AI時代におけるデータサイエンティストの需要と将来性とは?

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データを収集・分析することで、ビジネスの課題解決や意思決定をサポートする職業である「データサイエンティスト」。ビッグデータの活用が進む現代において、非常に重要な立ち位置となっていますが、ここ日本では需要に対してデータサイエンティストが少なく、引く手あまたの状態が続いています。

 

しかし、その一方で、AIの発展によりデータサイエンティストという職業の需要が減る、もしくはなくなるのではないかと考える人も少なくありません。それはなぜでしょうか。ここでは、AI時代におけるデータサイエンティストの需要や将来性についてみていきます。

 

データサイエンティストとは?

 

データサイエンティストは、データ分析の専門家です。データを収集、整理、分析することで、ビジネスにおける課題解決や意思決定をサポートします。

 

データサイエンティストには、統計や機械学習に関する知識や、データの管理や分析を行う「SAS(Statistical Analysis System)」を扱うスキル、さらに、R言語やPythonなどのプログラミング言語を扱うスキルが必要です。また、ビジネスに関する基本的な知識も求められます。

 

データサイエンティストが登場した背景

データサイエンティストという用語は、2000年代に入ってから徐々に使われるようになり、2010年代にはIT業界で広く認識されるようになりました。

 

2010年代は、多くの企業に大量のデータが蓄積されてはいたものの、それらを十分に活用できていない状況でした。しかし、データを活用することの重要性が認識されるようになり、データサイエンティストが注目されたという経緯があります。

 

近年は、ビッグデータを活用することの重要性が広く知られることとなり、多くの企業が事業戦略の一環として取り入れています。データサイエンティストの需要はより一層高まっており、需要に対して人手が足りない状況が続いています。

 

データサイエンティストが活躍する場所

データサイエンティストは、ビッグデータをすでに活用している企業はもちろん、大量のデータが蓄積されていながらも、それらを十分に活用できていない企業からも求められています。

 

とくに、BtoC企業が消費者の動向を把握するためのマーケティングに役立てるケースは非常に多くなっており、データサイエンティストは欠かせない存在です。多くの企業が、消費者の年齢や性別、地域、職業などが含まれるビッグデータを分析することで、商品開発や販売、広告に関する戦略の精度をより高められるものと考えています。

 

AI時代におけるデータサイエンティストの需要と将来性

 

ここ数年でAIは急激な進化を遂げ、あらゆる仕事がAIに奪われるといわれています。では、データサイエンティストの仕事にも変化が起きるのでしょうか。

 

AIはデータサイエンティストから仕事を奪うのか

「AIが進化したことで、データサイエンティストの仕事はなくなる」と考える向きがあります。その理由は明確で、AIはビッグデータから情報を抽出することに長けているためです。たしかに、この作業は従来データサイエンティストが行っていたものであり、AIを使うことでビッグデータから情報を抽出しやすくなったことは事実です。- 

もちろん、長い目でみればデータサイエンティストの仕事がAIに置き換わる可能性はあります。しかし、今すぐAIがデータサイエンティストの役割を全うすることは難しいでしょう。なぜなら、データサイエンティストの能力が最も問われることは、収集したデータを分析して、特定の企業のビジネスに役立つ形でアウトプットすることだからです。

 

データをビジネスに役立つ形でアウトプットするためには、データを分析することに加え、データに現れない企業の状況を取材して汲み取ったり、データにとらわれない仮説を立てたりといった作業も時に必要となります。これこそがハイレベルなデータサイエンティストに求められることであり、少なくとも現実的にはAIに置き換えられない部分です。

 

AIがデータサイエンティストの業務に与える影響

一方で、データサイエンティストの業務がAIによって軽減される可能性はあります。今まで時間をかけて行っていたデータ抽出をAIに任せられるようになれば、データサイエンティストは単純作業が減り、より分析に力を入れられるようになるはずです。

 

また、データサイエンティストという職種がカバーする範囲が広く、定義も曖昧であるともいわれており、今後、主にシステムの構築やデータ管理を行う「データエンジニア」と、データ解析に重点を置く「データアナリスト」などの職種に細分化されるとも考えられています。

 

その場合、データエンジニアはAIによって自動化が早い段階で行われる一方、データアナリストは経験や創造性といった人間の力を必要とする場面が大きく、AIがタスクを代替することが難しい…といった違いが出てくる可能性も考えられます。

 

データサイエンティストの需要と将来性

現在、AIがデータサイエンティストの仕事をどこまで代行できるかはわかっていません。遠い将来AIに取って代わる可能性はありますが、それはどの職業も同じ状況といえるでしょう。

 

少なくとも現時点でのデータサイエンティストの需要は増えており、需要の高まりに対して人数が少なく、育成も追いついていない状況です。これは、日本にIT人材が元々多くないことに加えて、データ分析を学べる教育機関が少ないことも影響しているものと考えられています。

 

