ビジネスとしても文化としても成長続くeスポーツ「これからの10年」

#eスポーツ

今や日本でもすっかりお馴染みのフレーズになった「eスポーツ」。

 

「新語・流行語大賞」にもノミネートされるなど国内での人気の高まりから「eスポーツ元年」とも呼ばれた2018年から9年目を迎え、日本でも世界でもeスポーツを巡る環境は年々大きく変わりつつあります。

 

今回はこれまでの変化を振り返りながら、この先の10年間でさらにどのような変化に繋がっていくのかを考えてみましょう。

 

 

成長を続ける市場、収益構造の変貌

 

今なお「将来性豊かな市場」と表現されることも多いeスポーツ業界。実際に「一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSU)」による発表を見てみると、2018年当時は約48億円だった国内のeスポーツ市場規模は2024年時点で約160億円へと成長しており、2026年にも200億円に到達すると予測されています。

 

この数字だけを見れば順調かつ飛躍的な成長を遂げていると言えますが、その成長率は少しずつ落ち着いてきており、以前の予想を下回るペースになっています。それでもこのペースで行けば今後10年の間に500億円近い数字になると見込まれており、20年足らずで10倍以上の規模に達するため、まだまだ将来性がある市場と言えるでしょう。

 

特に日本国内ではコロナ禍によってゲーム全体に注目が集まったことも記憶に新しく、Vtuberを含めたストリーマー文化とも連結しながら市場の領域を広げていったことがひとつの成長要因になっていると考えられます。

国際市場規模に目を向けると2025年時点で約4,000億円に上ると計算されており、こちらも高い成長率を誇っていますが、ここには石油依存からの脱却を目指しているサウジアラビアによる巨額の投資が大きな影響を与えていることも忘れてはいけないポイントです。

 

2024年から開催されている「Esports World Cup (EWC)」は賞金総額100億円超という世界最大規模の複合大会であり、他にも政府系ファンドによってゲームパブリッシャーや大会運営企業などの買収・統合が進められるなど、今やeスポーツ界で絶大な存在感を放つサウジアラビアがこれまでの発展に大きく寄与していることは間違いありません。

 

しかし、今後“第二のサウジアラビア”と呼べるほどの新規投資が見込める可能性は極めて低く、ひとつの国が大きすぎる影響力を持つことへの懸念も指摘されています。これからはあらゆる国が参加し、より持続可能な形での発展が求められるでしょう。

 

そしてこれまでeスポーツ界の継続した発展を支えてきた「企業によるスポンサード」も、時間と共に少しずつ変化を迎えており、かつてはゲームやPC関連企業が主要なスポンサーだったところから、知名度の上昇や若年層に大きな人気を誇るという特徴もあって他業種企業の参入が相次いでいます。

 

これからは単なる広告塔としてではなく、地域との結びつきの強化や共同での取り組みなど、よりeスポーツとの「シナジー」を発揮できる企業とのパートナーシップが強化されていくと考えられます。

しかし、同時にeスポーツ界は「収益に占めるスポンサー料の割合が高い」状況が課題とされており、近年はマーチャンダイジングや視聴料など新たな収益の軸が模索されています。有料視聴化やゲーム内でのeスポーツコンテンツの販売による収益化など「スポンサーに頼らない仕組み」は今後に向けた重要なトピックであり、これからの10年の間にも新しい仕組みを取り入れながら成長を続けていくと予想されます。

 

今後はより日常的なサービスとのコラボレーションなどの施策、そしていずれは「eスポーツ専門の有料ストリーミングサービス」が登場する可能性もあり、ビジネスとしてさらに変革と成長の10年が待ち受けていることでしょう。

競技を取り巻く文化としての成熟

 

ビジネスとしてはこれからの成長が続くと予想されるeスポーツですが、競技や文化としての側面でも変化が起こっています。

 

「ゲームと言えばコンシューマ(家庭用ゲーム機)」という文化が根付いてきた日本ですが、リモートワーク需要にも後押しされてPC所持率が高まったことでPCゲーム市場が成長を見せており、ゲームユーザーにおけるPCとコンシューマのバランスには変化が訪れています。

 

ゲームセンター文化に由来する格闘ゲーム強豪国として知られている日本ですが、10年後にはPCゲームを身近に育った年代のプレイヤーの台頭するケースも予想されます。PCやゲーム機の価格高騰が社会問題化していることは懸念点であり、ゲームやeスポーツが身近なものでなくなってしまうことがないよう祈りたいものです。

 

そんな中、手軽かつ簡単にアクセスできるモバイルゲームが海外で成長著しいことも今後への予想では見逃せないポイントです。まだ歴史が浅いものの東南アジアなどを中心に既に絶大な人気を獲得しているタイトルも多く、視聴者数だけで観ればeスポーツ界全体の半数以上がモバイルゲームとの計算もあるほどです。

 

ゲームユーザーからするとデバイスが異なるだけでも「住み分け」されているような感覚もあるはずであり、競合というよりもどちらも成長が期待される分野ではあるものの、もしかすると10年後に世界におけるeスポーツのステレオタイプなイメージはモバイルに席巻されている可能性も否定できません。

 

また、eスポーツ元年と呼ばれた2018年はJeSUによる「プロライセンス制度」が導入され“職業としてのプロゲーマー”が印象づけられた年でした。同制度は「仕事の報酬扱い」とすることでプロ選手が高額な賞金を受け取りやすくするためという背景がありましたが、現在は法律上の問題がない運営が明確になり、ライセンスの有無を問わず「プロチームに所属して活動していること」がプロゲーマーの基準となりつつあると言えるでしょう。

 

そんな選手が所属するチームもプロアマ問わず新たに組織され続けてきましたが、そのすべてが長期的な継続を実現できているとは言い切れません。近年は国内外でも大規模資本のチームが複数登場しており、チームや部門単位で吸収されるケースや、中規模チーム同士が競争力を高めるために合併するケースも増えています。

 

一方で小~中規模チームも地元地域や学校との連携によってeスポーツ教室を開催するなど独自のカラーを打ち出して生き残りを続けており、今後もこの“二極化”は進んでいくと考えられます。アマチュアチームの上に国内で活動する小・中規模チームが存在し、その頂点に世界を狙う大規模チームへと繋がるピラミッド構造がより顕著になっていくことでしょう。

 

であれば、これからの10年でさらにeスポーツ文化が成熟していくためにはアマチュアやセミプロのプレイヤーも競技に取り組める環境の発展が不可欠です。対戦ゲームではランクマッチ機能によって誰もが世界中のプレイヤーと腕前を競い合える反目、プロを見据える人もそうでない人も一緒になって部活動に打ち込める学生大会や、趣味の延長線上で仲間と競い合う「草野球」のような文化はeスポーツでは、特に日本国内ではまだまだ広がっていません。

 

ピラミッドの拡大はファン層の増加や収益の安定性だけでなく、競技人口が増えることでのレベルアップや、プロ選手の引退後の指導者としてのキャリアにも繋がります。これから10年、20年後には親子でeスポーツに親しむ時代が来るはずで、その頃には今よりもずっと競技としても文化としても成熟したeスポーツになっていることを期待したいと思います。

関連する記事