効果的なコードレビューのコツ|目的や観点、自動化するツールなどについて解説します

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コードレビューは、ソースコードを開発チームでチェックし、品質を確かめる作業です。コードレビューのやり方は組織やチームによって異なり、着眼点もさまざまですが、コードレビューの効果を最大化させるために共通するコツもあります。

 

大切なのは、そのプロジェクトで大切なことをはっきりさせ、コードレビューの方針を一貫させることといえるでしょう。また、人手だけに頼らず、適宜自動化することも効果的なレビューに貢献します。ここでは、効果的なコードレビューのコツを詳しく紹介します。

 

コードレビューを行う「目的」を明確にする

 

コードレビューを効果的に行うには、コードレビューの目的を明確にすることが大切です。主な目的として、以下の4点が考えられます。

 

1.バグの検出

2.ソースコードの最適化

3.ルールに合致させる

4.メンバーのスキルアップ

 

1.バグの検出

コードレビューを行うことで、開発者の見落としやミスを発見し、気づかなかったシステムのバグを検出できます。

 

バグが起こる理由は、ケアレスミスや、仕様や設計への認識不足、エンジニアのスキル不足などが考えられます。複数人でソースコードを客観的に確認することで、これらのバグを見逃す可能性は飛躍的に小さくなり、ソースコードの品質が向上します。

 

2.ソースコードの最適化

ソースコードを最適化することもコードレビューの目的のひとつです。動作に問題なくても、たとえば1行で済むはずのコードが長々と複数行にわたって書かれている状態は、望ましい状態とはいえません。

 

こうしたソースコードを発見し、最適化することで、将来的にバグが起こるリスクを低減するとともに、可読性を向上させ、メンテナンス作業の負担も小さくできます。

 

3.ルールに合致させる

ソースコードが、プロジェクトの仕様や設計、開発チームのルールに合致しているかも、コードレビューでチェックしたいことのひとつです。

 

開発チームで定めたルールに合致していることは、開発をスムーズに行うために重要なこと。ルールを守ることで、ソースコードの品質が安定しやすくなります。

 

メンバー間での齟齬(そご)がうまれないようにするためにも、ルールを守り、開発メンバー間で認識をあわせることが重要です。

 

4.メンバーのスキルアップ

コードレビューを行うことで、バグの検出がしやすく、また可読性の高い高品質なソースコードになります。それに加え、コードレビューの経験そのものが、開発メンバーにとってのスキルアップにつながります。

 

コードレビューをすることで、自ら書いたソースコードのよい点・改善点がわかり、知識として蓄積されます。また、他のメンバーが書いたソースコードをレビューすることでの「気づき」もあるはずです。

 

とくに経験豊富なエンジニアから、まだ経験の浅いエンジニアへのアドバイスは、成長のヒントとなるでしょう。

 

コードレビューで見るべき観点を明確にする

 

目的が明確化されたら、次はコードレビューを行う際の観点が大切になります。具体的に、コードレビューを行う「レビュアー」は、以下の3つの観点から確認することが重要となります。

 

1.仕様や設計に合致しているか

2.チームのルールに準拠しているか

3.最適な書き方になっているか

 

1.仕様や設計に合致しているか

まず、開発の仕様や想定している設計に合致したソースコードになっているかをチェックします。システムやサービスの要件定義から乖離(かいり)がないことは、基本であると同時に、非常に重要です。

 

コードレビューを行う「レビュアー」は、仕様書や設計書などの開発文書の内容を確認しながらチェックを進めます。コードレビューそのものをスムーズにするために、事前に開発文書を十分に把握しておくことが大切です。

 

2.チームのルールに準拠しているか

次に、開発チームで定めるコーディングルールに準拠しているかをチェックします。

 

多くの場合、チームで定めたインデントやコメントの書き方があるはずです。しかし、エンジニアによっては、前職でのクセが抜けずに違う書き方をしてしまうケースもあるでしょう。しかし、そのままにしておくと開発の効率が落ち、他のメンバーが混乱することもあります。

 

可読性を向上させ、メンテナンス性を高めるためにも、ソースコードはあくまでチームのルールに準拠させる必要があります。コードレビューでは丁寧に確認しましょう。

 

3.最適な書き方になっているか

同じ機能を実装するうえで、よりシンプルでわかりやすい実装になっているかを確認しましょう。シンプルなコードは可読性が高く、一般的にバグを生み出しにくくなります。冗長な記述をまとめる、または削除しましょう。

 

また、将来的に起こり得る仕様変更のことを考慮した書き方にすることも大切です。同じような処理を関数にまとめるなどの配慮があると、仕様変更時に修正が少なくなり、長期間にわたって開発・運用のコストを抑えられます。

 

コードレビューを効率化・自動化するツールを使う

 

コードレビューは重要ですが、人的コストがかかります。また、レビュアーのスキルによるクオリティのバラつきもあります。そのため、効率化するツール、または自動化するツールを活用することは非常に重要です。

 

1.コードレビューを効率化するツール

ソースコードを1行ずつすべて目で確かめるには膨大な時間がかかります。そのため、工数を削減し、正確性を担保するため、コードレビューではツールを使用するのが一般的です。

