現在はオンプレミスよりもクラウドでのシステム開発の方がメジャーになりつつあります。その背景には、オンプレミスと比べたクラウドのメリットがあると考えられます。AWS、Microsoft Azure、IBM Cloud、Google Cloud、Alibaba Cloudなど、現在は多くのクラウド製品がリリースされていますが、今回はその中のAWSとAlibaba Cloudについて取り上げます。AWSは現在世界で最も需要があるクラウドで、Alibaba Cloudは今後大きくシェアを伸ばしていくことが予想されているクラウドです。
クラウドとは、クライアントがネットワークを介してサービスを受けることができるようになる仕組みのことです。ソフトウェアをインストールする必要が無くなり、必要な時に必要なサービスを受けることができるようになります。クラウドでの開発にはメリットが多く、今後もクラウドでのシステム開発案件は増えていくことが予想されます。そのため、インフラエンジニアはもちろんのこと、あらゆるITエンジニアにクラウドの知識が必要になります。ITエンジニアとして仕事をしていくのであれば、クラウド関連のニュースについて常にキャッチアップしておくことが求められます。
クラウドは初期コストを抑えられるため、すぐに始められます。オンプレミスの場合、自社にサーバーなどのハードウェアを用意する必要があり、時間とコストがかかります。また、クラウドはストレージなどリソースの増設もボタン一つで可能で、ソフトウェアのバージョンアップやパッチの適用などセキュリティ面もクラウド業者に依頼することが可能なため、企業側での運用の負担を減らすことができます。
AWSは現在クラウドインフラサービスで世界トップのシェアを占めています。2006年より企業を対象にサービスの提供が開始されました。世界で約三分の一のシェアを誇り、2位以下はすべて20%に満たないため他を大きく引き離しています
出典:Synergy Research 2018年第3四半期『クラウドインフラサービスのシェア率』
AWSのマーケットプレイス(クラウドで使用できるソフトウェアを購入できるサイト)は、Alibaba Cloudなどと比べ購入できるソフトウェアが圧倒的に豊富です。Webサイトの構築・運用、データ分析、IoTなど様々な用途に応じた使い方が可能です。
AWSは資格試験も用意されています。エンジニアは資格を取得することで転職などの際にAWSの知識をアピールすることができますし、企業側はクラウドエンジニアの採用の際の基準の一つにすることができます。システム開発ではクラウドの中でも特にAWSの知識や経験が求められることが多く、クラウドでのシステム開発に携わるエンジニアとしてAWSは必須のスキルになるでしょう。
Alibaba Cloudは現在クラウドインフラサービスで世界第5位のシェアを占めていますが、AWSと比べるとまだそれほど浸透していません。しかし、今後シェアを伸ばしていくことが予想されています。
その理由は、
・Alibaba Cloudは中国で最も需要があるクラウドであること
・中国の市場は圧倒的に規模が大きく、企業にとって魅力があること
・中国では世界で使われる多くのウェブサービスが使えない特殊な環境になっていること
が挙げられます。
中国には「グレートファイアウォール」と呼ばれるネット検閲システムがあり、Google Map、facebook、twitterなど多くのウェブサービスが利用できません。たとえば、中国では「Google Map」は使えず「Baidu map」というものを使用する必要があります。また、中国ではOSもWindowsやMacなど世界的に利用されているものではなく、独自のOSを開発しています。たとえば、「NeoKylin」は中国政府が利用を推奨しているOSで、Linuxをベースに開発されています。このような中国独自の問題への対応策として、中国でシェアの高いAlibaba Cloudを利用することが効果的な選択になると予想されています。
中国に自社サービスをリリースしたい多くの企業はAlibaba Cloudを利用することになるでしょう。特にECにおいて中国は世界で圧倒的に規模の大きい魅力のある市場のため、近い将来AWSに詳しいエンジニアよりもAlibaba Cloudに精通したエンジニアの方が需要が増える可能性があります。
今回はクラウドサービスについて説明しました。現在のシェアNo.1はAWSですが、今後は変わってくる可能性もあります。AWSのスキルを付けることは重要ですが、それだけではなく、常に世間の需要に関して情報収集しておくことや、その需要に合わせてスキルセットを考え必要な経験を積んでおくことが大切です。Alibaba CloudはAWSと比べると参考書籍も少ないため学習方法が限られてきますが、個人でもAlibaba Cloudにアカウントを作成し使用することは可能です。OJT的ではありますが、利用してみることが一番の学習になるため、試行錯誤しながら知識を深めるのも一つの方法でしょう。