「世界遺産から世界と繋がる」群馬県庁eスポーツ課インタビュー

#eスポーツ

 

「世界遺産でeスポーツ」という、一風変わったイベントが行われたことをご存知でしょうか。2021年3月、群馬県の富岡市にある世界遺産の富岡製糸場でeスポーツイベントが開催され、エキシビションマッチやeスポーツに関する意見交換会が開かれました。

 

このイベントに限らず群馬県ではeスポーツへ本格的に取り組んでおり、庁内には「eスポーツ部」も存在しています。

 

今回は、行政というバックグラウンドの中でeスポーツへと取り組む群馬県庁へのオンラインインタビューを実施しました。産業経済部戦略セールス局eスポーツ・新コンテンツ創出課のeスポーツ係より係長の田部井敦さん、そして山﨑征一郎さんにお話を聞きました。

 

──まずは群馬県としてeスポーツに取り組むようになった背景からお話いただけますか?

 

山﨑 近年盛り上がりを見せるeスポーツは地方創生、いわゆる「ひとづくり・まちづくり・しごとづくり」のどの分野にも関わることが出来て、新たな視点に寄与できることが大きな魅力です。加えて、eスポーツに先進的に取り組んでいくことで「群馬県のブランド力向上」にも繋がると考え、経済とブランド両面への効果を期待しています。

さらに、2020年、県内にオープンした大型コンベンションセンター「Gメッセ群馬」をeスポーツの拠点施設として活用できることになったのも背景にあります。

 

──行政の立場へeスポーツという文化を導入していくにあたっては、難しさもあったのではないでしょうか。

 

山﨑 そうですね。やはり単純にゲームとどう違うのか、子育て層や年配の方には分かりづらい点も多いかと思われますし、ゲーム依存を心配する声もあります。私たちは産業経済部の所属なので、eスポーツの市場性や関連産業の広がりなどから、主に産業や地域の活性化について取り組んでいますが、健康福祉や教育の分野とも協力しながら両輪でやっていく必要があると感じています。

 

△「U19eスポーツ選手権」の会場となったGメッセ群馬

 

県内でまだまだeスポーツの土壌が完成しているとは言えませんので、eスポーツの魅力と併せて、様々な対策についても伝えていくことが必要です。例えば、若い世代に対してはパソコンゲームを推奨しており、eスポーツを入り口としてデジタル機器を使いこなせる人材を育成していきたいと考えています。

 

田部井 群馬県の山本一太知事はいろいろなことに積極的で、将来への投資として期待が持てるeスポーツへの取り組みにも理解があります。全国の県庁でeスポーツ課があるのは群馬県だけというのも、県としてeスポーツを活用した取り組みとその効果に期待しているからです。

 

──既に数多くのイベントを実施されていて、富岡製糸場でも開催されたというニュースを拝見しました。

 

 

田部井 ブランド力を高めるためにも多くの人に関心をもってもらえることをやっていきたいという考えがありますし、注目されることで取り組みが知られればeスポーツの土壌づくりにも繋がります。昨年度実施した一番大きな大会は「U-19eスポーツ選手権」ですね。Gメッセ群馬を会場で19歳以下の若者を対象にした『League of Legends』の全国大会を開催しました。

 

他にも県内の観光資源を有効活用してeスポーツに絡められないか、ということで世界で見てもほぼ前例のない「世界遺産でeスポーツ」として富岡製糸場でのイベントを開催しました。富岡製糸場にはイベントができる素敵な会場が整備されていますので、イベントの演出にも大きな効果があったと思います。

 

 

△当日の模様

 

──反響は大きかったのではないでしょうか。

 

田部井 SNSなどでは世界遺産で行われるeスポーツそのものへの反響もありましたし、「富岡製糸場ってそんなことできるんだ」という声もあって、若い人の気付き・発見につながったのではないかと感じています。

 

県としてはeスポーツを通じて「世界と繋がる」というテーマがあるので、当日はフランス人の方にも参加していただきました。将来的にフランスの世界遺産とオンラインで繋がっての対抗戦が実現したら面白いんじゃないかと思います。富岡に限らず県内のいろんな観光資源を活用し、eスポーツを通じて地域をPRしていきたいとも考えています。

 

 

──今も少しお話がありましたが、県として「今後こうしたい」というアイデアがあればご紹介いただけますか?

