プレイに影響を与える応答速度の重要性とは?

オンラインゲームで重要な「ping」を解説

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ゲーム対戦競技のeスポーツ。日本では古くからゲームセンターに代表されるオフライン対戦が親しまれてきましたが、近年は国内外ともにオンライン対戦が主流になりつつあります。

 

今でも格闘ゲームなど1vs1対戦のジャンルでは1台のゲーム機に複数の操作デバイスを接続して対戦することは可能です。しかし、複数人で同時に対戦するジャンルになれば、各々のプレイヤーが使用するPCやモバイル端末をネットワークに繋ぐ必要があり、どのような環境であっても常にオンラインでのプレイになります。

 

同じ場所にいなくても気軽に楽しめるオンライン対戦ですが、快適にゲームを楽しむためには良好なインターネット接続が必須です。ネット回線の良し悪しを判断する際には「ダウンロード速度」を気にする人が多いかも知れませんが、オンラインゲームでは「ping(ピング)」の値をチェックする必要があります。

 

オンラインゲームで通信のラグを感じる場合は、サーバーの混雑やゲーム機の処理能力不足など、多くの要因が存在します。その中でも今回は「ping」についてご紹介いたします。

 

接続を確認するコマンドが由来の「ping」は応答速度の指標

 

pingとは元々、ネットワークの接続を確認するためにPCで使用されるコマンドのことです。特定のWebサイトなどを指定してpingコマンドを入力するとPCから信号が送られ、その信号に応答が返ってくるかどうかでネットワーク接続をチェックできます。

 

このping確認では応答があったか否かに加えて「どれくらいの速度で信号が返ってきたか」を示す「応答速度」も確認できます。この応答速度が「ping値」であり、この値が小さいほど、信号がすぐに返ってくる快適な通信状況と言えます。

 

ping値は一般的に1000分の1秒を意味する「ms(ミリ秒)」の単位が使用されます。ping値が「10」と表示されている場合は、そのサーバーに対して何か信号を送ってから10ms、つまり僅か100分の1秒で自分のところへ送り返されていることを意味しています。

 

オンラインゲームでは、このようなデータのやり取りが常に行われており、各プレイヤーの操作がゲームサーバーへと送られ、それらが再び各プレイヤーへと送り返されています。サーバーで通信を処理する手段にはいくつかの方式があり、ゲームの内容などに合わせて選ばれています。多人数のプレイヤーがネットワークを通じてゲームを遊べる「同期」技術は詳しく見れば非常に奥深い技術が用いられているのですが、今回の話題において重要なのはいずれの方式でも共通して「常にデータをやり取りし続ける必要がある」という点です。

 

△上の方式は各自の処理でズレが発生しないよう少人数対戦のゲームに使用され、多人数対戦では下の方式が採用されることが多くなっています。

 

ping値が高いプレイヤーがいると情報のやり取りに遅れが生じ、自分の思った通りの操作が出来なかったり、画面上で見えている内容と実際に処理される結果とで相違が生じたりする可能性もあります。このような理由から、素早い反応と精密な操作が重要となるオンラインゲームではpingの値が小さければ小さいほど良いとされているのです。

 

pingを左右する最大の要因は「物理的な距離」

 

では、ping値はどの程度の数字なら快適にプレイできるのか。ユーザーの体感による部分も大きいので厳密な境界線は設定されていませんが、30程度までが快適にプレイできる目安とされており、100を超えるようならハッキリと遅延を体感できるくらいです。

 

ゲームプレイにおいては画面が1秒間にどれだけ細かく書き換えられるかを示す「リフレッシュレート」も重要視されますが、家庭用ゲーム機でも昨今は秒間120枚の描写が登場しています。ユーザーは120分の1秒単位で描写される映像に慣れていると考えると、pingが10msや20ms大きくなるだけでも敏感な人は気になるのではないでしょうか。

 

pingの値はもちろんインターネット環境の影響を大きく受けて変動します。インターネット回線の質と言えば「1秒あたりにどれだけデータのやり取りが行えるか」を示す通信速度がよくアピールされていますが、実はオンラインゲームでのデータのやり取りはタイトルによって差はあれど、1秒あたり100MBもあれば十分とされています。

 

 

ただ、速度が十分な回線に接続していれば、速度に比例して良いping値が出る訳ではありません。有線接続に比べて安定性に欠く無線接続を使用している場合や、ひとつの回線で同時に複数の端末が大容量のデータ通信をしている場合は、pingが高くなってしまうことも珍しくなく、接続する機器側の不調もpingには影響します。

 

そして、どれだけ快適な環境を揃えても解消不可能であり、最もpingに影響を与えている要素が物理的な距離です。通信元とサーバーとの距離が長くなればデータの往復には必然的に時間がかかり、応答にはその分長い時間を必要とします。日本国内ではオンラインゲームのサーバーは東京に設置されていることが多く、同じゲームに同等のネット環境で接続する場合でも東京からと沖縄からとを比較すれば、沖縄の方がping値は間違いなく大きくなるのです。

 

距離による遅延は国内のプレイヤー同士であれば問題なくプレイできる範囲に収まりますが、海外への接続となれば、日本から比較的近いと言える韓国のサーバーでも多少なりともラグの発生は避けられません。動画の視聴やオンライン会議であれば海外との通信も難なく行える時代ですが、僅かな操作の差が勝敗を分けるeスポーツの舞台では、海外のチームと練習試合をしたくてもpingの問題が壁となっているのが現状です。

 

 

コロナ禍ではping均一化の工夫も

 

コロナ禍でのeスポーツ界は海外渡航を伴うオフラインでの世界大会が制限され、オンライン開催となるケースが多くありました。しかし世界中のチームが参加する形式は実現せず、アジア圏内やEU圏内など比較的小さなラグでプレイできるエリア別に分けて代替大会が開催されてきました。

 

昨今は少しずつオフラインでの国際大会も増えてきましたが、5月に開催された『League of Legends』の世界大会では、中国代表チームが開催地である韓国への渡航制限によりオンライン参加となりました。この大会では全チームが平等な条件での試合となるよう、現地で試合をするチームにも人工的に遅延を発生させるツールを導入して全試合がping「35ms」に調整されていました。

 

高速回線の普及によって日本国内であれば良好な回線と適切な環境があれば快適なプレイは間違いなく実現できまるようになっています。ですが、海の向こうのプレイヤーと双方が快適な環境でプレイするにはまだ技術の発展を必要としているのが現状です。

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