アマゾンやフェイスブックなど、今日の世界を席巻するグローバルIT企業はいずれも未知の市場への挑戦によって成功を収めました。その根底には失敗を恐れないベンチャースピリッツがあります。前半でご紹介したとおりに、AIやIoT技術の進展により、それまでデジタルの世界で完結していた技術やサービスが、姿を変えて従来と異なる業界へと進出しています。この状況下で、ベンチャー企業への期待が高まってきています。国内で支持を得たアプリがグローバル市場に進出する事例も増えていることからも、ベンチャースピリッツを持ったデジタルクリエイターが、世界に大きな影響を与える日はそう遠くはないでしょう。
AI/IoTに代表される、IT産業における次世代プラットフォーム、通称「第3の市場」。経済産業省は、2020年代後半には「第3の市場」がITサービスの過半数に至ると予測しています。これは既存の産業分野も、AI/IoTといった技術革新の影響を受けざるを得ない未来を意味します。例えば2016年に総務省が行った調査によると、人工知能の活用が望ましい分野として医療や交通、セキュリティ対策や製造管理等が上位に並びました。いずれも家電や通信業界と比較すれば、現在ではIT活用のイメージに乏しい分野です。だからこそIT化による効率化が求められており、市場としても有望と言えるでしょう。このような市場の活性化に伴い、それまで先陣を切っていたベンチャー企業のみならず、大手企業による参入が目立ち始めました。
マイクロソフトは2017年7月に「Microsoft Research AI」を設立しました。社会貢献までを見据えた、オープンな研究機関を目指すとコメントしています。国内企業では、トヨタ自動車やドワンゴ社が人工知能に関する研究機関を設立するなど、ベンチャー企業ではない資本が次々に参入しています。一方で、非IT系企業にとって無視できない参入障壁があります。それは技術力以前に、企業の体質に見ることができます。
確かに、ベンチャー企業に比べて圧倒的なリソースを持つ大手資本は、様々な面で有利と言えます。自社の資金力や人材も豊富です。ただ多くの企業で、社内企画に対して非常に慎重な意思決定プロセスを踏む必要があるという、構造的な問題点が存在しています。硬直化した社内行政は良質な企画のスピード感を奪い、時には頓挫させていまいます。スティーブ・ジョブズがアップル社を立ち上げたきっかけは、個人用コンピューターの企画を上司に却下されたから…という逸話は有名です。
一方でベンチャー企業はフットワークの軽さが魅力ですが、資金や人材といったリソースに乏しいのが難点。短期的な利益を追求するために、長期的な目線で開発を行いにくい傾向も見られます。しかし、前述の通りIT市場が多分野に拡散しつつあるのも事実。つまり、ベンチャー的なフットワークと、企業としての多様な人材や事業継続力をもち合わせる企業こそが求められていると考えることができます。
アマゾンやフェイスブックなど、今日の世界を席巻するグローバルIT企業はいずれも未知の市場への挑戦によって成功を収めました。その根底には失敗を恐れないベンチャースピリッツがあります。前半でご紹介したとおりに、AIやIoT技術の進展により、それまでデジタルの世界で完結していた技術やサービスが、姿を変えて従来と異なる業界へと進出しています。この状況下で、ベンチャー企業への期待が高まってきています。国内で支持を得たアプリがグローバル市場に進出する事例も増えていることからも、ベンチャースピリッツを持ったデジタルクリエイターが、世界に大きな影響を与える日はそう遠くはないでしょう。