スポーツ・音楽・ゲーム&IT…異業種プレイヤーがコンテンツ産業を語る

【山本雅俊・村井研次郎(cali≠gari)】コンテンツ産業特別座談会

#インタビュー

村井「うわぁ、懐かしいですね!15年くらい前かな?」

 

佐藤「こちらはSEX MACHINEGUNS時代の(村井)研次郎さんのサイン、こちらは山本さんに紹介いただいたプロレスラーのサインですね」

 

 

 

 

 

2021年7月某日、池袋にあるエクストリーム本社オフィスの多目的スペース「Co-CORE」で談笑する3名。

集まったのはプロレス・格闘技リングアナウンサー、元・JWP女子プロレス代表の山本雅俊氏、ビジュアル系ロックバンドcali≠gariの村井研次郎氏、そしてエクストリーム代表取締役社長CEO 佐藤昌平の3名です。

全く違う業界の3名ですが、実は2000年代半ばから交友が続く関係です。山本氏と村井氏のチップチューンユニット「PSG」のCDがエクストリーム初の一般向け商品として発売されるなど、3名の交友関係はエクストリームの歴史とも深く関わっています。

 

3名は2000年代半ばに「音楽やゲームは、いずれ無料で楽しめるようになる」と現代のコンテンツ産業を予見した逸話もあるなど、それぞれの分野の最前線で活動してきました。

今回は「IT技術がもたらしたコンテンツ産業の変化」をテーマに、3名それぞれの立場から見たコンテンツ産業の過去、そして未来を語っていただきました。

 

 

・参加者紹介

山本雅俊(写真右):プロレス・格闘技リングアナウンサー、元・JWP女子プロレス代表。エクストリーム「お客様感謝祭2020」では会場MCを担当いただきました。

公式ブログ

公式Twitterアカウント

 

村井研次郎(写真左):ベーシスト。SEX MACHINEGUNSやソロ活動を経て、現在はビジュアル系ロックバンドcali≠gariのベースを担当。数々のアーティストにベーシストとして参加し、最新作はプログレッシブアイドルユニット「XOXO EXTREME(キスアンドハグ・エクストリーム:通称キスエク)」最新アルバム「Le carnaval des animaux -動物学的大幻想曲-」収録の「Ride a Tiger」には作曲家として参加している。

村井研次郎公式Twitterアカウント

cali≠gari公式サイト

XOXO EXTREME オフィシャルサイト

XOXO EXTREME 商品情報

 

「ゲームや音楽は、将来無料になる」という予測

 

 

 

– まずは3名が出会った経緯についてお聞かせいただけますか。

 

村井「確か2006年ごろ、大阪の某有名DJ主催のパーティーで山本さんとお会いしたのがきっかけです。私は大のプロレスファンなので、思わず自分から声をかけました。『僕、女子プロ大好きなんです!SEX MACHINEGUNSの村井研次郎と申します!』と、もう純粋なプロレスファンとして(笑)」

 

山本「懐かしいですね。私はすでに佐藤さんからお仕事のご相談をいただいていたので、音楽好き、ロック好きである佐藤さんに(村井)研次郎を紹介したのが出会いの経緯ですね」

 

佐藤「それからもう、15年以上の付き合いになりますね。研次郎さんにはSEX MACHINEGUNSのライブにもご招待いただきました」

 

山本「失礼ながら私はSEX MACHINEGUNSの存在を全く知らなくて。ライブに招待されたら、超満員のお客様がヘッドバンギングしていて驚きましたよ(笑)」

 

– 皆さまはそれぞれスポーツ、音楽、IT・ゲームのプロフェッショナルですが、2000年代半ばに「音楽やゲームは将来無料になるんじゃないか」と予測されていたとお聞きしました。

 

 

 

佐藤「YouTubeやMy Spaceが海外で話題になり始め、PCを端末としたオンラインゲームが徐々に徐々に人気が出始めていた頃です。つまり、通信技術やハードの進歩によって、あらゆるコンテンツが身近になった時期でした。このまま技術が進歩していけば『基本のサービス』の形式が定着していくのでは……という話をした記憶があります」

 

村井「当時『サブスク』なんて言葉を出していたら本当に預言者になっていたかもしれませんが(笑)佐藤社長は似たようなことを仰っていましたよね」

 

佐藤「研次郎さんは音楽もタダで触れられるようになるって話して。お二人はそのことをずっと覚えていただいていて、以前から飲みに行くと『我々は天才だなあ』という話をしていましたね(笑)近頃はコロナの影響ですっかり飲みにも行けていませんが」

 

– 特に音楽業界では良くも悪くも、技術の進歩による影響が大きかったのではないでしょうか。

 

村井「YouTubeが日本で普及し始めた頃は複雑な気持ちでしたね。でも、それも最初だけですよ。むしろ宣伝になってありがたいと思うようになりました」

 

– スポーツ業界ではいかがでしょうか。

 

佐藤「プロレス業界で言えば、ブシロードさんが新日本プロレスを大ヒットさせましたよね」

 

山本「時代に合わせて大きく変えていきましたね。スター選手を育成してグッズを充実させるなど、ある種のアイドル的なコンテンツを目指して大成功しました。SNSの普及など、メディア環境の変化とも相性が良かったのかもしれません。プロレスラーが文字通り『スター』だった昔のプロレス像を懐かしむ方も多いようですが、新しい世代のファンを一気に獲得したと思います」

 

