~中断期間を準備期間に~

進む「地方とeスポーツ」の環境整備

#eスポーツ

春から続く世界的な新型コロナウイルスの流行。日本でもその影響は大きく、緊急事態宣言に伴う大規模な外出自粛期間を乗り越えてなお、完全な収束はまだ遠いと感じずにはいられません。

 

このような情勢下でもeスポーツは対面せずにオンラインで様々な施策が可能であると、大きな注目を集めました。ゲームを用いたチャリティーイベントに業界の枠組みをこえてスポーツ界や芸能界からも著名人が参加するなど、工夫を凝らしたイベントによって「eスポーツの魅力や可能性」が広く示されたとも言えるでしょう。

 

しかし、リモートワークの推進やソーシャルディスタンスの維持など感染症対策を取り入れた新たな生活様式の波はeスポーツの世界にも同様に押し寄せています。

 

競技シーンの中心となるオフラインで開催される大型大会は予定の変更を余儀なくされ、オンラインでの開催が主流に。こうした形式の変更は実際にプレイする選手だけでなく、演出やプロモーションを作り直す必要に迫られた運営にも大きな影響を与えています。

 

ただ、このような制約の多い環境下でもeスポーツ界に目立つ動きがあります。それは、新たな「eスポーツ向け施設」の増加です。

 

独自色が打ち出されるeスポーツ施設

eスポーツ向け施設についてはこれまでに幾つかの事例を取材・紹介して参りました。

 

大阪のエキスポシティ内にオープンした「REDEE」は競技シーンの会場にもなるアリーナを保有する大型施設ですが、ゲーム実況や対戦と言ったeスポーツ体験に加えてプログラミング教室も併設しており、教育との融合がひとつのテーマになっています。

 

対して、神戸で7月にオープンしたばかりの「ISR e-Sports」のターゲットはシニア層。ゲームの競技的な側面ではなくコミュニケーションツールとしての魅力に着目し、eスポーツを共通の話題として定年後の社会参加を促すことが大きな目的になっている施設になっています。

 

都心部では8月11日、東京・秋葉原に「eXeField Akiba」という新施設が誕生しましたが、こちらを手がけるのは株式会社NTTe-Sports。最先端のICT設備が揃っており、オンラインイベントから技術ショールームとしての利用まで、幅広い用途に対応しています。

 

こうした事例を見ても分かるように、eスポーツ向け施設の多くは単純に利用者が対戦ゲームをプレイ出来るだけの施設ではなく独自の特色を持っています。大会やイベントが実施可能な機能を備えることで施設として利用されやすいことは勿論、プラスアルファの要素によって幅広い層にeスポーツを体験してもらう機会が増えることが期待されます。

 

 

各地で動き始めるゲーミングチーム

そして、こうした施設から環境整備を進める流れが首都圏に限らないことも大きなポイントです。

 

7月には富山県の高岡市で、高スペックのPCを始めとする多様なデバイスを用いた体験が可能な施設「Takaoka ePark」の一般開放がスタート。宮城県でも、8月1日に県内初のeスポーツ施設「BASARA」がグランドオープンしました。

 

どちらの施設も競技タイトルに対応した高スペックのPCやデバイスを利用してのeスポーツ体験が可能で、コミュニティ大会が実施されるなど同県のeスポーツシーンを牽引するエリアとして成長が見込まれます。

 

注目すべき共通点は、両施設ともに県内発のeスポーツチームの活動拠点に位置づけられていることです。富山県は「TSURUGI TOYAMA」というチームが、宮城県は施設名と同じ「BASARA GAMING」というチームが主体となっており、前述のコミュニティ大会をリードするなどeスポーツを通じて地域の活性化に取り組んでいます。

 

プロライセンスの保有や競技シーンへの参戦チームに限定しなければ、こうした地域に根差したゲーミングチームも徐々に増加傾向にあると言えるでしょう。競技シーンが制限ある展開を余儀なくされる新型コロナウイルスの影響下であってもそれぞれのアプローチ方法を見つけ、オンライン上で全国から参加可能な大会を主催・配信するなどして活動しています。

 

2019年の国体でeスポーツが文化プログラムとして採用されたことや、学生向けの全国的なeスポーツ大会が実施されるようになったことも、各都道府県でeスポーツが取り組まれるようになった大きなターニングポイントになりました。

 

より小さな単位でeスポーツを一般的に

これまではプロゲーマーにとって、大会やイベントなど活動の場がどうしても人口の多い首都圏へ一極集中する傾向がありました。しかし、各地域に「イベントの運営を担える団体」と「イベントの実施が可能な会場」が整えば、独自にイベントを開催したり、大型大会に誘致することも可能になります。

 

 

そうした意味ではゲーミングチームが主体となってeスポーツ施設を運営するというのは、ゲームを通じて地方を活性化させるという目的の上で非常に理にかなった動きと言えるでしょう。

 

また、eスポーツを体験可能な施設が増えることは熱心なeスポーツファンの人にとって便利になることはもちろん、むしろ現時点では「ゲームやeスポーツに興味はあっても中々触れる機会のない」人達へのアプローチという点でも効果が期待されます。

 

eスポーツ先進国とされる韓国では、eスポーツカフェなどで競技タイトルに取り組むことが学生時代から一般的となっており、プロゲーマーという職業も日本におけるプロスポーツ選手と同等の地位を築きつつあります。この環境こそが幅広いタイトルで圧倒的な実績を残せる強さに繋がっているという見方もあり、今後の国内eスポーツシーンの成長のためにも「地盤固め」は欠かせない要素と考えられます。

 

改めて、新型コロナウイルスはeスポーツ界にとっても大きな影響を与え、様々な競技シーンが一時的に中断を余儀なくされました。それでもeスポーツを取り巻く環境は絶えず発展を続けており、こうして各地域で新たな施設が生まれています。

 

この中断期間によって整備された環境が将来的には大きな糧となったと言えるためにも、今後のeスポーツは幅広い地域と世代へ普及していくことが、ひとつの大きな目標といえるのではないでしょうか。

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