OSS(オープンソースソフトウェア)は、私たちの身近にあるウェブサービスやアプリケーション、OSなどに利用されています。
このコラムでは、「OSSって何?」という基本から、具体的なメリットや代表的なソフトウェア、さらに使用上の注意点まで、わかりやすく解説していきます。OSSを初めて知る方も、すでに利用している方も、ぜひ最後までご覧ください。
OSS(オープンソースソフトウェア)とは、ソースコードが公開されていて、誰でも利用・改変・再頒布などが可能なソフトウェアのことです。
ソフトウェアは、開発企業や個人が有償・無償で提供し、その内部構造(ソースコード)は非公開とされることが一般的です。それに対してOSSは、開発者がソースコードを公開しており、世界中のプログラマやユーザーが協力して改良・修正を行えます。
スマートフォンのOSやアプリケーション、ウェブサイト、クラウドシステムなど、私たちが普段何気なく利用している数多くのサービスがOSSを基盤として成り立っています。
OSSの定義は、OSSの認定を行う非営利団体「Open Source Initiative(OSI)」により定められています。定義に合致しているかをOSIが判断し、認められると「OSI認定マーク」が付与される仕組みです。
【The Open Source Definition(オープンソースの定義)】
1. 自由な再頒布を認める(Free Redistribution)
2. 必ずソースコードを含む(Source Code)
3. 派生ソフトウェアを許可する(Derived Works)
4. 作者のオリジナルコードがどこかわかるようにする(Integrity of The Author’s Source Code)
5. 個人やグループに対して差別をしない(No Discrimination Against Persons or Groups)
6. 使用分野に対して差別をしない(No Discrimination Against Fields of Endeavor)
7. プログラムに付随する権利は再頒布者に平等に与える(Distribution of License)
8. 特定の製品に限定したライセンスにしない(License Must Not Be Specific to a Product)
9. 他のソフトウェアを制限するライセンスにしない(License Must Not Restrict Other Software)
10. ライセンスは技術的に中立であること(License Must Be Technology-Neutral)
参考:Open Source Definition|Open Source Initiative
OSSを利用することで得られる恩恵は数多くあります。ここでは、代表的なメリットをピックアップして紹介します。
OSSは、世界中の開発者コミュニティによってソースコードが精査され改善が重ねられています。問題が見つかった際は、素早く修正とアップデートが行われることが多く、安定性の高いソフトウェアとして成長していきます。
特定の企業だけでなく、世界中の専門家や熱心な開発者が協力し合うことで、予期せぬバグや脆弱性も早期に発見・解決される仕組みとなっていることが、システムの信頼と安定につながっています。
ソースコードが公開されているOSSは、組織やプロジェクト固有のニーズに合わせて、機能の追加や動作の変更も可能です。
ライセンスの制約内であれば、独自の機能を実装するなどのカスタマイズも可能なため、既製のパッケージソフトウェアでは対応が難しい特殊な要件にも、柔軟に対応できるメリットがあります。
OSSは無償で利用できるものが多く、初期導入コストを大幅に抑えられます。
運用やサポートのために有料サービスを利用するケースもありますが、高額なライセンス費用が必要な商用ソフトウェアと比較して、総合的なコストを大幅に削減できるはずです。
特にスタートアップ企業や小規模プロジェクトにとっては、極めて重要なメリットとなるでしょう。
人気の高いOSSには、世界規模の充実した開発者コミュニティが存在します。詳細なドキュメントやフォーラム、Q&Aサイトなどがあり、日々情報交換が行われているため、新しい知識の習得がスムーズに進められます。
コミュニティ主導のイベントや勉強会は頻繁に開催されていることも多く、スキルアップを目指す開発者にとって、学習の機会が多いことは大きなメリットです。
OSSの中から、特に注目度が高く、幅広い分野で活用されているソフトウェアを紹介します。
モバイル端末で世界的に最も普及しているOS(オペレーティングシステム)です。ベースの部分はLinuxカーネルを使用しており、Googleが中心となって開発を進めています。
スマートフォンやタブレットなどさまざまなデバイスに搭載され、多くのアプリケーション開発者が関わっています。また、AndroidをベースにカスタマイズされたOS(例:OPPO のColor OS)も登場しています。
サーバーから組み込み機器、個人向けのPCまで、幅広い用途で利用されているOSです。Linuxカーネルを中心に、UbuntuやCentOSなどさまざまなディストリビューション(カーネルとそれを取り巻くソフトウェアセット)が展開されており、多くの企業やコミュニティが開発・保守を行っています。