あらゆる情報がデータ化され、データドリブンな経営が一般的となったことから、スキルの高いデータサイエンティストは企業間で奪い合いになっており、データサイエンティストにとっては完全な売り手市場といえます。今後、より多くの企業がビッグデータを活かした経営を行うと考えられ、近いうちにデータサイエンティストの需要がなくなることは考えにくい状況です。

 

これからデータサイエンティストを目指すには

 

 

データサイエンティストを名乗るために必須な資格や学歴はありませんが、必要とされるスキルははっきりしており、さらにビジネスへの造詣や、豊富な実務経験も必要となります。ここでは、これからデータサイエンティストを目指す人に求められるスキルや役立つ資格を紹介します。

 

データサイエンティストに求められるスキルセット

データサイエンティストには、大きく3つのスキルが求められます。それぞれを詳しく解説しましょう。

 

・ビジネスに関するスキル

データサイエンティストには、ビジネスに関する一般的なスキルが求められます。

 

課題解決のために「使える」「意味のある」データを用意するためには、その企業が抱える問題を認識し整理する力が必要です。そのためには、自社の他部署や、クライアントとの対話が必要となり、コミュニケーション能力が求められます。

 

また、営業部署や技術担当者とのプロジェクトになることも多いため、専門用語が伝わらないこともあります。そのため、難しい内容も噛み砕いて伝えられるプレゼンテーション能力も必要です。

 

・データサイエンスに関するスキル

データサイエンスとは、数学、統計学、AI(人工知能)、ML(機械学習)、プログラミングなどの理論を用いて、データを解析し、ビジネスにおいて有用な洞察を導き出す学問のことです。分析の目的を定め、適切な分析方法を決定するためには、データサイエンスへの深い造詣が必要となります。

 

これらのスキルを対外的に示すものとして、データサイエンティスト検定やデータスペシャリスト検定などがあります。また、知識の基礎となるものは数学であり、解析モデルやアルゴリズムに関して理解するためには、解析学(微積分学ならびにそれから発展した諸分野の総称)や、線形代数学(線形空間および線形写像に関する代数的理論)などを習得していることが望ましいと考えられます。

 

・ITに関するスキル

データサイエンティストは、データを処理するためにツールを使います。そのためには、統計解析に特化した「R言語」や、AIや統計処理に向いている汎用言語「Python」などのプログラミング言語の習得が必要です。

 

また、データを抽出するためには、データが格納されているデータベースに関する基本的な知識が必要です。ここでは「SQL」などのデータベース言語のスキルが必要となります。場合によっては「オラクルマスター Platinum」などの資格の取得を目指してもよいでしょう。

 

データサイエンティストとしてのスキルを証明できる資格

データサイエンティストになるために必須の資格はありません。しかし、関連する資格を取得することでスキルを証明できます。

 

・データサイエンティスト検定 リテラシーレベル

データサイエンティスト検定は、データサイエンティスト協会が実施する民間資格です。データサイエンティストに求められる、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力が問われます。

 

この資格を取得する過程でデータサイエンスの基礎知識を体系的に学ぶことができ、データサイエンティストとしてのスキルがあることを証明できるため、就職にも役立つでしょう。

出典:https://www.datascientist.or.jp/dscertification/

 

・データベーススペシャリスト試験

データベーススペシャリスト試験は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が行う国家試験です。難易度が高く、取得することで高度な情報処理スキルを証明できます。

 

データベースに関する高度かつ広範な知識が求められ、合格率も15%前後と非常に低くなっています。データサイエンティストとしてキャリアアップを目指す人にも役立つ資格といえるでしょう。

出典:https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/db.html

 

・オラクルマスター

世界中の企業が採用し業界のスタンダードとなっている、オラクルデータベースに関する資格です。オラクルマスターには4つの難易度がありますが、プラチナは最も難易度の高いランクとなっています。

 

データベースの構築、運用、SQLを用いたデータの抽出など、データベースに関する幅広い知識が問われます。世界で通用する資格でもあるので、海外企業への転職を考えている人にもおすすめできる資格です。

出典:https://www.oracle.com/jp/education/index-172250-ja.html#1

 

・統計検定

日本統計学会が実施する「統計検定」は、その名のとおり統計学に関する民間資格です。習熟度により5つのレベルが用意されています。

 

データサイエンティストの場合、準一級が基礎知識に相当します。2級からの受験が必要となるため、統計学を新たに習得する際は、まず統計検定2級の合格を目指すとよいでしょう。

出典:https://www.toukei-kentei.jp/

 

まとめ

AIの普及により、今すぐデータサイエンティストという職業がなくなる可能性は低いでしょう。しかし、データの収集・整理が、誰にでもできるようになりつつあることも事実であり、淘汰が起きる可能性は十分あります。

 

今後、データサイエンティストには、自社やクライアントのビジネスに特化した分析力や提案力が一層求められるようになると考えられます。そして、ハイレベルな提案を行うために、データサイエンティスト自身がAIを活用することも求められることになるでしょう。

 

データサイエンティストの未来は、ビジネスへの深い洞察力とAIの活用が鍵となりそうです。

 

掲載日:2024年5月23日

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