「社会人でも全力で打ち込める環境を」

NTT東日本の社内eスポーツチーム「TERA HORNS」の取り組み

#eスポーツ

これまで、企業とeスポーツへの関わり方と言えば大会やチームへのスポンサーという形が一般的でしたが、最近になって社内にeスポーツチームを発足させる企業が増えてきています。「企業対抗戦」という、社会人ならではの場も生まれ、新たな形でeスポーツシーンを盛り上げています。

 

果たして、こうした活動はどのような狙いやキッカケで誕生しているのか。今回は東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)内に発足したeスポーツチーム「TERA HORNS」について、同チームでキャプテンを務める金基憲(きん もとのり)氏にお話を伺いました。

 

 

※本インタビューは新型コロナウイルスの影響による情勢を鑑みて、オンライン会議ツールを使用して実施いたしました。

 

──本日はよろしくお願いいたします。まず、簡単に自己紹介をお願いいたします。

金 基憲(以下、金):NTT東日本でeスポーツ事業を担当しておりまして、eスポーツチームの立ち上げに携わり、運営のキャプテンを務めております金と申します。よろしくお願いします。

 

──NTT東日本さんではチームの発足以前からeスポーツに関する事業を取り扱われていました。

金:スタートは2018年の夏頃ですね。当社は通信事業に加えて地域への貢献というテーマに従来から取り組んでおり、その中で地域の方々から「eスポーツで地域活性化をしたい」という声がありました。時を同じくして社内にかなりの有識者がいるらしいということが明らかになりまして、それが後に新会社「NTTe-Sports*[1]」の副社長となる影澤なのですが、彼を中心に、社としてeスポーツの取り組みにチャレンジしようとなりました。

 

当初は『ストリートファイター』の大会に通信サービスやパブリックビューイングに関する部分で事業として携わるなどしておりましたが、2019年4月頃からチーム発足の動きがあり6月に結成に至りました。

 

──社内にeスポーツチームが発足したのは、どのような理由があったのでしょうか。

金:理由はいくつかあります。まず、事業の面で言うと、やはりeスポーツはコンテンツビジネスであり「良いものを提供するためにはゲームの内容を理解している必要がある」ということを感じていたので、社内の詳しい人をプロジェクトとして巻き込みたかったこと。

 

また、これからeスポーツを本当に盛り上げて行くためには末永くゲームと付き合える文化が必要だと感じていたこと。子供の頃から毎日本気で取り組んでいたゲームでも、社会人になるタイミングで、ごく一握りのプロを目指した方以外はゲームとの付き合い方にある程度折り合いをつけてしまっているのが、現実かなと思います。そこで、「社会人eスポーツ」という道筋を作ることで、そういう方々が引き続き本気でゲームに取り組める、新たな枠組みを作れるのではないかと。他の会社の方と話していても、ゲームは今でもやっているけれど活動の場がないという声を多く聞いていたので、形をしっかりと作れれば、取り組みとして走り出すのではないかと思っていました。

 

加えて、今国内でゲームを取り巻く環境に対しては、NTT東日本という会社がeスポーツチームを持ったという事実がポジティブなメッセージになれば良いなとも思います。かくいう私は今でも日に数時間ゲームをしていますけど、仕事や生活に支障が出ることは無いですし、良い息抜き、仕事以外の自己実現の場となっています。

 

これは私個人の想いでもありますが、フィジカルスポーツが苦手、嫌いな人であってもeスポーツを通じてならチーム活動やキャプテンの立場を経験出来ます。多様性の実現に向けては、eスポーツに全力を注げるという選択肢、それを叶える環境があった方が良いと思いますし、それによって例え入学や就職という人生における大きな出来事を経ながらも、社会人までゲームのキャリアがずっと繋がっていくようになれば、と考えています。

 

──確かに、学生を卒業するタイミングでプレイヤーとしての活動をやめてしまう選手も多いですよね。

金:例えば私の友人で、東京都でテニスの区大会に出場している社会人グループがあるのですが、学生時代から好きなテニスを続けていて、今となっては別にプロを目指しているわけではないものの、その場で勝つことに全力をかけて日頃から練習しています。ゲームでもそうした場を作れれば、という気持ちで取り組んでいますし、大人になっても勝利のために仲間と協力して勝ったり負けたりという経験ができることは本当に貴重だと考えています。

