2021年2月、ウェルプレイド株式会社と株式会社RIZeSTの合併によって誕生した、日本を代表するeスポーツカンパニーであるウェルプレイド・ライゼスト株式会社。前編に引き続き、同社の取締役部長を務める浅野洋将氏へのインタビューをお送りいたします。
──今年2月のウェルプレイド社とRIZeST社の合併による「ウェルプレイド・ライゼスト」の誕生はeスポーツ界では大きなニュースとして話題を呼びました。改めて経緯などを振り返って頂けますか。
浅野 実は以前の「ウェルプレイド株式会社」と「株式会社RIZeST」はeスポーツイベントの制作という事業において完全なる競合相手だったんです。ただ、なんとなくRIZeSTはPCゲームのFPS系を中心に、僕らウェルプレイドはモバイルゲームが多い。というふんわりとした棲み分けがあって、あまり交わることはありませんでした。
<撮影・志田彩香>
そんなある日、ひょんなことからウェルプレイドの代表である谷田と高尾が、RIZeSTの古澤代表と3人で会食をする機会があったんです。私は同席していた訳ではないのですが、その席でいざ話をしてみると両社の「eスポーツを通じて成し遂げたいこと、目指すもの」への共通点が非常に多いことに気付いたんです。そして「むちゃくちゃ目指している方向一緒だよね」と共感しあったこの会食がきっかけとなり、話し合いを経て合併に至った。というのが大筋ではありますが経緯になりますね。
──合併以前と比較して、変わったなと実感する点はどのような要素でしょうか。
浅野 単純にお互いの持っているノウハウが合わさって、良いとこどりを出来るようになったことです。それぞれのウィークポイントを補い合い、強みを吸収しあえるというかなりポジティブな作用が働いていると感じます。それまであった「棲み分け」のようなイメージもなくなり、相談されやすくなったと感じます。実際に仕事の相談は圧倒的に増えていますし、幅広いジャンルで「一旦相談してみよう」という窓口になれているのかなと思います。
──やはり2社が合わさったことにより幅広いゲームジャンルに理解がある。という頼もしいイメージが生まれているように感じます。
浅野 守備範囲が広がったのは間違いないですね。あと2社に共通していたのが、めちゃくちゃゲーム好きな人ばかりということです。もうゲーム好きしかいないですね(笑)。なので配信上のゲーム画面ひとつとっても、今の試合状況を最もよく見せるために「どこに」「どんな」情報を表示すれば見やすいのかをユーザー目線で深く研究することができています。
カメラを切り替えるタイミングや的確に好プレーを切り取ってハイライトにする技術などのマニアックな部分を、きちんとユーザーが求める形で大会をコントロールできているのはかなりの強みだと思いますし、リピートを貰えている最大の要因かなとも思っています。
──SNSでは社員の皆さんでゲーム大会をされている光景も拝見しました。
浅野 うちには社訓が7つあるのですが、一番目の項目が「ゲームを楽しむ」から始まっているんです。他の項目には少しずつアップデートが加えられているんですが、この一文は創業から変わっておらず、常に「ゲームが楽しいことを伝えられるためには、僕らがゲームを楽しまないと」という意識を持っています。やっぱり自分達が楽しくないと、楽しさを伝えることは出来ないですからね。
オフィスに来た方にも「本当にゲームしてるんですね」とよく言われます。よくオフィスが騒がしくて、何がうるさいんだろうと思ってその一角を覗いて見たら、代表二人が『ストリートファイター』で子供のように悲鳴と歓声をあげながらめちゃくちゃ盛り上がっていることがあり、時には新卒の社員に「クライアントさんがいらしてるので静かにしてください!」と代表が怒られるシーンもあるぐらいです(笑)。とにかく「ゲームを楽しむ」ことを大事にしている会社です。
──それはすごいエピソードですね。
浅野 むしろ「ゲームやらないの?」くらいの空気もあって、この社風に惹かれて入ってくる人もやはりゲーム好きな人ばかりです。それぞれが「ゲームを楽しむ」社風を上手く汲みとって表現しているのが今のウェルプレイド・ライゼストなんですね。SNSにアップされている楽しそうな光景も、本当に楽しいからああなっているんです(笑)。
──聞いているだけでも楽しさが伝わってきますね。
浅野 僕もいくつかの会社を経験してきたんですが、決して小さな規模ではないのにこれほど代表が無邪気に楽しんでいるのは見たことがないですし、僕がこの会社を好きな理由のひとつでもありますね。
