8月22日から25日の4日間、大阪府の泉佐野市で「eスポーツキャンプ」が開催されました。
本イベントは全国の高校生を対象に、3泊4日の日程でシューティングゲーム『VALORANT』の練習・コーチングを受けられるというもの。昨今は一般のプレイヤーを対象にゲームのコーチングを行うという企画自体も増えていますが、今回のような宿泊を伴った大規模なものとなると非常に珍しいケースです。
全国から高校生が集まった本イベントの内容をレポートで紹介いたします。
会場となったのは大阪府泉佐野市「りんくうタウン」駅から徒歩2分のオチアリーナ。360度全方位LEDモニターを備えた非日常感溢れる空間に多数のゲーミングPCが設置され、大勢の参加者が一堂に会してプレイできる環境が整備されていました。
採用タイトルとなった「VALORANT」は5人1チームでの対戦となるため、参加者は参加時点での実力に合わせてチーム分けが行われ、各チームごとに練習を行っていきます。
イベントは練習環境の提供だけではなく、参加者のスキルアップのための仕組みもあります。それぞれのチームには専属のコーチがついて練習の様子を見守り、個人やチーム単位で小まめにアドバイスを送っていました。コーチを務めたのは、ゲームのオンライン家庭教師サービス『ゲムトレ』のトレーナーであり、 “本職”のトレーナーの指導に参加者たちは真剣な眼差しで聞き入っていました。
△参加者には名前入りのオリジナルユニフォームが配布されました
キャンプ期間中は午前から夕方までじっくりと練習時間が確保されており、練習後は会場近くのホテルに宿泊という「VALORANT」に没頭できるスケジュールになっています。初日にチーム分けが行われ、練習によってしっかりとチームとしての熟練度を高めたのちに3日目から4日目にかけて練習の成果を発揮する場として全チーム参加のトーナメントが行われるという流れです。
三食宿泊つきでゲームプレイのための環境も用意されているため、参加者は身の回りのものと使用したいデバイスだけ持って参加すれば4日間ゲームに集中できる夢のような環境になっています。今回のイベントは、ゲームに関連する部分はウェルプレイド・ライゼスト社が企画し、旅行に関する企画・実施は南海国際旅行社が担当しました。
「eスポーツキャンプ」の主催である泉佐野市や『ゲムトレ』のトレーナーも含め、まさに宿泊付きのeスポーツ合宿を成功させるための専門家が集まったことで、他にはない本格的な環境が実現しました。
本イベントは大阪・泉佐野市で開催されましたが、北海道や九州など関西圏以外からも多数の高校生が参加し、最終的に44名での実施となりました。腕前もゲーム内での高ランクプレイヤーから中級者まで幅広く、ひとくくりに高校生と言っても非常に幅広い層のプレイヤーが参加していました。
実際に参加者に話を聞いてみると「友人と大会に参加したことがある」という方から、「オフラインでゲームをすることが初めて」という声も。休憩を挟みながらとは言え1日中「VALORANT」を練習することに対する疲れは全く聞かれず、特別な環境でのプレイに胸躍らせている様子でした。
特別ゲストの存在も参加者のモチベーションを高めており、2日目には人気ストリーマーのJasperさんやMOTHER3さんが来場し、写真撮影やアドバイスなどで交流。3日目からの大会にはeスポーツキャスターのOooDaさんとプロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」からコーチと選手が参加し、大会の模様をプロシーンさながらの実況解説で大いに盛り上げました。
ゲーム内ではオンラインでのプレイと同様にチーム全員でボイスチャットを繋ぎ、会話が行われていましたが、それでも取材中には会場のあちこちから「ナイス!」「うまい!」と直接相手に届けるような大きな声が響いており、チームメイトのナイスプレーにはグータッチを交わすなどオフラインならではのコミュニケーションを思う存分に楽しんでいる姿が見受けられました。
今回のイベントは個人単位での申し込みのため全ての参加者が初対面だったと想像されますが、どのチームも積極的にコミュニケーションを図っており休憩中にも自主的に輪になって話し合う参加者ばかり。普段の高校生活では1つでも年齢が違えば先輩後輩という間柄になるはずですが、合宿中は年齢を問わず「VALORANT」という共通言語を介した仲間意識で繋がっている光景が印象的でした。
いまは、自宅でも満足なプレイ環境を整えることが可能になり、コーチングもオンラインで受けられる時代です。そのためフィジカルスポーツと比べてeスポーツのアマチュアシーンでは「合宿」のような練習形式が採用されることはあまり多くありませんが、短期集中型で施設に集まっての練習は「ブートキャンプ」と呼ばれ、eスポーツのプロシーンでは定番になっています。
今回の事例を見ても実際に集まってプレイをすることによるメリットはアマチュアeスポーツでも少なくないと感じられます。環境をセッティングすることで時間の効率化がはかれ、練習意欲も高まり「上達を実感している」という声も参加者から多数聞かれました。合宿期間後でも、オンラインで一緒にプレイする様子が見られ、繋がりが一時的になりづらいのもフィジカルスポーツにはない長所です。
昨今のeスポーツ界は、様々なタイトルで学生年代に向けた大会も増加しており、10代のコミュニティや競技シーンが活発になり始めているため、今後こうした取り組みが広がって行く可能性には注目が集まります。
また、今回のように全国各地から参加者が集まるためには関西空港から一駅という本イベントの会場となった泉佐野市の立地も大きな魅力です。泉佐野市は「e スポーツ先進都市・泉佐野市」を目指す方針を打ち出し、今年6月より、南海電気鉄道株式会社を委託者として「e スポーツ MICE コンテンツ実証事業」を始めており、今回のキャンプもその一環として実施されました。
夏休み期間に行われた高校生対象のeスポーツキャンプが成功に終わったことで、今後はどのようなタイトル・ターゲット・タイミングでイベントが企画されていくのか。泉佐野市の取り組みにもあわせて注目していきたいと思います。