フリーランスとして働くときに提出が必要になるのが「開業届」です。事業主としての公的な証明になるほか、節税面、信用面でもメリットを得られます。
ですが、公的な書類ということもあり、書き方に悩む方は多いのではないでしょうか。ここでは、開業届を提出することで得られるメリットや、自力で手続きするための「開業届」の書き方を説明します。
フリーランスの多くが開業届を提出しているのはなぜでしょうか。まずは、提出するメリットから説明します。
フリーランスが開業届を出す最大のメリットは「青色申告」が可能になることでしょう。開業届と共に、「青色申告承認申請書」を税務署に提出することで、青色申告の対象になります。
青色申告とは、複式簿記で帳簿をつけることを条件に、65万円の控除を受けられる制度です。課税される所得金額を65万円少なくできるため、収める税額も低くなります。
なお、開業届を提出しない場合は「白色申告」となり、控除額は10万円です。その差は55万円と、小さい額ではありません。
開業届を出すと「屋号」が使えるようになります。「屋号」とは、個人事業者が使用する商業上の名前のことです。
屋号を届け出ていると、「屋号」で銀行口座が開設できます。口座が個人名でなくなることから、取引先への社会的信用も増すと考えられます。
開業届を出し、個人事業主になると「小規模企業共済」に加入できます。これは、個人事業主や会社の役員が積立金に応じた共済金を受け取ることのできる制度で、個人事業主の退職金制度ともいえるものです。
毎月の掛金は1,000円から7万円までの範囲で自由に選択でき、この掛け金は全額所得控除となるため、節税になります。(ただし共済金受取時に課税あり)
まずは、開業届の記入の仕方を解説します。
書式のダウンロードはこちらから:個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)|国税庁
開業届を提出する管轄の税務署名と、提出日を記入します。管轄の税務署は、国税庁のウェブサイトで確認できます。
住所地・居所地・事業所の3つから、納税地に該当する場所を選択肢、住所・電話番号を記入します。
【住所地・居所地・事業所の違いとは?】
納税地をどこにすればわからない場合、住所地にしておけば特に問題はありません。もし事務所・店舗があり、そこを納税地にしたほうが都合がよい場合は事業所にしましょう。迷う場合は、管轄の税務署に相談しましょう。
氏名・生年月日を記入し、12桁のマイナンバー(個人番号)を記入します。押印する印鑑は個人/屋号どちらでも構いません。
職業欄には、プログラマー・WEBデザイナーなど、具体的な職業名を記入します。「屋号」の欄には屋号を記入しますが、ない場合は空欄で構いません。
なお、屋号を設けると、屋号での銀行口座の開設が可能になります。また、法務局で屋号を「商号登記」することもできるため、将来的に法人化を視野に入れているなら、ここで決めておくとよいでしょう。
届出の区分は「開業」を選択し、「所得の種類」は一般的に「事業所得」を選択します。フリーランスの方で当てはまる方は少ないかもしれませんが、不動産投資がメインの場合は「不動産所得」を選択しましょう。
開業日を記入します。店舗がある場合はオープンした日が開業日になりますが、フリーランスの場合は「開業した」とする日で問題ありません。
なお、開業届は、原則、開業日から1カ月以内に税務署へ提出する必要があるため、その点に気をつけましょう。
開業届と同時に、青色申告のための「青色申告承認申請書」を提出する場合、上段の「有」を選択します。
なお、下段は消費税課税事業者に該当するかの確認です。原則、個人事業主は課税売上高が1,000万円以下であれば消費税を課税されません。詳しくは以下のリンクを確認しましょう。
個人事業主としての事業の概要を、具体的かつ簡潔に記入します。
【例】
従業員がいない場合、空欄で構いません。
従業員がいる場合、青色事業専従者であれば「専従者」欄に、それ以外での従業員がいる場合は「使用人」欄に人数を記入しましょう。
リンク:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
税額の有無は、給与から源泉徴収する必要があるかが判断基準です。原則、給与が月額8万8,000円以上の場合「有」になります。
開業届が作成できたら、必要な書類をチェックして提出します。ここでは、提出までの手順を解説します。
作成した開業届は、管轄の税務署に提出します。開業届の提出方法は以下の3つです。
【開業届の提出方法】
提出の前に、必要な書類が揃っているか確認しましょう。持参する場合と、郵送/時間外収受箱に投函する場合で必要なものが異なります。
【持参での提出時に必要なもの】
持参する場合、マイナンバーカードを忘れず持っていきましょう。また、開業届のコピーは税務署では原則とってくれません。事前にコピーを用意して行くとスムーズに受理されます。
【郵送/時間外収受箱へ投函しての提出時に必要なもの】
郵送や、時間外収受箱へ投函して提出する場合は、マイナンバー確認書類のコピーと、各種書類の控えを返送してもらうための返信用封筒が必須です。返信用封筒には、返信先(自宅・事務所など)の住所を記載し、返送に必要な金額分の切手を貼ります。
なお、税務署へ郵送する際は、書留やレターパックなど追跡できる方法にしましょう。
開業届は、原則、事業を開始した日から1ヶ月以内に税務署に提出する必要があります。忘れないよう、フリーランスとして活動開始したら早めに提出しましょう。
開業届の提出は法的に求められてはいますが、遅れたことでの罰則はありません。ですが、開業届を出さなければ青色申告が出来ませんので、提出しない場合、税金面でデメリットがあります。
また、開業届は以下のような場面で必要になります。
フリーランスが開業届を出すメリットと、開業届の書き方を中心に解説してきました。
フリーランスとして働くのであれば、特別な事情がない限り速やかに開業届を提出しましょう。開業届の手続きは難しいものではなく、信用面・節税面で得られるメリットも小さくありません。
この記事を参考に開業届を提出して、フリーランスとして働く下地を整えましょう。
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