JavaScriptの実行環境として注目を集める「Node.js」。Webアプリケーション開発からIoTまで幅広い用途に活用され、その人気は日々高まっています。
このコラムでは、Node.jsの基本やメリット、できることや注意点、さらに学習方法までわかりやすく解説します。
Node.jsの仕組みや特徴をわかりやすく解説します。
Node.jsは、JavaScript実行環境のひとつです。
JavaScriptは、動きのあるWebページの作成に使われるプログラミング言語で、Chrome、Safari、Edge、Firefoxなどの「Webブラウザ上」で動作します。一方、PythonやRubyなどの一般的なプログラミング言語は「パソコン上」で動作します。
しかし、Node.jsを使うことで、JavaScriptはパソコン上で動作します。OSの機能にアクセスし、ファイルの読み書きやネットワーク通信も扱えるようになるため、各種アプリケーションの開発が可能になりました。
これまで、サーバーサイドではPHPやPerl、Pythonなどの言語が主流でした。しかし、Node.jsなどの実行環境を使うことで、JavaScriptをサーバーサイドで動作させることが可能になります。
JavaScriptは、主にフロントエンドで使われているプログラミング言語です。そのため、サーバーサイドでも使えるメリットは大きく、業務がシンプルになり、エンジニアの学習コストを下げる効果も見込めます。
こうしたサーバーサイドでのJavaScript実行環境は、「Deno」や「Bun」なども登場していますが、その中で「Node.js」はもっとも利用者が多い代表格といえます。
クライアントサイドとは、ユーザーのWebブラウザ上で実行されるプログラムを指します。クライアントサイドの開発では、Webページの見た目や動作を制御するためにJavaScriptが広く利用されています。
Node.jsの登場により、サーバー上でJavaScriptが実行できるようになったため、クライアントサイドの開発環境としてさらに使いやすくなり、利用者が増えました。
Node.jsを使う3つのメリットを紹介します。
Node.jsは、「ノンブロッキング I/O」方式による非同期処理を行えるため、大量アクセスに強いメリットがあります。
通常、データの入出力が完了するまで処理がブロックされ、その間に他の処理を実行できません。しかしノンブロッキング I/Oでは、データの入出力の最中に他の処理も並行して進められるため、情報の処理がスムーズになります。
結果的にWebページが快適に動くようになるなど、ユーザーの快適性につながることがメリットです。
「C10K問題」とは、アクセスする接続数が1万に達すると、サーバーのリソースが不足してしまう問題です。仕組み上、サーバーの処理能力に余裕が残っていても起きるため、解決するためにはサーバー台数を増やさなければいけなくなります。
しかし、Node.jsは「C10K問題」を解決できます。これは他の処理を並行して進められる「ノンブロッキング I/O」方式を採用しているためで、接続数を問わずに高速な処理が可能です。
JavaScriptは、本来クライアントサイドでのみ利用されていた開発言語です。しかし、Node.jsを利用することで、クライアントサイドとサーバーサイドで使用する開発言語をJavaScriptに統一できます。
開発言語が統一されると、同じエンジニアが両方の開発に携われるようになります。実際には、まったく同じ仕様ではないのですが、基礎がある分習得はスムーズと考えられ、学習コストを下げる効果が見込めます。
Node.jsで実現できる代表的なことを解説します。
Node.jsは、Webアプリケーションの開発環境として活用できます。
Webアプリケーションとは、Webブラウザ上で利用するアプリケーションのことです。ネットバンキングや、予約サイトなどが代表例として挙げられます。
なお、Webアプリケーションの開発にはRubyやPythonなども利用されています。その中でNode.jsは、Webサーバーとしての機能から一貫して受け持つ特徴があります。効率的な処理が可能になり、アクセスが集中した際もスムーズに動作しやすくなります。
Node.jsでは、モバイルアプリケーション、デスクトップアプリケーションの開発も可能です。大量アクセスに強いことから、リアルタイム性が特に重視されるスマホゲームアプリや、コミュニケーションツールの開発などに利用されています。
