日本語はコミュニケーション面で不利?
eスポーツの連携を握る、情報共有のための「コール」とは

#eスポーツ

対戦競技では多人数が参加する種目になるほど個人の技量や戦術だけでなく、選手間の連携が問われるようになり、ゲームを用いた「eスポーツ」においてもそれは変わりません。

 

eスポーツで使用されるタイトルは、一般ユーザーもネットワークを介して世界中のプレイヤーとの対戦を楽しむことができますが、ランダムにマッチングする”野良”での対戦と、連携を前提に集められたチームによる対戦とでは時に「別のゲーム」と表現されることもあるほど、連携はゲーム内容に大きな影響を与えると考えられています。

 

トップ層ともなると事前に積み重ねた練習での取り決めだけでなく、相手の出方や試合展開に応じた柔軟な判断が求められるため、選手たちは試合中に常に会話をしながら意思決定を行っています。

 

今回はそんな試合中における戦術的な指示や会話を表す用語「コール」について解説します。

 

用語・略語による簡潔な情報伝達が「コール」

 

タイムアウトのように試合を中断してコーチを含めた話し合いが可能なルールを設けているタイトルも存在しますが、基本的に試合中はコーチが指示やアドバイスを送ることはできず、選手は自分たちの判断で作戦を決断して試合を進めていきます。

 

そのため、試合中は選手同士が会話で情報共有や提案といったコールを行い、それらをベースにIGL(インゲームリーダー)と呼ばれる意思決定役のプレイヤーが最終的な判断を下して全体へとコールを返します。

判断力やゲームの理解力に優れたプレイヤーがIGLの座を担うことが多いものの、IGL以外のプレイヤーもコールの精度は重要です。選手それぞれの視点で感じる情報や考えは異なりますが、全てを口に出してしまうと情報過多になってしまい、かえってチームの判断の精度を落とすことに繋がりかねません。そのため、時にはすぐには口に出さず、IGLから何かを聞かれた時など必要な場合にだけ適切な情報を返す能力も求められます。

 

加えて試合中の選手は、操作と並行して会話をしなければならないため、できるだけ簡潔な言葉でのやり取りが求められ、情報の簡略化のために略称や略語、専門用語が多用されるのもコールの特徴です。

 

「細かな情報を短く表現する」ことが特に重要で、例としてゲーム内で「A拠点」と定められているポイントに敵を発見した場合であっても、「A拠点の奥の青い箱の裏に敵がいて、体力が少ない」と話していては時間がかかってしまい、聞き手も処理する文字数が多くなってしまいます。

 

そこで選手たちはさまざまなオブジェクトや道、状況に名前をつけて、短いフレーズにどんどん情報を込めていきます。先ほどの表現も「A拠点の青い箱」は「ブルー」、体力が少ないことは「ロー」と事前に決めていれば、「ブルー裏、ロー」だけで伝わるようになります。

 

こうした用語は短いフレーズでも伝わりやすい英語がそのまま使われていたり、あるいは有名なチームや別のタイトルで使われていた分かりやすい表現を借りたりと、eスポーツ業界全体で共通するものも多く存在します。これによって選手がチームを移籍した場合や別タイトルへと転向した場合でも混乱なくコールできることに繋がっていると考えられます。

 

また、コールのために生まれた用語は短い時間で多くの情報を盛り込みたい実況解説にとっても使いやすい言葉となっており、広くプレイヤーに浸透しているフレーズであればオフィシャルな放送で使用されることも少なくありません。

 

「日本語はコールに不向き」という見方も

 

選手は対戦中にゲーム音を聞くためにイヤホンを着用しているため、オンライン対戦だけでなく面と向かってのオフライン環境であっても、基本的にはVC(ボイスチャット)用のアプリを介しての会話になることもコールのポイントのひとつです。

 

ゲームからの音情報も聞き取りながら同時に複数の選手が会話することになるため、高性能なマイクとイヤホン、アプリケーションを使っていても、コールは聞き取りづらくなってしまいます。特に多くの観客が入る大規模な大会ともなればヘッドホン越しに実況や歓声が聞こえてしまうことを対策する大音量のホワイトノイズが流されており、それでもマイクが大声援を拾ってしまう場合もあるなど、かなり聞き取りづらい環境に置かれることもあるようです。

 

 

そうした環境下では、似た響きの言葉や同音異義語の多さ、加えて破裂音が少ないことから日本語は聞き取りづらく「日本語はコールに不向き」とする意見も存在します。大きな実力差を覆すようなデメリットではなくとも、僅かな伝わりづらさが1プレーに大きく影響してしまうこともあるためです。

 

日本語コールによるデメリットの代表例として知られているのが「行く」と「退く」という真逆の意味のフレーズの聞き間違いで、実際に日本チームでもそうした場面では「Go」と「Back」で表現するよう統一するなど、さまざまな工夫が取り入れられていたそうです。

 

技術的な練習だけでなく選手による連携の肝になっていると言えるコール。もちろん情報量や正確さだけでなく、厳しい状況から仲間を奮い立たせる一言や雰囲気を盛り上げる掛け声も重要で、どんな状況でも上手く言葉を発せられる「コール力」が魅力とされる選手も数多く存在します。

 

中には試合中の選手の会話内容を「チームVC」として動画公開しているチームもあり、プロ選手の情報伝達テクニックを聞くことができます。情熱あふれるコールやユニークな作戦名、チームの雰囲気などが伺えることもあるので、好きなタイトルのコールについて調べてみると、また違った魅力を発見できるかもしれません。

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