 

田部井 県の取り組みは、大会・イベントの開催・誘致、土壌づくりをベースに考えています。まず、昨年と同様に「U19eスポーツ選手権」は継続開催を目指しています。他にもまだまだ今後詰めていく段階ではありますが、実況にスポットを当てたコンテストなどは面白いのではないかと考えています。eスポーツをエンタメとして捉えたとき不可欠な実況・解説ですが、有名な人が限られていたり地方では人材が不足していたり、同時開催のイベントが難しい状況にあると思います。実況者の登竜門になるようなコンテストとして、こうしたアイデアが生まれました。

 

──それは大変魅力的なコンテストになりそうです。

 

田部井 他にも社会人eスポーツを普及させるためのイベントなど、色々な「eスポーツ×〇〇」という風に掛け合わせたイベントをやっていきたいですね。

 

──掛け合わせイベントの開催は、他との差別化にも繋がると思います。「U19」という大会カテゴリも、あまり見られないものですよね。

 

田部井 世界を意識しているので、サッカーの国際大会などを参考にしました。また、同じ学校である必要はないので大学生と高校生で編成されたチームでの出場も可能で、チームのバラエティは豊かです。『League of Legends』というタイトル選定も世界と戦う事を想定してのものなので、ゆくゆくは世界の同年代と対戦できるようになれば盛り上がるでしょうね。

 

──確かに近年は高校生年代の大会も盛り上がっているので、新たなカテゴリとして意味のあることかなと思います。世界と繋がることがひとつのキーワードなんですね。

 

田部井 他にも北米教育eスポーツ連盟の日本本部、NASEF JAPANという団体と連携して「eスポーツに取り組む前のチェックシート」の日本語版を作成し、HPに掲載しています。eスポーツが学習や教育を促進するための効果的ツールとして活用され、若者や子供の勉強やコミュニケーション、社会性に良い影響を与えられるように、ワールドワイドな観点から「教育的eスポーツ」という考え方の啓発活動も行っています。

 

──そして群馬県庁には「eスポーツ部」も存在していると伺いました。

 

田部井 実は私が部長で、山﨑が副部長なんです。

 

──それでは早速聞いていきたいと思いますが、まずはこちらも発足の経緯から教えていただきたいです。

 

山﨑 eスポーツ課としての取り組みにあたって、私も田部井もeスポーツ課にくるまで知らないタイトルが多かったんです。やはり群馬県で普及させていくためには、まず私たち自身が率先してそのタイトルを知って楽しまないと、ということで発足しました。産業経済部内の同好会としてスタートして、現在は全庁を対象にeスポーツ部として活動しています。

 

△群馬県庁eスポーツ部活動の様子 (写真中央が田部井さん、右が山﨑さん)

 

──現時点でのメンバー数は何名ほどでしょうか。

 

山﨑 現在はオンラインでの活動がメインとなっていますが、使用している通話ツールのサーバーには30名程度が所属しています。メンバーの経験や腕前は非常にさまざまですね。

 

──初心者の方も多いということですね。

 

山﨑 そうですね、プレイしているタイトルもいろいろで、これまで『ウイニングイレブン』や『ぷよぷよ』で大会に出場してきましたが、FPSなどのジャンルにも取り組みたいと考えています。皆が楽しめることを一番に、少しずつ幅を広げていきたいですね。

 

──以前はオフラインでも活動をされていたんですか?

 

山﨑 昨年の秋ごろまではオフラインで活動していました。特に「経験が少ないけどやってみたい」という人にとってはオフライン会場のメリットがあったと思います。オンラインだと機材がなくて参加できないという声もあるので、そこをどうクリアしていくかが課題ですね。

 

──勝敗や経験に関わらず「自分でやってみる」というのは、非常に意味のあることだと思います。

 

山﨑 今後も続けていきたいですね。私も、「U19eスポーツ選手権」があるので『League of Legends』をプレイしてみたんですが、本当に難しくて「このゲームはのめり込んで、頭を使ってプレイしないとダメだな」と感じました(笑)。

 

──近年は社会人eスポーツ部も少しずつ増えつつありますが、県庁内の部活動は他の企業内eスポーツとの違いがあるものなのでしょうか。

 

山﨑 職種が様々で、単純に人材が多いのは利点かと思います。以前、株式会社日立システムズさんのeスポーツ部とオフライン交流戦を行ったのですが、意外と活動自体の違いはそこまでないのかなと感じました。オンラインでの活動方法や運営機材など、同じような部分が課題としてあるようです。

 

田部井 活動の柔軟性については違いがあるかと思います。もし業務の時間内に部に関わる何らかの活動をする場合は休暇の取得が必要になりますので、そうした点は間違いのないように気を付けています。一方で、県庁にeスポーツ部があるという事実だけでも驚かれたり興味を持たれたりすることがあるので、メリットもありますね。

 

──eスポーツ部の今後については何か目標のようなものはありますか?

 

山﨑 参加可能な大会には出来る限り出場して実績を積んでいきたいです。庁内にはまだまだ上手い職員も居ると思いますので、そういう人を巻き込みながら「群馬県ってeスポーツ部があるんだ」と存在を知って貰えれば、社会人の方がeスポーツに取り組むキッカケにもなるのかなと思います。

 

──こうした取り組みが続くことで、色々なプラスの効果も生まれると思います。本日はありがとうございました。

 

田部井・山﨑 ありがとうございました。

 

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