開発のためのフレームワークとしては、React Native(モバイルアプリケーション)や、Electron(デスクトップアプリケーション)が挙げられます。Electronは特に広く利用されており「VScode」「Discord」「Slack」などの開発に利用されています。
Node.jsは、IoT開発にも向いています。「モノのインターネット」と呼ばれるIoT分野は、さまざまな「モノ」をインターネットにつなぎ、センサーからの情報を扱う機械が多くなっています。
センサーからの情報はイベントとして扱われるのですが、JavaScriptはイベント駆動型プログラムがしやすい特徴があります。さらに、Node.jsにはイベントを取り扱いやすい仕組みが用意されているため、IoTとの相性がよいのです。
こうした特徴から、IoT機器から収集した膨大な量のデータを処理しやすいため、IoT分野の開発にはNode.jsがよく用いられます。
サーバーサイドでのフレームワークが可能なNode.jsを利用して、Webサーバーを構築できます。
Node.jsはアクセスの集中に強い特性があるため、アクセスが集中しても、動作が重くなりづらい快適なページが作りやすい特徴があります。
Node.js導入前に知っておくべき注意点を解説します。
Node.jsは非同期処理が基本となっており、大人数の開発ではエラーやバグの検知が難しくなります。そのため、大規模開発には向いていません。
また、処理速度そのものは遅くなりづらいものの、大規模開発では処理自体が追いつかなくなるケースもあります。
そのため、大規模開発ではNode.jsではなく、JavaScriptの代替言語であるTypeScriptを利用したほうがよいと考えられます。
現状、Node.jsに対応しているサーバーは多くありません。もし、現在利用中のサーバーがNode.jsに対応していない場合、そのままでは導入できません。そのため、別途VPSなどの仮想環境を作る必要があることは注意したい点です。
Node.jsの効果的な学習方法をいくつか紹介します。
書籍を使った学習は、体系的に学ぶのに適しています。また、独学でも信頼性の高い情報を得られることもメリットです。以下の書籍は、Node.jsの初心者におすすめです。
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Node.jsについてまったく知らない方にも理解しやすい内容になっており、基礎知識からフレームワークの利用方法までを学習できます。
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気軽に体験学習を進めたい人向けの書籍です。JavaScriptの基礎を理解している方にとって実践的なスキルを身につけられます。
手軽にNode.jsの学習をスタートするなら、オンラインの学習プラットフォームを使うのもおすすめです。
Node.jsでは、Node.jsのために必要な情報を紹介しています。基本的な開発方法を解説した「Node.js入門」や、実際に簡単なサンプルが動かせるようになる「Node.js ハンズオン」などがあり、実践的なスキルを磨くのに役立ちます。
Qiitaは、エンジニアなどが知識を記録・共有するためのコミュニティサービスです。「Node.js」で検索すると、あらゆる情報が投稿されており、初心者に役立つ内容もあります。「ここがわからない」といったときに、鮮度の高い情報をピンポイントで得やすくなっています。
短期間で効率よく学びたい方には、プログラミングスクールをおすすめします。専門の講師から直接指導を受けられるため、わからない点をすぐに解決でき、挫折もしにくいでしょう。
プログラミングスクールでは、就職や転職サポートも受けられることが多くなっています。Node.jsを使う仕事でキャリアを確立したいなら、スクールの検討も価値があります。
Node.jsは、JavaScriptの可能性を大きく広げる実行環境として、開発シーンに欠かせない存在となっています。サーバーサイドでの高速な処理能力、クライアントサイドとの言語統一によるシームレスな開発、IoTへの適性など、その特徴は多岐にわたります。
一方で、大規模開発における課題や、対応サーバーの制限など、注意すべき点もあります。Node.jsの活用を検討している方は、このコラムで紹介したことを参考に、プロジェクトや目的に合わせて適切に導入を進めてみてはいかがでしょうか。
掲載日:2024年12月10日