ゲームを通じて「社会参加」と「共生社会」を

神戸に誕生した日本初の“シニア専用”eスポーツ施設「ISR e-Sports」

#eスポーツ

ゲームによる対戦競技「eスポーツ」は若者に人気のコンテンツ。というイメージはすっかり定着しつつあります。

 

実際にeスポーツのファン層としては10代から20代が中心とされており、企業が「若年層へのアプローチ」を狙って業界に参入するケースもあります。しかし、そんな中で7月に神戸市でオープンしたISR e-Sportsという施設が話題を呼んでいます。

 

 

というのも、このISR e-Sportsは60歳以上限定、つまりはシニア専用のeスポーツ施設であり、施設内では利用者が自由に様々なeスポーツタイトルがプレイ可能とのこと。

 

シニア層にターゲットを絞ったこれまでにないeスポーツ施設はどのような経緯で誕生したのか。その詳しい狙いや反響について、ISR e-Sports代表社員の梨本浩士(なしもと こうじ)さんに電話インタビューでお話を伺いました。

 

 

──「シニア専用」eスポーツ施設というのは非常に新しい発想だと感じました。どのような経緯で、このような取り組みに至ったのでしょうか。

 

梨本浩士氏(以下、梨本):今の日本社会は60歳や65歳で迎える“定年”が大きな分岐点になっていると感じています。社会における人間関係では会社での上司部下関係や得意先との交友関係が中心になっていることが多く、退職に伴い会社という媒介がなくなることで高齢者に発生する「社会的孤立」が問題になっています。

 

──そこにeスポーツという競技がどう関わってくるのでしょうか。

 

梨本:孤立という問題を考えたとき、定年後も社会参加する意識が芽生えることが重要ですし、その意識を生み出す場所や機会が重要となります。そうした背景からシニア世代に向けた新しいコミュニケーション法として着目したのが、eスポーツ。つまりゲームという手段です。

 

──ゲームをプレイすることがコミュニケーションのキッカケになると。

 

梨本:そうですね。ゲームであればオンライン上でのコミュニケーションも当たり前ですし、それが難しくても当施設の会員同士でゲームに関するコミュニケーションが出来れば、という狙いです。

 

──そこからeスポーツという発想に繋がるということは、梨本さんご自身はかなりゲームをプレイされる方なのでしょうか?

 

梨本:いえ、実は私はそこまででもないんです。もちろん人並みにゲームは好きですし、学生時代にはゲームセンターに通っていたこともありました。ただ、決してゲームが上手い方ではなかったにも関わらず凄く楽しめたので、そこがゲームの魅力だと感じています。

 

──決してコアゲーマーではないからこそ、ライトユーザーにも受け入れられる面白さを感じられているという訳ですね。

 

梨本:そうなんです。例え下手であってもミスが笑いになることもありますし、上手いプレイが出れば盛り上がる。上手い人でも下手な人でも、足が悪くても耳が遠くても、誰もが平等に楽しめるモノなのかなと感じています。

 

 

──ISR e-Sportsで取り扱っているゲームタイトルにはどのようなものがあるのでしょうか。

 

梨本:こちらでは会員の状況を見ながら「こういうゲームがありますよ」と紹介する形をとっているので、特に決まったタイトルはありません。「この中から選んでください」ではなくて「どんなゲームがしたいですか?」という会話から既にコミュニケーションは始まっています。

 

もちろん、多くの方はこの質問に対して「分かりません」という答えになるのですが、それはそれでOKなんです。そこから「こういうゲームがありますよ」と提案するのもコミュニケーションですし、そのゲームが難しかったり分かりづらかったりするようなら他のゲームに、という具合でどんどんコミュニケーションが進みます。

 

──特にこのゲームタイトルを中心に、という方針は敢えて決めていないと。

 

梨本:はい。シニアだからといって「このゲームが向いてる」「このゲームは無理」なんてことはないと考えています。例えば若者に人気の『PUBG』や『フォートナイト』は銃で戦うゲームだからシニア層はプレイしちゃダメ、なんて事はありませんから、一度はチャレンジしてみて欲しいと思います。

 

──既にご利用されている方の反響はいかがでしょうか。

 

梨本:施設の名前に「eスポーツ」とは入っておりますが、利用される会員の方は殆どがまず「パソコンへの恐怖心」があるところからスタートしています。下手に触ったら壊れてしまうんじゃないか、という感覚ですね。

 

ですので、最初はパソコンの操作に慣れていただくところから始めます。クロスワードパズルのような馴染のある、親しみやすいゲームをパソコン上で遊んでもらうことでマウス操作に徐々に慣れてもらえればと考えています。

 

──実際にプレイされているのをみて、その反応はいかがでしょう

 

梨本:それが、殆どの場合は最初の20~30分ですっかり慣れてしまいますね。最初はクリックのやり方も分からないと言っていた方も次第に一人で出来るようになって行きますし、次の予約を入れて帰られる方も多いので楽しんでいただけているかなと思います。

 

 

──そうして簡単なゲームから慣れていくことで、その延長線上にeスポーツがあると。

 

梨本:最初はパズルや脳トレで精一杯だった方も、段々と複雑なゲームやオンライン上での見知らぬ方とのコミュニケーションに興味が湧いてきますから、最終的に他のユーザーさんと一緒にプレイ出来るようになるまで焦らずにステップを踏んでいってほしいですね。

 

──「ゲームの上達」そのものが目標ではないという事ですね。

 

梨本:ええ、私たちは“シニアプロゲーマー”を生みだそうとは思っている訳では無いんです、ちょっと誤解をされがちなのですが(笑)。ゲームと、その対戦競技をコミュニケーションとしてシニアの方に親しんでいただける場を作りたかったんです。例えば喫茶店でシニアの方が会話しているな、と思ったらその話題がゲームについてだったら、凄くワクワクする光景だと思いませんか。

 

──確かにそれは凄くワクワクします。あるいは、共通の話題となることでお孫さんとの会話に繋がることもあるかも知れませんね。

 

梨本:もちろんゲームが上手い人のプレイが凄く価値があることは間違いありませんが、eスポーツには「スポーツ」という言葉が入っていることで「上手でなければならない」という雰囲気を感じるところもあります。でも健康や美容のためにボクシングを習っている方もいますが、そうした人達は決してボクシングの試合に出て勝とうとは思っていなくて、あくまでエクササイズが目的ですよね。

 

──楽しいはずのゲームに「入りづらさ」が生まれてしまう感覚ですね。

 

梨本:そうです。もちろん「ゲーム対戦は競技である」という定義も新たな楽しさがあって面白いです。ただ、その入りづらさが解消されてもっと色んな年代層の方に親しんでいただける種目になれば、と思っています。

 

 

──ISR e-Sportsでシニア層の方々が楽しくゲームをプレイされることが、その第一歩になる可能性を感じます。

 

梨本:感染症対策にも十分配慮して運営しておりますので、安心してご利用いただければと思います。退職後のシニア層に社会参加を促し、年齢やコミュニティを超えて助け合う「共生社会」を作りたい、というのが私たちのひとつの目標です。様々な世代の方と共に生きる社会、それをeスポーツを通じて実現していくことを目指したいと思います。

 

──本日はありがとうございました。

 

梨本:ありがとうございました。

 

 

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