世界でトップクラスのシェアを誇るウェブサーバーソフトウェアです。ウェブサイトを公開するときに、ブラウザとの通信を仲介する重要な役割を担います。
高い堅牢性と拡張性を備えており、モジュールによる機能拡張も可能です。さまざまなウェブアプリケーションを支える基盤として広く利用されています。
世界中のウェブサイト運用に利用されているCMS(コンテンツ管理システム)です。個人ブログから企業サイト、ECサイトまで、幅広い用途で使われています。
世界中のデザイナーや開発者により、テンプレートやプラグインが豊富に用意されているため、技術レベルに関係なく、初心者から上級者まで誰でも簡単にウェブサイトを作れます。
トップクラスのシェアを誇るリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)です。データベースの整理やデータの検索・更新などを行うために必要で、前述のWordPressにも使用されています。
高速かつ軽量に動作し、大規模なデータ処理でも安定した性能を発揮します。多くのウェブサービスやアプリケーションで採用されており、企業ユーザー向けの商用版として有償のサポートも提供しています。
https://www.khronos.org/opencl/
OpenCLは、CPUやGPU、アクセラレータなど、異なるハードウェア間で効率的に並列処理を行うためのフレームワークです。画像処理や科学技術計算に利用されるケースが多く、グラフィックス関連の開発や機械学習分野でも注目を集めています。
ソフトウェアやアプリケーション開発に欠かせないプログラミング言語やライブラリにも、OSSは数多く存在します。ここでは代表的な言語やライブラリの概要を紹介します。
機械学習、データ解析、ウェブ開発など、幅広い分野で活用されているプログラミング言語です。豊富なライブラリと初心者にも親しみやすいシンプルな文法で、非常に高いシェアを誇ります。
大規模な開発でも支障なく利用できることから、多くの企業や研究機関で利用されています。AI(人工知能)やML(機械学習)開発との相性が特に良いため、今後さらに利用が増えるものと考えられます。
・・・
日本人のまつもとゆきひろ氏が開発したプログラミング言語で、コードが書きやすく読みやすいことが特徴です。Rubyを用いたウェブアプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails」が特に有名で、スタートアップを中心に多くの企業が採用しています。開発スピードを重視する現場で特に好まれる言語です。
・・・
企業の基幹システムやAndroidアプリなど、幅広い分野で使用される人気のプログラミング言語です。代表的なオブジェクト指向言語であり、大規模開発に強いことが特徴です。習得難易度の高い言語ですが、豊富なライブラリやフレームワークが公開されており、コミュニティも活発です。
・・・
ウェブ開発の分野で長年にわたり利用されているサーバーサイドスクリプト言語です。WordPressを始めとする多くのCMSやフレームワークが存在し、動的なウェブページやシステムの構築に広く使用されています。学習ハードルが比較的低く、中小規模サイトの運用にもよく使われます。
・・・
Facebook(現:Meta)が中心となって開発を行っているJavaScriptライブラリで、シングルページアプリケーションや動的なUIの構築に適しています。部品ごとに小さく分けて開発を行うコンポーネント志向の設計思想で、フロントエンド開発の効率化に貢献します。
OSSは自由度が高い一方で、利用する側に一定の知識と責任が求められます。ライセンス形態やセキュリティ対策など、事前に把握しておくべき重要なポイントを解説します。
OSSは自由に利用できますが、「GPL」「MIT License」「Apache License」など、それぞれのライセンスによって異なる利用条件が定められています。
例えば、ソースコードを改変して頒布する場合、その改変部分の公開が義務付けられることがあります。プロジェクトの目的に合ったライセンスであるか、商用利用の可否や再頒布の条件などを確認しましょう。
OSSを利用して作成したシステムやアプリケーション、ウェブサイトなどのセキュリティ対策は、利用者が責任を持って行う必要があります。
開発者コミュニティが活発なOSSは、パッチが早く提供されますが、それらをチェックして継続的に管理していく体制の構築が絶対となります。脆弱性情報の確認やアップデートの適用を怠らないことが基本です。
また、WordPressやAndroid OSのように利用者が非常に多いOSSは、攻撃者から脆弱性を狙われる確率が高くなります。利用者の多さと安全性はイコールではないため、十分な注意が必要です。
OSS(オープンソースソフトウェア)はソースコードが公開されており、誰でも利用・改変・再頒布が可能です。
信頼性や拡張性の高さなど多くのメリットを備えており、導入コストの低さから、エンジニアが利用する機会も少なくないでしょう。一方で、利用時はライセンスの種類やセキュリティ対策についての十分な理解が必要になります。
私たちの身近では、すでに数多くのOSSが活用されています。これらはITの世界を支える重要な基盤となっており、プロジェクトや個人の学習においても、OSSの採用を検討することで、柔軟性の高い開発環境が実現できるはずです。