増加するeスポーツ教育

未来のために、若きプレイヤーは何を学ぶべきなのか?

#eスポーツ

日に日に人気を増す、ゲームによる対戦競技「eスポーツ」。このeスポーツを専攻科目として扱う学校が増えていることを、皆さんはご存知でしょうか。

 

一昔前は「学校でゲームを勉強する」と言えばゲーム制作に必要なプログラミングについて、というイメージも強かったかも知れません。しかし、昨今はそうした電子系の専門学校だけでなくエンターテイメント業界をターゲットとした学校などにも科目として広がっています。

 

対象年代も中学卒業後から入学可能な高等専修学校に、高校卒業後を想定した専門学校。そして年齢を問わず社会人と両立しながら通う事のできる「スクール形式」まで幅広く展開され始めています。

昨年、「専門学校におけるeスポーツ教育」に関するインタビュー記事を掲載しましたが、今回改めて、競技シーンを志す若年層プレイヤーにとって新たな進路の選択肢になってきている「eスポーツの学校」を考えます。

 

ゲームを上達すること以外にも講義内容は及ぶ

 

eスポーツの授業では、もちろんゲームを上達するための技術を学ぶことができます。多くの学校がカリキュラム内にプロゲーマーから直接の指導を受けられる授業を盛り込んでおり、最も力を入れているポイントと言えるでしょう。

 

一般のプレイヤーが競技シーンへと進出していくためには、やはり大会で結果を出すことが一番の近道です。近年は学生大会向けのも増加しており、将来性豊かなプレイヤーの発掘が進んでいます。

 

殆どの学生大会は年齢制限などはあっても、専門学校に在籍していないと出場できない訳ではありません。ただ、eスポーツ専門のコースや部活動のない学校に通っているプレイヤーにとっては「保護者や教師の許可を得て、学校内でチームのメンバーを集める」だけでも相当なハードルです。

 

志を同じくするメンバーが入学し、共にカリキュラムの一環として練習を重ねて出場できる環境の方が成績を残しやすいことは間違いないでしょう。

 

ただ、授業は決してゲームの練習だけではありません。高校生年代を対象としている学校では数学や社会科のような普通科と変わらない科目もあり、特殊なものでは配信技術やイベント運営の知識、そしてコミュニケーション能力を磨くための授業も存在します。

 

 

多彩なスキルを身に着ければプロ選手して活動の幅が広がることはもちろんのこと、選手以外にもイベントやチームの運営という形でeスポーツに携わる選択肢を増やせます。

 

また、eスポーツに関する研究では「チーム内での会話がポジティブな内容かネガティブな内容かによって、パフォーマンスが大きく変化する」という報告もあり、円滑なコミュニケーションは、ゲームの上達にも良い影響を与えると考えられています。

 

事実、近年はプロeスポーツ選手の募集・選考要項としてコミュニケーション能力は必須の項目となっており、プロゲーマーとしても重要な素質のひとつになってきていることは間違いありません。今後も広くカリキュラムに取り入れられていくことでしょう。

 

生徒やタイトルの個性をどこまで尊重できるか

 

授業としてeスポーツを扱う際には「どのタイトルを使用するか」が重要かつ難しいポイントになります。

 

学生大会の種目となることが多いタイトルとしては、公式に学生支援プログラムが実施されている『League of Legends』や、バトルロワイヤル系のシューティングゲームとして若年層に高い人気を誇る『フォートナイト』の名前が挙げられます。

 

どちらもトッププロによる競技シーンは国際的に人気があり、チームで参加する競技のために前述した「学校に通う事のメリット」も大きいので殆どの学校で取り入れられています。設備としてハイスペックなPCを整えている学校に通えば、自宅の回線状況やPCスペックに関わらず快適な環境で練習をすることが出来るのも、生徒にとっては大きな魅力です。

 

ただ、eスポーツとして人気を集めているタイトルは年々増加しており、これからも移り変わっていくことが予想されますが、常に取り扱うタイトルを変えていくというのは難しいと思われます。

 

例えばスマートフォン向けのタイトルは中高生の年代にとっては手軽にプレイ出来て人気がありますが、授業やコースで採用されているという事例あまり聞かれません。これは新しいタイトルでは実戦機会や指導者の確保が難しく、環境的にもまた異なる設備が必要になるからだと考えられます。

 

 

そうした課題と向き合うに、これはあくまでひとつのアイデアですが、高校の部活動が参考になるのではないでしょうか。

 

「この学校は野球部が強い」「この地域はサッカーが盛ん」と言った特色があると、生徒は自分の希望に沿った環境を選びやすく、学校としても志願者を集めやすくなります。eスポーツもプレイするタイトルやジャンルごとに特色を出していくことで、双方にとってメリットのある発展が望めるかも知れません。

 

業界の専門性と競技レベルの底上げに繋がっていく

 

eスポーツを扱う学校の歴史はまだまだ始まったばかりで、今後どのように発展していくのかは未知数です。ただ、現時点でも「専門学校でeスポーツを学ぶ」というのは受講する生徒にとって他の学校では絶対に得られない特別な経験になっているはずです。

 

今では小学生の「将来なりたい職業」にもプロゲーマーの名前が挙がり、これからは専門の勉強を積んだプレイヤーが数多くのタイトルで活躍していくことが予想されます。こうして若いうちから本格的に競技へ取り組める環境が整って行けば、日本全体でのeスポーツの競技レベルの向上も見込まれるのではないでしょうか。

 

 

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