eスポーツとお酒

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これまでも何度か述べてきたとおり、eスポーツは若者を対象としたブランディングやマーケティングの手段として注目されています。自動車、アパレル、飲食物など、非常に幅広い業界でeスポーツにスポンサーする機運が高まっており、その市場規模も急激に伸びています。

 

そんな中、「お酒」業界は、世界的に「若者のアルコール離れ」が進んでいると言われていることもあり、若者へのブランディング手段を最も欲している業界のひとつといえます。

 

たとえば「バドワイザー」や「バドライト」で有名なベルギーのビール会社アンハイザー・ブッシュ・インベブ社は、世界最大のゲーム動画ストリーミングプラットフォームであるTwitchと組んで、「鉄拳7」のアマチュアリーグ「Bud Light Beer League(バドライト・ビール・リーグ)」を主催しています。

 

また、日本でも、B.LEAGUEのプロバスケットボールチームであるレバンガ北海道が、サッポロビールをメインスポンサーとして、eスポーツチーム「レバンガ☆SAPPORO」を運営しており、「シャドウバース」のプロリーグである「RAGE Shadowverse Pro League」に参加して存在感を発揮しています。麦芽とサッポロビールのロゴを基にしたレバンガ☆SAPPOROのロゴは、ビール会社がスポンサーであることを前面に押し出しているかのようです。

 

 

いくつかの例を挙げましたが、同じ「飲み物」であるレッドブルやモンスターエナジーなどのエナジードリンク業界が、eスポーツ業界の代表的なスポンサーとしての地位を確立していることと対比すると、世界的に見てもまだまだ数も規模も小さいといえます。

 

これには明確な理由があります。第一に、ほとんどの国や社会ではお酒に年齢制限があり、eスポーツファン層の相当割合がこの年齢制限に引っかかるため、酒類業界の「顧客」ではないことです。第二に、それもあって、酒類業界のスポンサーを明確に禁止しているeスポーツリーグが少なくないことです。世界最大のeスポーツリーグとして知られるESLも「酒類、ドラッグ、ポルノ」業界のスポンサーを禁止しています。また、「リーグ・オブ・レジェンド」の米国のプロリーグであるLCSでは、「成人向けの商品」についてスポンサーが禁止されており、その例として「タバコ、ギャンブル、ポルノ」が挙げられています。ここではお酒は明示的に挙げられていませんが、今のところ参入はないようです。

 

このように、eスポーツが若者向けブランディングの手段として注目されているにもかかわらず、酒類業界にとってはそれを使いたくとも十分に使えない、厳しい環境にあるといえます。

 

しかし、酒類業界のeスポーツ参入に未来がないとは言いきれません。経験のある人には分かると思いますが、お酒を飲みながらやる対戦ゲームは非常に楽しいのです。普段の真剣勝負ではできないような大胆なプレイや、笑いを取りに行くためだけのプレイの連発になりますし、負けてもアルコールが入ったせいとごまかすことができます。フィジカル・スポーツが、一般に酒を入れてやるのが危険であることを考えると、このような楽しみ方はeスポーツならではといえます。要するに、eスポーツとお酒の相性はかなり良いはずです。

 

先日、アメリカの有力eスポーツチームのひとつであるTeam Secret(チーム・シークレット)は、Levante Brewingというビール製造会社と組んで、「eスポーツのためのお酒」と銘打つ「AFK」という名称のビールを発売しました。

 

 

「AFK」というのはeスポーツファンにとって最も見慣れた言葉のひとつですが、実はあまりよい意味の言葉ではありません。Away From Keyboardの略であり、対戦が進行している最中の離席のことを指します。対戦相手やチームメイトのゲーム体験を大きく損なうため、「やむをえない事情があるのでなければやってはいけない行為」というのがeスポーツファンの共通認識です。

 

その言葉をあえてビールの銘柄にしたのは、eスポーツが社会に浸透したことにともない、コアゲーマーの真剣勝負のみならず、もっとおおらかな、たとえばお酒などを飲みながらやるeスポーツなどの広がりがあってもよいのではないかというメッセージのようにも感じられます。

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