実は僕は元々クライアントとしてウェルプレイドへと発注する立場で働いていたんですよ。ただ、営業に来たふたりの代表があまりに目をキラキラさせながら「僕たちはeスポーツをこういう未来に変えて行きます」というビジョンを語っている姿に一瞬で心を奪われて、それまで転職する気も全く無かったのに入社を即断したんです。「僕、御社に入社することに決めましたので」という話を代表にして、実際に1年後くらいにズカズカと入社しました(笑)。
──それはまた違った角度の「すごいエピソード」ですね。
浅野 それを受け入れてくれる代表の器も大きいですよね。
──私もイベント会場で谷田代表にはお会いしたことがあるのですが、ゲームの話題でいつも盛り上がっている姿が印象的でした。
浅野 そんな無邪気さが魅力であると同時に、クライアントの会議に出るとなったら当然ながら本当に真剣に話を聞くし、クライアントとコミュニティとの間に立って言わなければいけない意見はハッキリと言うんです。そのスタンスがクライアントさんから評価されるポイントかもしれないですね。
──今日お聞き出来たお話だけでも、ウェルプレイド・ライゼストさんの雰囲気が伝わってきました。そんな中で浅野さんが事業部長を務めるパートナーソリューション事業部(PS事業部)は非常に幅広い施策を打ち出していますね。
浅野 今年2月の合併のタイミングから意識的に「eスポーツの総合商社」というブランディングを打ち出しているのですが、この「総合商社」であることを実現させるのがPS事業部だと考えています。
選手のマネジメントはこの目的のためのひとつの手段で、「商材」とも言い換えられると考えています。というのも、今のeスポーツ界は大変な過渡期にあって、色んなプレイヤーの参入によって去年や一昨年では考えられなかったニーズや新しいビジネスの機会が生まれているんです。このニーズやチャンスを現実にしていくことができるのが、PS事業部です。
──マネジメント事業については先ほどご説明頂きましたが、PS事業部が手がけるのはそれだけではないということですね。
浅野 既にかなりの商材を持っていて、例えばマネジメント以外ではエージェント業務というものを行っています。これは「大会を開きたいんだけど、スポンサーを連れて来てくれませんか」という相談や、チームオーナーから「うちのチームに協賛してくれるスポンサーさんいませんか」という相談を受けて、彼らに変わってスポンサーを探してくるような仕事が該当します。
──そうした業務が依頼できるものであることも知りませんでした。
浅野 他にも僕らが抱えているインフルエンサーを起用して、番組へ出演するだけでなく配信上でゲームのプロモーションを行うことも出来ます。また、クリーク・アンド・リバー社さんとの協業で「YouTubeの動画を作っているクリエイター向けのサポートサービス」も今年スタートさせました。このようにeスポーツにまつわる無限の可能性を、さまざまな角度でビジネスを形にして提供していくというのが僕らのミッションだと考えています。
──大会制作以外でも、eスポーツに関連することならウェルプレイドライゼストへ相談すれば、というイメージですね。
浅野 秋葉原にある「e-sports SQUARE」という施設の運営も行っているのですが、そこから派生して「新しいeスポーツ施設を作るためのプロジェクトにコンサルティングで入ってくれませんか」というケースもあります。目的に応じて「どういう風にやれば良いのか」と一緒になって考えていくことが出来るので、そういう場合でも声を掛けていただきたいですね。このように多種多様な手段で、eスポーツを大きくしていくことを画策しています。
──「総合商社」というフレーズにも納得のいく多様さです。
浅野 そうした目標を達成していくために僕らが今まさに感じているのは「業界の成長に対して人が追いついて来ていない」ということなんです。
──今後は「新たな人材」が求められるということでしょうか。
浅野 弊社が大事にしているゲームへの理解やeスポーツに対するビジョンへの共感は当然必要なんですが、それに加えてビジネス的なリテラシーが高い方を非常に求めています。ゲームとは全く関係なくても「なにか自分でプロジェクトを成功させた」「大きな企業と商材を作って販売した実績がある」という、0から1に生み出していける人材が欲しいんです。
──「eスポーツに携わっていきたい」という考えを持つ方にとっては参考になるお話ですね。
浅野 eスポーツ業界は「大会制作以外で新しいビジネスを生み出して、いかに世に貢献して行けるか」が問われるフェーズになっています。ウェルプレイド・ライゼストという会社を見たときに、外からは「eスポーツ専門で大会制作をしている会社」と受け取られがちですが、僕はそれと対をなす存在のPS事業部が今後さらに重要になってくると考えています。
──本日はありがとうございました!
浅野 ありがとうございました!