佐藤「ゲームも同じで、ヘビーユーザーしかいない環境だと、新規ファンが生まれにくいんですよねコンテンツを楽しむハードルが下がった分、“ライトな層”をいかに獲得するかが重要になっていった印象があります」

 

コンテンツの価値は不変だ

 

 

 

– 音楽・スポーツ・ゲーム&ITの各業界で、技術の進歩が多くの影響を与えました。今後はどのような変化を迎えるでしょうか。

 

佐藤「技術はあくまでツールですよね。いろいろな技術はますます進化していくと思いますが、それを使って何をするかが重要だと思います」

 

村井「本当にその通りで、目の前の変化をどうポジティブに変えていくかですよね。個人的には多くの良い変化も感じています。例えばレコーディングも、オンライン化したおかげで外国のミュージシャンにも気軽に依頼できるようになりました。昔は大きな録音テープを飛行機で運ぶ必要がありましたが、今はデータですぐにやり取りできますからね。外国のミュージシャンが仕事を求めてアプローチしてくることもあるそうですよ」

 

– 現在は、コロナ禍で配信ライブなども盛んに行われています。村井さんはご自身のバンドで積極的に実施されていますが、反響はいかがですか。

 

村井「大変ではありますが、ポジティブな反応が多くて嬉しいですね。北海道など遠方のファンはもちろん、海外のファンにも喜ばれています。配信や決済関連のサービスもどんどん便利になっていますし、コロナ禍が終わっても続けていきたいと思います」

– cali≠gariの配信ライブではカメラ位置ごとに値段設定を工夫するなど、エンターテイメント性に溢れる仕掛けがメディアにも取り上げられました。

 

 

村井「客席後方の定点視点を“自称関係者席”とネーミングしたり(笑)とにかくお客様に楽しんでいただきたいですからね。さらに言えば『自分たちがこの大変な状況を面白がるくらいじゃないと!』という想いもありましたので、予想以上にバズって良かったです(笑)」

 

佐藤「プロレスも無観客試合の配信を行なっていますよね?そちらの反響はいかがですか」

 

山本「そこが悩ましいところでして……コロナ禍以前の地方営業では、プロレスをよく知らないおじいちゃんやおばあちゃんも楽しませることで、エンターテイメントとしての技術を磨いていきました。ところが、現状の配信試合の視聴者は元々熱狂的なプロレスファンが中心なんです。ライト層との接点が失われたことで、プロレスの一側面である“大衆芸能”としての進化が止まってしまうのではと危惧しています」

 

佐藤「技術が進歩したことで新たな問題が発生するジレンマですね。ゲーム業界でもインターネットが発達したおかげで海外の人気ゲームタイトルが日本に進出し、日本のメーカーが海外の大資本と戦わなくてはいけなくなりました」

 

村井「難しい問題ですよね。とはいえ、ファンがコンテンツに求める本質的な価値そのものは変わらないと思います。むしろコロナ禍で“リアルなワクワク感”への欲求が高まっていると感じますよ」

 

佐藤「コンテンツの核となる部分は、やっぱりリアルな体験だと思うんです。音楽だったらライブ会場で演奏を浴びる高揚感、プロレスだったら人と人がぶつかり合う迫力、といったように」

 

村井「私もそう思います。今は大変な状況ですが、絶対に本質的な部分は変わらないですよ」

 

山本「配信試合でもプロレスラーが流す血と汗は本物ですからね」

 

技術が進化しても「人」の魅力は変わらない

 

 

これからのエンターテイメントやコンテンツ産業はどうなると思われますか。

 

村井「スポーツもそうだと思いますけど、最終的には“人”だと思います。『こんなすごい技を決めるプロレスラーってどんな人なんだろう』『こんなすごい曲を書くなんて何者なんだろう』と、その人のことが気になるじゃないですか。技術が進化すればするほど、かえって“人”が注目されるようになるのではないでしょうか」

 

山本「佐藤さんも研次郎もそうだと思いますけど、様々な人生経験がコンテンツに反映されているわけですからね」

 

村井「配信ライブひとつとっても人間性って出ると思うんです。僕たちはweb上のコンテンツでも人肌感と言いますか、背後にいる作り手の熱量を感じてもらえるように意識しています」

 

佐藤「配信ライブなどコロナ禍に対応しなければいけないのと同じく、これからもっと新たなニーズが生まれると思うので、とにかく新しい環境に対応する“適応力”が求められると思います」

 

これからのコンテンツ産業とは

 

 

エクストリームは様々なスキルを持つデジタル人材が所属する「デジタルクリエイタープロダクション」です。今後、エクストリームやIT技術に期待することはありますか。

 

山本「テクノロジーとエンターテイメントを掛け合わせた何かが生まれると面白いですよね」

 

村井「エンターテイメントをオンライン上で完結するのではなく、リアルでも体験できる“場”の創出に期待したいです。佐藤社長、ライブや配信で様々なエンターテイメントを提供できる、プラットフォームのような場を作っていただけませんか?」

 

佐藤「リアルなプラットフォーム事業ですか……それ、いいですね!」

 

山本「面白いですね!それなら私は地下プロレス関係のイベントを開催したい(笑)」

 

佐藤「ぜひともやってみたいです!もうちょっと詳しくお話を……あ、ここから先は記事にしないでくださいね(笑)」

 

 

山本様、村井様、ありがとうございました。

 

思わぬ新規事業のアイデア(?)も飛び出した座談会。今後もエクストリームはエンターテイメントの知見を活かしたデジタルクリエイティブで、皆さまに「ワクワクするような未来」を届けられるよう、邁進してまいります。

 

 

 

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