~エンジニアをとりまく市場環境や課題について考える~

AfterコロナにおけるIT業界の未来とは?

#トレンド技術ブログ

Withコロナの時代に突入したことによるエンジニアへの影響について、異なる視点からご紹介してきましたが、第四回目はその総括として、IT業界視点において、起きた変化や今後の展望などを考えてみたいと思います。

 

■コロナ禍による市場への影響

製造業や小売業など他業界からの案件を受託し、事業として成り立たせるケースが多いIT業界ですが、新型コロナウイルスの影響で、多くの企業がコスト削減を考えたことにより、発注案件数は減少傾向にあります。

特に開発系の案件の減少幅が大きいようです。開発系は規模が大きく予算も膨大になりがちなため、どちらかと言うと将来への投資的要素が大きく、そのため着手を見送る、ないしは先送りにする決断が多いことが考えられます。特にオンプレミス中心のプロジェクトの延期や中止が顕著のようです。

しかし、IDC Japanの「新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した国内のICT市場予測」によると、2020年の市場は前年比4.3%減となっており、緊急事態宣言下において一時的に落ち込んだことは間違いありませんが、日本経済全体のGDPマイナスと比較すると、影響が小さな業界でもあるとも言えます。

 

 

■IT業界への転職希望者の増加

そのような状況において、IT業界に対する需要に変化はあるのでしょうか。20代専門転職サイト「Re就活」を運営する学情が2020年4月16日に発表した意識調査によると、「IT業界」への転職希望者が急増しているようです。転職希望職種の項目においても、ITエンジニア系が増えています。

テレワークに対応しやすい業界/職種であると同時に、今後の成長が期待されることが要因と考えられます。

 

■コロナ禍以前から存在するIT業界の人材不足

転職希望先として注目が集まるIT業界ですが、かねてより人材が不足していると言われてきました。実際に、2019年3月に経済産業省が公開した「IT人材需給に関する調査」でもIT人材の需要と供給に差(ギャップ)が生じていることやIT需要構造の変化によってIT人材が不足していることが報告されています。さらにこの調査では、年々この差は広がり、2018年には22万人だった不足人数が2030年には約45万人になるとも推測されています。

 

これはIT業界・IT市場が急速に成長していることがひとつの要因です。例えば、東京オリンピックに向けた観光需要の高まりに対する期待の影響で「人々の移動を根本から変えるサービス」としてMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)が注目されています。関連アプリ開発にエンジニアが求められ、観光領域で活躍するデータサイエンティストの募集も増加しました。その他にも、AI技術の加熱、IoT時代の到来など、業界は大きな変化の時を迎えていました。

このように、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する意識や需要がすでに高まっていたところに、コロナ禍によってパラダイムシフトを余儀なくされたことで、さらにDXの流れが加速しました。これは、デジタル化が遅れていた日本にとっては半ば荒療治的な進化であり、他のIT先進国に追いつくための好機である反面、IT業界の人材不足により拍車がかかることになるはずです。

DXのメリットを理解しながら、実行まで至らなかった企業も、コロナ禍によって消費者の購買行動、そしてビジネス全体がオンライン化されることを受け、ITへの投資を増やすと考えられます。

 

人材不足というのはもちろん単純に人数が足りていない、という側面もありますが、IT人材の需要と供給の差(ギャップ)には「求めている要件に当てはまる人材が足りない」という事情もあります。

少子高齢化の影響により、退職人数より新卒での入社人数が少なくなっている現象は他業界と同様ですが、単に人数が少なくなるだけではありません。IT業界は変化が速く、常に新しい情報に触れ、知識とスキルを身につけていく必要があります。しかし、高齢のエンジニアであるほど、そのアップデートは鈍くなってしまいがちです。このような事もあり「要件に合う人材」が減少していくと考えられます。

 

 

■人材不足の解決方法

では、Afterコロナでも加速していくであろう人材不足はどのような解決方法があるのでしょうか。

 

2020年度から、小学校におけるプログラミング教育がはじまりました。プログラミングの学習を通して論理的な思考を身につけることを目的としていますので、「直接的なエンジニア人材の育成」ということではありませんが、IT業界の人材不足解消に向けた大きな流れになることは間違いなさそうです。

 

しかし今の小学生が働き始めるのは少なくてもあと15年後ということを考えると、やはり直近〜数年後の解決方法は、海外のエンジニアの積極的な登用ということになります。IT教育に力を入れてきたベトナムやエンジニアの人数が世界最大数のインドなど、アジアを中心としつつ、ITサービス輸出国としての飛躍が目覚ましいヨーロッパも、注目すべき対象です。最近では、海外のエンジニアと国内企業をマッチングするサービスも生まれています。コロナ禍によるリモートワークの普及で、チームが遠隔でプロジェクトにあたることのハードルはぐっと下がり、距離に意味が無くなった、ということを考えるとこの流れはより加速していくと思われます。

 

■今後のIT業界でエンジニアに求められるものとは

売り手市場と言われるIT業界だからと言って、エンジニアであれば誰でも引き合いが強い、ということにはなりません。リモートワークへの移行により個々のエンジニアのパフォーマンスが可視化される傾向もあり、より優秀な作業者をアサインしたいという流れの中、スキルを持ったエンジニアへ需要が集中するような動きも見られます。

今後、海外の優秀なエンジニア登用がより一般化すれば、競争は激しくなっていくでしょう。日本全体でのDXが加速する流れが来るとは言え、全てのエンジニア、そしてエンジニアを目指す人にとって、決して楽観視できるような状況ではありません。

・海外エンジニアとの連携、統括ができるエンジニア

・十分な経験とスキルを持ち、設計やプロマネのような上流工程も行えるエンジニア

・サーバーエンジニア、ネットワークエンジニアのようなセキュリティに強いインフラエンジニア

・開発を1から手がけられるフルスタックエンジニア

・「プログラミングスキル×経理会計」「障害対応×ドキュメンテーションスキル」など、スキルの組み合わせによる柔軟な対応力を持ったエンジニア

・「マーケティング」の手法を理解しているエンジニア

など、個性的な強みのある人材がより求められることになるでしょう。

 

 

■業界として残る課題

国内外に関わらず、優秀なリソースを効果的に集約して開発する、という流れになると、どうしても「今のリソースの最適化」に目が行き、企業としての教育の視点は薄れていきます。成長が、個々のエンジニアの個人努力に寄りかかってしまう、という状態は、業界的な発展にけっして良い影響は及ぼしません。新卒採用偏重と年功序列が崩れた際に生じる「誰が教育するのか」問題はコロナと同じくらい、私たちが乗り越えなければならない大きな課題です。大きな流れとしてはプログラミング教育が進みつつありますが、それでも基礎以上のスキルの習得をどのような全体構造の中で達成していくのか、混沌としながらも急速に進む時代のなかで考えていかないといけない問題です。

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