格ゲー界に動きアリ⁉

2023年の新作タイトルからeスポーツ界の動向を探る

#eスポーツ

eスポーツ、と聞いて皆さんが最初に思い浮かべるタイトルはどのようなゲームでしょうか。近年はeスポーツ人気の盛り上がりによって、対戦機能や競技シーンに力を入れているタイトルも増加し、ゲームセンターで人気を博していた歴史あるタイトルから新規タイトルまで、eスポーツシーンは群雄割拠の様相を呈しています。

 

既に数多くの有力タイトルが出揃っている現状は、徐々に新規タイトルが割り込んでいきづらい環境になりつつあると考えられますが、それでも大きな話題性が得られる新作のリリースは大きなチャンスと言えるタイミングです。

 

そこで今回は、今後発売が予定されているeスポーツタイトルから、2023年のeスポーツシーンの変化を探ります。

 

2023年は「格闘ゲーム」に追い風か

 

2023年発売の注目タイトルとしてまず挙げられるのが、カプコンから発売予定の『STREET FIGHTER 6』です。6月にリリースが予定されている本作は1980年代からゲームセンターで親しまれてきた格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズの最新作であり、世界中で数多くのプレイヤーが期待を寄せていることでしょう。

 

日本における『ストリートファイター』の競技シーンはライセンス制度を採用しており、2018年より、認定されたプロ選手による公式プロリーグ「ストリートファイターリーグ」がスタートし、同リーグは日本を代表するプロゲーマー「ウメハラ」こと梅原大吾選手も参戦するなど高い人気を誇っています。2021年には、規模を拡大しプロ野球のように企業がチームを保有する「チームオーナー制」を導入するなど、既に確固たる地位を築き上げています。

 

 

そんな『ストリートファイター』で現行タイトルの「5」がリリースされたのは2016年と、実に6年以上も前のことになります。アップデートによってゲーム内容の変更や調整は行われてきましたが、新たなナンバリングタイトルではそうしたアップデートよりも遥かに大きくゲームの内容や環境が変化すると予想されます。既存プレイヤーにとって重要な転機であると同時に新規プレイヤーを招き入れるチャンスでもあり、一層シーンを活気づける契機となり得るのではないでしょうか。

 

同じく格闘ゲームのジャンルでは「2023年以降」のリリースと発表されている『Project L』も話題性の高いタイトルです。こちらは世界有数のeスポーツタイトル『League of Legends』や『VALORANT』を手がけるRiot Gamesが開発中の格闘ゲームであり、『League of Legends』のキャラクターが登場するゲームとして注目を浴びています。

 

MOBAやFPSとはまた違った新しいジャンルへの挑戦ではありますが、振り返れば同社初のFPSタイトルであった『VALORANT』も定番のルールをベースとしながらもオリジナリティあるゲーム性で人気を集め、魅力ある競技シーンの運営能力によってリリースから僅か2年でFPS界の中心とも言える存在へと成長させています。まだ正式タイトルが発表されていない段階ながら「基本プレイ無料」であることも決定しており、その内容によっては格闘ゲーム界の勢力図を塗り替える存在となるかも知れません。

 

もちろん他タイトルもユーザーを取られまいと新展開を狙うことが予想され、ジャンル全体での活性化も期待されます。2023年3月には東京で大型格闘ゲームイベント「EVO Japan」が3年ぶりに復活することもあり、格闘ゲームジャンルが新規層を取り込みながら今以上の盛り上がりを巻き起こす可能性もありそうです。

 

定番タイトルに新展開の可能性

 

格闘ゲーム以外のシューティングゲームやMOBAなどのジャンルでもこれまで人気を築き上げてきたタイトルが継続して競技シーンを展開しており、2023年も中心となるゲームはそう簡単には変らないと見込まれます。

 

そんな状況下で、2023年に既存のタイトルへの“変化”が予想されるのはスポーツゲームのジャンルです。『パワプロ』の愛称で親しまれる『パワフルプロ野球』シリーズを手がけるコナミは、昨年7月に「世界野球ソフトボール連盟(WBSC)」とのパートナーシップ契約を締結。その際には日本語に加えて英語にも対応した『WBSC eBASEBALLパワフルプロ野球』(仮題)を発売することも発表されており、詳細な発売時期は未定ですが、従来の国内大会とは規模の異なる新たなeスポーツ大会が展開されていくのではないでしょうか。

 

現実の自動車メーカーも参入する国際的な競技シーンが展開されているレーシングシミュレーター『グランツーリスモ』も、更なる変化の可能性を秘めたタイトルです。現行タイトルの『グランツーリスモ7』がPSVR2への対応を発表しており、現時点では「VRゲームを用いたeスポーツ」の可能性が最も高いタイトルのひとつではないかと考えられます。

 

VR技術は没入感が高い一方で画面酔いなどを引き起こす可能性があり、特に激しく視点を動かすゲームとはあまり相性が良くないこともあり対戦ゲームはあまり注目されていません。しかし『グランツーリスモ』は実車のプロレーサーもトレーニングに使用できると言われるほどのリアルさが特徴のタイトルであり、高画質かつ操作性が向上したPSVR2を使用することでドライバーの視点をより忠実に再現した“VRならでは”な競技シーンも実現可能なのではないでしょうか。

 

 

現代は娯楽の選択肢が多彩と言われており、その娯楽の一ジャンルであるゲームもまた非常に選択肢が多くなった今、新しいゲームが多数のファンを確保するのは簡単ではありません。新作のリリースや大型アップデート時は話題性が高まることで新規プレイヤーや影響力のある配信者を呼び込みやすく、ブームを築く大チャンスです。特に対戦ゲームでは快適に同程度のプレイヤーとの対戦を成立させるためにもプレイ人口の多さが重要であり、eスポーツにおいて「新作の発売」は、RPGやシミュレーションなど時期を問わずに楽しめるゲーム以上に大きな転機となる可能性を持っています。

 

2023年に新たにeスポーツ界で勢力を拡大するゲームは既存シリーズの最新作か、それともアップデートでフレッシュさを取り戻すタイトルか、はたまた未知の新タイトルなのか。そうした視点でeスポーツの流れを追いかけてみると、違った楽しみが広がります。

 

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