 

──企業によるeスポーツへの携わり方としては、プロチームへのスポンサードという形が一般的ですが、そうではなくチームを作ることに意義があった訳ですね。

金:そうですね。やはり社会人として働きながらゲームに全力で取り組むというポイントが重要なので、そこにこだわっています。今は100%正社員だけでチームが構成されていますので、そこはアピールしたいところです。

 

将来的には、例えば今ある硬式野球部のように実業団の形になることはビジョンとして持っています。今のメンバーで成績を残して存在感を残していければ、そういうこともあるかなと。将来的に活動が認められて、ゲームを通じての採用等も可能になったら、私の夢もかなり実現したことになるかなと思います。

 

──現在はなかなかオフラインで、というのは難しい状況ですが、チームとしての活動はどのように行っていますか? 

金:TERA HORNSでは現在7つのタイトルを扱っておりまして、それぞれの部門のキャプテンが練習内容や目標を決める形で活動しています。各地に部員が散らばっていることもあってオンラインでの練習が中心ではありますが、実は北海道から関東まで東日本各所に部室を用意しておりまして、平時はオンライン以外に部室での活動も可能です。

 

主な戦績としては、『スプラトゥーン2』の「スプラトゥーン甲子園」関東大会へチームとして出場し、ベスト8まで健闘しました。『ぷよぷよ』では「ぷよカップ」という公式大会で予選を突破した選手もいます。「ストリートファイターV」では今年の「EVO JAPAN」にも出場しましたが、チームのエースプレイヤーがトーナメントの序盤でトッププロに当たって敗退しました。プロアマ混合で行われる大会の難しさを痛感しましたね。

 

──今の7タイトルが選ばれた理由は何だったのでしょうか

金:企業チームとして取り組み、活動を広めるためには何よりもまず結果が求められると考えています。そうでなければ、プレイヤーの理解は得られませんから。なので、まずは社内調査でプレイヤーレベルが高かったタイトルを中心に、国内外のシーンの盛り上がり等を考慮して選びました。現在のタイトルの活動が大分軌道にのってきたので、今後更にタイトルを広げる予定です。

 

──プロチームには無い、企業交流戦という場も増えてきました。

金:『League of Legends』や『ストリートファイターV』の企業交流戦では、優勝するなど、TERAHORNSとして結果も出てきつつあります。ただ、先ほどもあったように今は得意なジャンルに限っての戦績なので、今後は企業交流戦が盛んなFPSジャンルや『ブロスタ』等にも参戦してみたいです。

 

──チームの発足前後での社内外から反響も多かったのではないでしょうか。

金:社内的には、ゲームを通じて社員同士が階級やエリアにとらわれずに連絡をとるようになり、コミュニケーションにも寄与していると感じています。活躍して社内ニュースで取り上げられたメンバーは、今まで話したことのない人から声をかけられることも増えたそうです。地方採用で勤務している社員が本社に来る貴重な機会にもなるなど、チーム活動を通じて、メンバーが社員としての活動の場を広げられていることは喜ばしいです。中にはチームの活動を知った社員から「僕の方が強いと思います」という問い合わせもありましたね(笑)。そういうメンバーも大歓迎です。

 

最初はまだ部室もなくて環境が整備しきれない状態からスタートしたのですが、本当に立ち上げメンバーが頑張ってくれました。仕事以外に社内で頑張れることが出来たというのは、本業の方にも良い影響があるのかなと思います。社外では取材の問い合わせも増えましたが、この活動を始める以前から面識があった方と、ゲームを通じて更にコミュニケーションを深める機会などもありました。

 

──ゲームを通じてコミュニケーションすると、また普段とは違った一面が見られることも多いですよね。

金: 本当にそうですね。取り組みが知られるにつれて「チームってどうやって作るのか」という問い合わせも増えてきました。

 

