「VRが切り開くeスポーツ観戦の新たな次元」

#eスポーツ

新型コロナウイルスの影響を受け、世界各国で「オンラインでできること」への関心が高まっています。日本では新型コロナウイルス感染拡大への対策の一つとして、緊急事態宣言が発令されましたが、他の国々においても、政府からの自粛要請や外出禁止令が発令されており、自宅で過ごす時間が増えている中で各業界の著名人がオンラインで対戦可能なゲームに挑戦するなど、ゲームというコンテンツが脚光を浴びるケースも多く見られます。しかし、eスポーツ業界でも大会やイベントがほぼ全て中止となっており、その影響は小さくありません。

 

そんな中、2020年3月15日に実施された「RAGE Shadowverse 2020 Spring GRAND FINALS」では“VR観戦”という新しい取り組みが実施されました。最新のVRテクノロジーによって、eスポーツにも新たな可能性が広がろうとしています。

 

 

 

VRへ最適化された「RAGE Shadowverse」

 

「RAGE Shadowverse」はプロリーグも開催されるなど高い人気を誇っているデジタルカードゲーム『Shadowverse』を使用した一般参加の大規模な大会で、同タイトルの競技シーンを象徴するイベントのひとつでもあります。

 

今回の「GRAND FINAL」はその名前の通り予選を勝ち上がったプレイヤーによる決勝大会であり、本来ならば大勢の来場者が見込まれる一大イベント。新型コロナウイルス感染拡大を防止する観点から無観客での開催となりましたが、そこで従来の動画配信に加えて“VR形式”での配信が行われる運びとなりました。

 

使用されたのは「cluster」というマルチプラットフォーム対応のバーチャルSNSで、PCやスマートフォンの画面上でもバーチャル空間での観戦は利用可能ですがVRデバイスを使用すること一層リアルな映像として楽しめます。内容も単に試合の映像が流れるだけではなく、架空のステージ上で出演者のアバターが表示されるなど演出面でVRならではの要素が取り入れられ、新たな可能性を感じさせるイベントとなりました。

 

eスポーツとVRの距離感は未だ模索中の段階

 

VR技術は医療など様々な分野での貢献は勿論のこと、仮想空間をリアルに感じられるという点から娯楽系コンテンツとの相性が良いと考えられています。実際にゲーム専用のデバイスも開発されており、既にVRに特化したタイトルも複数リリースされています。

 

ただゲーム界でもVRでの開発が盛んなのは主にソロプレイ用のタイトルであり、対戦ゲームというジャンルに限ればその数は多くなく、市民権を得ているとは言い難いのが現状です。

 

その理由としてはいくつか考えられますが、単純に専用デバイスの所有者が少ないため競技シーンを確立されるほどプレイ人口が集まっていないこと、画面が激しく動くVRゲームを長時間プレイするには画面酔いなど健康面でのハードルが高いことが挙げられるでしょう。VR以外で既に十分すぎるほど人気のeスポーツタイトルが供給されていることも、無関係ではないと思われます。

 

ただ、現時点でリリースされているタイトルについてはロボットの操縦者となって対戦するアクションゲームや、空間を立体的に移動しながら戦うシューティングゲームなど、やはり既存のゲームにはない独特の体験があるのも間違いなく、ブームを巻き起こすタイトルの登場が待たれています。

 

eスポーツ観戦の課題がVRによって解決する可能性も

 

 

観戦という視点から考えれば冒頭で紹介した「RAGE」のように、自宅のリラックスした環境に居ながらトップ選手の熱い戦いを、VRを通じて楽しむことができる。そんな新たな体験が生まれ始めています。

 

eスポーツは「オンラインで実施できる」というイメージを持たれがちですが、実際は大規模な大会ほど設備や演出の関係でオフラインでの実施が必須と言えるのが現状です。結果、殆どのイベントが首都圏で開催される一極集中と言える現在の環境は、地方からeスポーツを応援している人にとってはひとつのハードルとなっていることも間違いありません。

 

しかし、VRでの観戦であれば世界中のどこからでも好きなeスポーツタイトルや選手の試合をより間近で観戦することが可能になり、そのユーザー体験がeスポーツ人気を拡大することに繋がるかもしれません。

 

映像の視聴であればゲームのプレイに比べてVR環境による身体的な負担も小さく、自分の好きなタイミングでデバイスを外して休憩することも可能です。周囲に配慮して観戦中の飲食を我慢したり、座りっぱなしで体を痛めてしまったりというスポーツ観戦や観劇にありがちな問題もクリアしています。全ての視聴者が同じ視点から観戦できるので「座席の当たりはずれ」という話題もなくなるでしょう。

 

もちろん大歓声の中で臨場感あふれる試合を味わえる魅力、そして選手に直接声援が届けられることの意義など、オフライン観戦にしかない楽しみも捨てがたいものです。VR観戦が一般的になるためには家庭でのVR視聴環境が標準になることも必要であり、将来的に完全に取って代わるかと言えば、断言は難しいところです。

 

ただVRでの観戦には、VRゲームと同様にこれまでにない表現が可能になることの期待を寄せずにはいられません。例えば野球ゲームを用いたeスポーツであればゲーム内の球場の座席から現実のプロ野球を観るような視点で観戦できたり、FPSタイトルならばマップ上空からの特殊な俯瞰視点で全プレイヤーの動きを把握できたり、そんなVRならではの切り口が今後さらに生まれていくことでしょう。

 

現在は世界的に集客してのイベント開催が難しい情勢であり、VR以外にも様々な技術を用いた遠隔でのイベント開催手法には一層の注目が集まることが予想されます。再びオフラインで大規模なイベントが開催可能になるまで、この中断期間を単なる空白期間にしないためにも、eスポーツ観戦に新しい空間を取り入れ始めるべきではないでしょうか。

 

 

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