2020|独立行政法人情報処理推進機構

 

まとめ

IT業界で活躍する女性はまだ少ない状況です。しかし、日本のIT人材は深刻に不足していることもあり、その対応策としても女性エンジニアの活用が期待されています。

 

IT業界は、高水準の給与や柔軟な働き方、産休・育休からの復職しやすさなど、女性にとって働きやすい条件が整っています。また、文系からでもチャレンジしやすい環境が整いつつあり、今後さらにIT業界に挑戦する女性は増えていくことでしょう。

 

掲載日:2024年6月4日

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