 

コードレビューを効率化するツールとして、もっともよく使われているのが「GitHub」です。プルリクエスト内にコードレビューツールが備わっており、GitHub内でレビュアーの割り当てや、コードレビューの依頼もできるようになっているため、コードレビューがよりスムーズになるでしょう。

 

その他にも、コードレビューを効率化するツールとして次のようなものがあります。

 

・SmartBear「Collaborator

・Atlassian「Bitbucket

Review Board(オープンソース)

Phabricator(オープンソース) など

 

2.コードレビューをAIで自動化するツール

近年のAIの発展に伴い、AIでコードレビューを自動化するツールも登場しています。

 

早くから開発が進められてきた「Amazon CodeGuru」は、機械学習を活用してコードレビューを自動化するツールです。ソースコードの問題点を指摘して修正を提案してくれる機能と、性能を最適化させる機能の2つを持ち合わせています。

 

ごく最近登場したAIツールでは「CodeRabbit」があります。現段階では、すべてのソースコードを的確に修正できるものではありませんが、打ち間違いなどの初歩的なミスなどを発見できるようになり、レビュアーの負担を減らすことができます。

 

現状、コードレビューを丸ごとツールに任せることはできませんが、レビュアーに渡す前にレビューイ(依頼者)がこれらを利用してチェックすることで、より効率的なコードレビューが実現できるでしょう。

 

コードレビューの注意点

 

 

コードレビューを効果的に行うには、以下のような注意点に留意する必要があります。

 

1.疑問点は本人に確認する

2.指摘には根拠を示す

3.具体的な修正案を提示する

4.よいところは褒める

5.その人自身を否定しない

 

1.指摘には根拠を示す

コードレビューでは、単に「この部分がよくない」といった指摘だけでは不十分です。指摘する際は、なぜその指摘をするのか、根拠を明確に示しましょう。

 

根拠がわからないと、レビュアーの意図が伝わりにくくなり、ときに誤解を招きます。指摘の根拠をわかりやすく示すことで、作成者も納得したうえで修正ができるでしょう。

 

2.具体的な修正案を提示する

コードレビューでは、できる限り具体的な修正案を提示しましょう。「この部分は問題があるので直してください」といった指摘だけでは、レビューイ(依頼者)は対応が難しい場合があるからです。

 

レビュアーが具体的な修正案を示すことで、レビューイはレビュアーの意図をつかみやすくなり確実に改善できます。経験としても蓄積できるため、チームの全体の品質向上につながるでしょう。

 

3.よいところは褒める

コードレビューでは、改善点を指摘するだけでなく、よいところは積極的に評価しましょう。

 

とくに、チームに入りたてのエンジニアや経験の浅い新人エンジニアの場合、指摘する箇所が多くなることはよくあるでしょう。レビューイも仕方ないことだと頭でわかっていても、落ち込んでしまう人もいます。

 

そんなとき、レビューイの努力を認めてあげることで、モチベーションの維持や向上につながります。建設的な雰囲気を醸成するためにも、よいところを見逃さず、積極的に褒めましょう。

 

4.疑問点は本人に確認する

コードレビューを行う際、レビュアーが疑問に感じた点があれば、直接レビューイに確認しましょう。そのソースコードが書かれた背景を理解することで、的外れな指摘になることを防げます。

 

ソースコードが一方的に評価されるのではなく、レビューイに説明する機会が与えられることで、チームの建設的な雰囲気の醸成にもつながります。確認してマイナスになることはないので、疑問点があれば迷わずに確認し、お互いの理解を深めましょう。

 

5.その人自身を否定しない

コードレビューでは、あくまでもコードの内容を評価するものであり、ソースコードを書いた人を否定するものではありません。指摘する際は、”あなたは~”といった表現をせず、”このコードは~”といった表現を使うようにしましょう。

 

攻撃的な言葉で批判すると、レビューイの自尊心を傷つけてしまい、建設的な議論ができなくなってしまうことがあります。レビュアーは、敬意を払いながらレビューすることが重要です。

 

最後に:「効率的にチェックを行うこと」と「チームメンバーを育てること」の両方を意識してコードレビューをしよう

 

コードレビューを効果的に行う際に重要なのは、短期的には目の前のコードレビューを効率的に行うこと、長期的にはチームメンバーのスキルアップを図ること、この両方のアプローチを意識することです。

 

まずは今、目の前のコードレビューを効率的に進めるために、コードレビューの目的を明確にし、ツールを活用して効率化を図ることが大切です。

 

一方で、長期的な視点では、コードレビューを通じてチームメンバーのスキルアップを図ることが重要となります。具体的な修正案の提示や、よいところの評価を行うことで、レビューイは自身のコーディングスキルを向上させることができるでしょう。

 

そうして、メンバー全員がコードレビューを通じて成長していけば、最終的には将来的な負担も軽減されるはずです。コードレビューには人的コストがかかりますが、その投資はチームの生産性向上や品質保証につながります。短期と長期のバランスを意識しながら、コードレビューを行っていきましょう。

 

掲載日:2024年6月25日

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