勝敗を決める“盤外戦”

eスポーツ観戦が更に面白くなる「メタ」とは

#eスポーツ

皆さんはゲームをしていて「メタ」や「メタる」という言葉を聞いたことがありますか?あるいは「環境」という言葉なら聞き馴染みがあるかも知れません。

 

これらは主に対戦ゲームでの「流行している戦術」に関連した言葉であり、eスポーツでも重要になるポイントのひとつです。

 

今回は、知ることで普段のゲームやeスポーツ観戦が更に魅力的なるメタという言葉と、それによって繰り広げられる駆け引きについて紹介します。

 

そもそも「メタ」って何?

 

メタとは元々カードゲームの駆け引きから生まれた言葉とされていますので、その誕生の経緯を簡単に説明しましょう。

 

カードゲームでは試合中の手順が重要であるのはもちろんのこと、対戦前にどんなデッキを組むのかが勝敗を大きく左右するポイントです。単純に「強いデッキ」という観点を突き詰めれば「どんなデッキに対しても勝てる可能性が高い」ものが理想なので、皆がこぞって効果やパワーが強いカードを集めます。すると、必然的に誰もが認める最強の「デッキA」が誕生します。

 

こうした状況で大会を開けば皆が「デッキA」を持って出場してきます。戦力差がないために、誰が一番上手く使えるかの勝負になる……かと思いきやそうではありません。ここで登場するのがA対策のためだけに構成された「デッキB」です。これはとにかく「デッキA」に勝つことだけを目的に対策したものなので他の相手には滅法弱く、知名度も高くはありませんでしたが、大会での対戦相手は「デッキA」ばかりなので優勝することが出来るのです。

 

 

まさかそんな簡単に、と思われるかも知れませんが、過去には世界大会レベルの規模でもこうした対策法が見事に決まって優勝した例が沢山あります。当然、次の大会では「デッキB」に対策されないようアレンジした「デッキA´」が登場したり、逆に「デッキB」を対策した「デッキC」が作られたりするので、流行は変化していくのです。

 

非常にざっくりとした説明ではありますが、こうして対戦前から相手の傾向を読んで相性を上手く利用する駆け引きを、ギリシャ語で「高次の」という意味の接頭語である「meta」を用いて「メタゲーム」と呼んだことがメタの始まりとされています。

 

更に細かな概念や定義も存在するのですが、今回はひとまずゲームにはこうした相性による駆け引きがあって、それがぐるぐると巡っていくものである。ということをご理解いただけたら問題ありません。

 

実際にゲームをプレイしながら『今のメタはAだね』や『AをメタるにはBを使おうよ』と使っているプレイヤーも細かい背景や意味まで把握している人ばかりではありませんので、段々と「流行りとその対策」という両面の意味を持つ広い言葉へと変化してきているのが現状と言えるのではないでしょうか。

 

移り行くメタを知る楽しさ

 

こうしたメタは「環境」とも言われ、殆ど全てのeスポーツタイトルで日々研究・対策が進められており、プロチームともなればアナリストと呼ばれる役職を設けて分析に力を入れているところもあるほどです。

 

eスポーツを観戦するにあたっては、そのタイトルでどんな戦術やキャラ選択が流行しているかを事前に知るだけで視点が広がります。メタに沿った構成なら「完成度の高さに注目だな」と考えることができますし、メタと違う戦術なら「何か狙いがあるのかな」と予想してみるのも面白いです。

 

時にはあっと驚く戦術が新たに生まれることもあります。6人1チームで対戦する『Overwatch』というゲームでは、それまで【壁2・攻撃2・回復2】が役割を振り分ける際の定石とされてきました。その中で突如として【壁3・攻撃0・回復3】の構成が出現した時期があります。

 

発案チームの名を取って「GOATs」と呼ばれた構成の狙いは、手短に表現してしまえば「体力が多いキャラを目一杯回復しながら突撃すれば、狙撃手などの攻撃役は不要」というシンプルなもの。しかし、高い技術で連携されるとこれが全く手が付けられず、プロシーンでもこの構成しか見かけないという事態にまで発展しました。

 

約1年もの期間に渡って環境を席巻したGOATs構成は中心となるキャラがアップデートによって著しい弱体化を受け、それどころか今では「各役割を2体ずつ選ぶこと」が競技シーンやランクマッチでのルールになっているほど。当時のプレイヤーは移り変わるメタへの対応が大変だったと想像されますが、ユーザーによる研究の成果がゲームの仕様まで変えてしまった興味深い例のひとつです。

 

昨今のタイトルは定期的にアップデートが入るので、メタの移り変わりは非常に激しくなっています。同じゲームで同じチーム同士の試合であってもマンネリ化を避けられるので、eスポーツの面白さを支えている要素のひとつであることは間違いないでしょう。

 

 

新たなマップやキャラクターが追加されればすぐさま分析・研究が行われるので、大会では「新しい要素を取り入れるチームがあるか?」というポイントに着目するのもオススメです。対策の早いチーム、変った戦術を練ってくるチーム、王道のメタでとにかく高い完成度を目指すチームなど、それぞれのカラーが見えてくるかも知れません。

 

 

自分なりの楽しみ方の糧に

 

メタを知ることのメリットは観戦だけに留まりません。むしろ自分でプレイするときにこそ重要と言っても過言ではないでしょう。

 

やはり対戦ゲームをプレイするからには勝利する達成感と自分が上達することの喜びを目指したいものでしょう。トッププロ達によって導き出されたメタは現時点で有効であることは間違いなく、勝利や上達への重要なアドバイスとして捉えることができます。細かな技術と違い、戦術は真似しやすく、すぐに取り入れることが可能です。

 

プロの対戦を見れば自然と流行は察することが出来ると思いますが、もう一歩踏み込んで「なぜその戦術が強いのか?」ということも理解しておけば、対策やアップデートへの適応力も磨かれていくでしょう。

 

とは言え、カジュアルにゲームを楽しみたい人にとってはメタへの適応は強制されるものではありません。流行りには沿わなくとも「自分の好きなキャラや戦術で勝つ」ことをモチベーションの柱としている人もいるでしょうし、それもまた魅力的なスタイルです。

 

トッププロのレベルの中でも、メタに流されることなく自分のスタイルを貫く猛者も存在していますので、もし自分と同じスタイルで頑張っている選手を見つけたら応援してみる。そんな楽しみ方もまた、メタを知ることで生まれてくるでしょう。

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