エンジニアの年収を考える Vol2:年収から見えるキャリアの考え方

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前回「エンジニアの年収を考える Vol1:海外と日本の違い」では、海外と日本のエンジニアの年収の違いや、日本のエンジニアの年収が低いといわれる原因をみてきました。では、日本国内のエンジニアの年収はどのような現状なのでしょうか。

 

今回は、「年収から見えるキャリアの考え方」をテーマに、前半では日本のエンジニアの年収をさまざまな角度から見ていき、後半では高収入を目指すためのキャリアのあり方を考えていきます。

 

日本のエンジニアの平均年収の推移

 

まずは、日本のエンジニアの平均年収を見てみましょう。doda(パーソルキャリア)が2020年に行った調査によると、2020年の日本のエンジニアの平均年収は、452万円でした。

 

2018年は456万円、2019年は457万円でしたから、年収5万円ほどとわずかではありますが下落しています。この程度であれば誤差ともいえますが、ITエンジニアの賃金が上昇していないことは確かです。

 

出典:ITエンジニアの年収はどのくらい?給料アップを目指す方法と考え方|doda

 

一方、全職種合計と比較してみると、ITエンジニアの平均年収は40~50万円程度高いことがわかります。また、全職種合計も2018年から年収が伸びていないため、ITエンジニアだけ賃金が下がったわけではないこともわかります。

 

日本のエンジニアの年収分布

 

次に、エンジニアの年収分布を確認しましょう。こちらのデータも、doda(パーソルキャリア)が2020年に行った調査によるものです。

 

出典:ITエンジニアの年収はどのくらい?給料アップを目指す方法と考え方|doda

 

もっとも多いのは、「年収300万円~400万円未満」で28.4%、次に多いのが、「年収400万円~500万円未満」で23.4%となっています。さらに、「年収500~600万円未満」と「年収300万円未満」のエンジニアが、ほとんど同数であることも注目すべきでしょう。

 

海外では、平均年収が1,000万円を超えることもあるエンジニアですが、日本のITエンジニアの43.1%が年収400万円未満であることがわかります。全職種合計(409万円)を下回るエンジニアは実は少なくなく、日本で近年「エンジニアは稼げない」と囁かれる理由が見え隠れしています。

 

日本のエンジニアの職種別の年収

 

エンジニアとひと口に言っても、さまざまな職種があります。そして、職種によって平均年収が大きく違います。

 

出典:ITエンジニアの年収はどのくらい?給料アップを目指す方法と考え方|doda

 

年収が高い職種

  • プロジェクトマネージャー
  • プリセールスエンジニア
  • ITコンサルタント
  • IT戦略/システム企画
  • 研究開発
  • データサイエンティスト

 

プロジェクト全体をコントロールするプロジェクトマネージャーは、エンジニアとしての豊富な経験が必要なことに加え、メンバーのマネジメント能力やコミュニケーション能力も欠かせません。プリセールスエンジニアも、自身の豊富なシステム開発の経験をベースに営業を行う職種です。

 

また、ITコンサルタントや、IT戦略/システム企画などの職種は、クライアント顧客の業務を理解した上で、経営課題や業務課題を解決に導く、いわゆる「上流工程」にあたる職種です。上流工程での要件定義や開発計画が、その後のプログラミング開発などに大きく影響を及ぼし、プロジェクトの成功を左右します。

 

年収が高い職種をひとつひとつ見ていくと、高い経験値や高度な専門性が求められる職種と、プロジェクトにおいて重責を担う職種が並ぶことがわかります。そしてこれらは、システムインテグレーター企業(Sler)に所属していることの多い職種でもあります。

 

年収が低い職種

  • SE/プログラマ
  • テクニカルサポート
  • 運用/監視/保守
  • デバッグ/テスター
  • ヘルプデスク

 

日本の大規模なシステム開発は、上流工程をシステムインテグレーター企業(Sler)が行い、そこから発注を受けた下請け企業が「下流工程」を担当してシステム開発を進めるスタイルが多数です。そして、それら下請け企業で開発を行うのが、SE(システムエンジニア)やプログラマー、デバッグ/テスターです。

 

また、システムの保守・運用についても、大企業などから丸ごと下請け企業が受けるケースが多くなっています。ここに携わるのは、システムの運用/監視/保守に関わるエンジニアです。これらの職種については、そういった下請け構造により年収が伸びづらい可能性も指摘されています。

 

テクニカルサポートとヘルプデスクは、企業の製品やサービスについての問い合わせを、取引先企業や社内、または一般消費者から受け、電話やメールなどで回答する職種です。エンジニアの入口とも言える職種で門戸は広く開かれています。一方で、専門的な知識をそれほど必要としないことから、年収も相応となります。

 

 

日本のエンジニアの年齢別の平均年収

 

出典:ITエンジニアの年収はどのくらい?給料アップを目指す方法と考え方|doda

 

エンジニアの年齢別の平均年収も見てみましょう。20代のエンジニアの年収の低さが目立ちます。これは、実力があれば若くても高額なギャランティが提示されることの多い海外のエンジニアとの大きな違いです。