これが本当に我々も苦労したポイントで、大企業であれば、例えば取り扱うタイトルを決める時にも「何故このゲームなのか」という論拠が誰が見ても納得できる形で必要だったりします。社会人チームの普及はチーム発足のねらいの一つですので、こうした相談があればTwitterからでもお問い合わせいただければと思っています。

 

──少なからず社内のスペースや機材を使用するわけですから、そこは重要になってきますよね。

金:そうですね。備品の管理や活動や目的や進め方など、ガイドラインの整備には苦労しました。新しい取り組みが斜めに見られがちであることは理解していますので、しっかり社内向けに回答できるようにという気持ちで進めていきました。

 

──今からチームを立ち上げたいという場合には非常に頼もしい存在になりますね。

金:色々な方の話を聞いていると社内eスポーツサークルや同好会というものは今でも結構あります。ただ会社公認のチームというものは、やはり設立のハードルは高くなります。それでも実現した際には社名を堂々と名乗れるなど活動の幅もグッと広がるので、是非そこを目指して頂きたいなと思います。

 

 

──超高速通信も話題になっている段階ですが、通信会社としてeスポーツに携わることの意義は大きいのではないかと思います。その点についてはどうお考えでしょうか。

金:そうですね、地域活性化という目的に加えて、通信という強みが生かせるということも間違いありません。eスポーツについてオンラインというのはほとんどのタイトルでついて回るポイントです。通信の高速化や安定化に、社のミッションとして取り組んでいくことは前提としつつも、eスポーツシーンでは上流の通信回線の速さに加え現場レベルでの通信環境の構築やトラブルシューティングも非常に重要です。現場レベルのトラブルは、通信事業者としての経験や工夫で解消できることが多いと感じています。

 

これまでも大会の設営に携わってきましたが、現状eスポーツの大舞台というと、eスポーツ専用ではない施設を一時的に会場として利用することが多く、ある意味一発勝負の世界ですから、安定した通信接続の構築であったりトラブル時の切り離しであったりという対策には力を入れています。スポーツと違って、通信の不確実性というのはどうしてもついて回る問題です。このリスクを最小にする努力を続けていくことはもちろん、これからeスポーツに取り組もうとしている方々にもこういった注意喚起を行っていき、プレイヤーと業界の発展のために力になっていきたいです。

 

──確かに私も様々なeスポーツの現場を取材していますが、トラブルによって大会やイベントの価値が下がってしまうのは凄く勿体なく感じます。

金:そうですね、トラブルの解消については言わばマイナスをゼロに戻すという作業です。そこに加えて、ゼロから更にプラスにしていくという点も目標にしています。

 

弊社は「繋ぐ」というテーマで事業を行っており、オンラインで出来るeスポーツならではの発展の仕方もあると思っています。遠隔でチームミーティングしたり、テレビ電話でコミュニケーションしたりと、そうしたソリューションを支援していきたいですね。

 

──それでは最後に、今後に向けての目標を一言お願いいたします。

金:チームの今後の活動方針にもかかわるのですが、社会人eスポーツチームという層を確立して行きたいと思います。実現への道筋は長いですが、何よりもまず、自チームが周囲を納得させられるほどの実力をもつことが前提だと思いますので、目先の具体的な目標としては、今年の企業対抗戦については全勝すること。また、大会で好成績を収めてプロライセンスを獲得することで「社会人チームが本気のeスポーツの土俵に乗った」というアイコンになりたいですね。

 

 

TERAHORNSでは交流戦の相手を募集しているので、「なかなか活動の機会がない」という社会人ゲーマーの方は、気軽にお声がけください。ビジネスの産まれ方にもいろいろありますが、中には小さな大会コミュニティが拡大して由緒ある大会に発展してくようなこともあると思いますので、とにかく目の前のつながりを大事にして取り組んで参りたいと考えています。

 

━━本日はありがとうございました。

金:ありがとうございました。

 

「TERA HORNS」公式Twitter :https://twitter.com/terahorns

 

*[1] NTT東日本などの共同出資で2020年1月31日に設立された、eスポーツ分野に特化した新会社。

関連する記事

To top