 

ただ、20代のエンジニアの年収が安すぎるかどうかは、このデータだけではわからない部分もあります。なぜなら、年収の高いプロジェクトマネージャーやプリセールスなどの職種は、豊富な経験と総合力を必要とすることから、ある程度年齢を重ねてからポジションに就くことが多いためです。

 

ひとつ前の項目で解説した職種別の年収データも合わせて見ることで、より傾向が掴みやすくなります。

 

日本のエンジニアの雇用形態別の年収

 

次に、雇用形態別の年収を見ていきましょう。

 

ITエンジニアの年収(雇用形態別)】

  • 正社員 489万円
  • 派遣社員 約283万円
  • パート・アルバイト 約233万円

 

正社員とそれ以外の雇用形態では、年収に大きな差があります。これは、賞与の有無も大きく関係していると考えられます。

 

これは、同じ仕事でも雇用形態によって給料が違う、といった単純な比較ではありません。大きな責任を伴う職種は、基本的に正社員が就いているものと考えられ、派遣社員やパート・アルバイトが就く職種は、そもそも平均年収が低い職種であると考えられます。

 

ITエンジニアで年収を上げたいと考えるなら、基本的には正社員として働く必要があるといえそうです。

 

※派遣社員とパート・アルバイトは労働日数を244日、1日の労働時間を8時間として計算

出典:求人ボックス給料ナビ

 

エンジニアのキャリアのあり方とは

 

 

ここまで、日本のエンジニアの収入をさまざまな角度から見てきました。では、高収入を目指すためには、キャリアとどのように向き合えばよいのでしょうか。

 

収入の高い職種は決まっている

年収を切り口に俯瞰すると、「エンジニアの年収を考える Vol1:海外と日本の違い」で詳しくみたように、日本と海外で差異が生まれている事実はあるものの、収入の高い職種が確実に存在していることがわかります。それは、プロジェクトマネージャーやITコンサルタントに代表される上流工程の職種や、極めて専門性の高い知識を必要とされる、研究開発職やデータサイエンティストなどの職種です。

 

これらの職種の平均年収は、20代でこそ500万円を切りますが、30代で500万円~600万円台となり、その後も順調にキャリアを重ねていけば、1,000万円プレーヤーも夢ではありません。反対に、経験が浅くても就きやすい職種では、そのままキャリアを重ねても年収は伸び悩んでいるのが現実です。

 

それでも、他の職種の平均からすれば、エンジニアの年収は高い部類です。ただ、より稼げるエンジニアになりたいのであれば、経験を重ね、スキルを身につけ、妥協することなく、より収入の高い職種を目指すことが必要です。

 

将来を見据えたキャリアパスを描く必要がある

既に説明した通り、収入の高い職種は、豊富な経験や深い知識を必要とします。そのため、基本的には、未経験の状態や、経験の浅い20代のうちに務まるものではありません。

 

重要なのは、キャリアパスを描くことです。キャリアパスとは、「職歴(キャリア)」の「道筋(パス)」のことをいいます。自身が目指している職種に就くまでの道筋を逆算して、必要な経験やスキルを計画的に身につけていくことが大切になります。反対に、これができなければ、その職種に就くことは難しいでしょう。

 

たとえば、プロジェクトマネージャーを目指すのであれば、システム開発の実務経験や、その中で培われた進捗管理能力の他に、マネジメント能力やコミュニケーション能力も必要です。これらは何もしなくても身につくという類いのものではないため、研修やセミナー、社外勉強会などへの参加による自己研鑽が必要になるでしょう。

 

プロジェクトマネージャーのようなジェネラリスト職が自身に向いていないと感じているのであれば、データサイエンティストなどのスペシャリスト職を目指す方法とよいでしょう。あくまでプレーヤーとして将来に続くキャリアパスを描けるのは、エンジニアという職業の良いところです。例えば、AIエンジニアは今後さらに重要な人材となっていくと考えられますから、最新の技術を学び、高度な専門知識を身につけることで、高収入を得ることも可能です。

 

まとめ

今回は、日本のエンジニアの年収の現状や、職種と年収の関係、そして、目指す職種に就くためのキャリアの考え方などを見てきました。

 

データを紐解くことで、日本のエンジニアも1,000万円プレーヤーを目指すことは夢ではないこと、そして、日本特有の下請け構造によって、下流工程を担うエンジニアの年収が上がりづらい状況があることなどがわかりました。「Vol1:海外と日本の違い」では、日本のエンジニアの自己研鑽が海外に比べ足りていない点を指摘しましたが、そこには、エンジニアという職業に夢を見づらい日本の環境があるのかもしれません。

 

しかし、そこから脱却するためには、キャリアパスを描き、そのプランに従って自己研鑽をすることはやはり必要です。また、今までシステムインテグレーター企業に頼りがちだった日本企業も、近年は方針を変え、自社でのエンジニアの確保を行うケースが増えています。そうした流れにいつでも乗れるよう、自身の能力に磨きをかけることが、一層重要になりそうです。

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