IoT(Internet of Things)とは、モノがインターネットを介して通信し、データを交換する技術の総称です。そして、この革新的な分野に携わるエンジニアを、特に「IoTエンジニア」と呼びます。
IoTエンジニアの専門範囲は広く、プログラミングはもちろん、組み込みシステムや、ネットワーク・セキュリティ、さらにAIや機械学習にまで及びます。それだけに、フルスタックのIoTエンジニアの需要は非常に高くなっている状況です。
ここでは、ますます成長するIoTについての基本的な知識と、IoTエンジニアに必要とされるスキルやIoTエンジニアになる方法などについて解説していきます。
以下の記事でIoT技術について解説していますので、合わせてご覧ください。
近頃、耳にする機会の多い「スマート家電」や「スマートホーム」といったものもIoTの一例であり、私たちのライフスタイルを大きく変える可能性を秘めています。
IoTでは具体的にどのようなことができるのでしょうか。ここでは、身近な例を挙げてご紹介します。
従来の家電にインターネットを介した通信機能を搭載したものがスマート家電です。
例えば、外出中に部屋の温度を確認できる温度計、遠隔操作のできるエアコン、留守中のペットの様子を確認できるペットカメラなどがあります。他にもレシピをダウンロードできる電子レンジや、外出先からカメラで庫内を確認できる冷蔵庫なども登場しています。
スマートスピーカーと連携して操作できるスマート家電も多くなっており、スマート照明やエアコンを組み合わせれば、帰宅後に声で操作することで、部屋の電気とエアコンをONにするといったことも可能です。
ウェアラブルデバイスとは、腕時計や指輪の形をしたアイテムで、心拍数などを計測するセンサーなどが組み込まれています。有名な製品としてApple Watchがあり、スマートウォッチとも呼ばれます。
近年は機能が進化しており、心拍数や血中酸素濃度を測定し、睡眠の解析なども可能になっています。装着している間は常に体の状態をモニターできるため、スポーツ分野や医療分野からも注目を集めています。
また最近では、大きな衝撃などを感知して、装着している人の事故や転倒などの異常を察し、インターネットや4G/5G回線を通じて自動的に通報する機能が搭載された製品も登場しており、人の命を救うものとしても注目されはじめています。
スマートメーターとは、IoT化された電力計(電気メーター)のことです。従来は、電力会社の検針員が各家庭の電気メーターを検針し、目視で確認してきました。しかし、スマートメーターには通信機能が組み込まれているため、検針作業が原則不要になり、検針ミスもなくなります。
スマートグリッドは、電気の利用状況や、各家庭での使用状況について、インターネットを介してリアルタイムで把握し、収集したデータを電力の有効活用のために利用する、次世代型エネルギーシステム全般のことです。これにより、電力会社はより正確に必要な電力量を把握できるようになり、エネルギーの効率利用に役立つと考えられています。
IoTの概念についての議論は80年代からスタートしており、90年代にはマイクロソフトがIoTの走りとなるサービスを発表し、マサチューセッツ工科大学も実証実験を行うなどの動きがありました。2000年代になると、機械どうしの通信を指す「M2M」という概念が登場し、ドイツでは国家戦略として製造業へのIoTの導入を進めました。これがIoTの第2波と考えられています。
現在は、2013年頃から続く第3波の最中にあります。さまざまなスマート家電や、Apple Watchに代表されるウェアラブルデバイスが登場し、IoT製品が一気に普及、私たちの身近なものになりました。
これからは、AIや機械学習がカギになると考えられています。自動運転車に代表されるように、センサーから収集したデータを元に自己学習を繰り返し、人が介在しない制御も次々と実現していくことでしょう。
IoTエンジニアは、IoT製品そのものや、技術開発を行うエンジニアです。IoTデバイスとシステムの設計から、通信をささえるネットワーク・セキュリティの設計まで、ハード/ソフト両面に携わります。
IoTエンジニアは、多方面における専門的な知識を集結させ、システムやデバイスを作り上げていきます。そのため、幅広い知識と経験が必要です。ここでは、IoTエンジニアに求められる具体的なスキルを解説します。
家電製品や自動車などのモノをIoT化するためには、モノに組み込まれたコンピューターを制御する「組み込み系システム」に関する知識が必要となります。使用されるプログラミング言語は、主にC言語です。
IoTエンジニアの特徴として、プログラミング言語だけでなく、IoTデバイスのハードウェアにも精通している必要があり、基盤やセンサーなど、ハードウェア全般の知識が必要になると考えましょう。
IoT端末はインターネットに接続して真価を発揮するものです。そのため、ネットワークに関する知識も必須となります。
Wi-Fiや5G回線などの通信技術はもちろん、BluetoothやNFCなどの無線系のスキルも身につける必要があります。
IoT端末は、ユーザーのスマートフォンなどを介して個人情報とも密接に関わります。そのため、セキュリティに関する知識も必要です。
ネットワークを介したハッキングや、不正アクセスに負けない、安全なセキュリティシステムを開発することが求められます。
昨今のIoT端末は、操作やデータの確認、ネットワーク設定などのために、スマートフォンアプリに連携されることが一般的です。そのため、スマートフォンアプリに関する知識も必須となります。
IoT端末が集めた情報は、ビッグデータとしてクラウド上に蓄積され、製品開発や、生活の向上のために活用されることが一般的です。
その際、AIによってデータを解析しシステムに学習させるため、IoTエンジニアにはAIや機械学習に関する基本的な知識も求められます。AIに効率よく学習させたり、膨大なデータを活用したりすることも、IoTエンジニアの重要事項といえます。
IoTは、あらゆる産業での活用が認められており、今後需要がますます伸びるものと予想されています。
しかし、IoTエンジニアには非常に幅広い知識が求められることもあり、慢性的な人手不足となっている状況です。特に、高度な設計・分析スキルを持った人材は引く手あまたといえるでしょう。
先述の通り、IoTエンジニアになるには幅広い知識が必要です。すでに組み込み系エンジニアや、ネットワークエンジニアとして実務経験があるエンジニアなら、足りない部分の知識やスキルを独学やプログラミングスクールなどで学ぶ必要があります。
未経験からIoTエンジニアを目指すのであれば、大学や専門学校などでスキルを身につけ、まずシステムエンジニアを目指すことからスタートとなります。その後、ネットワークやハードウェアに関する経験を積み、IoTに関連する知識やスキル、実務経験を積むとよいでしょう。
IoTエンジニアの求人が多いのはメーカー系です。自動車メーカーや家電メーカー、さらに医療系の精密機器メーカーなどがIoTやAIの活用に積極的です。また、こうした動きは金融系などの他業界にも拡大しつつあります。
さらに、IoTやAIに関して先進的な技術を持つベンチャー企業も多くなっています。投資ファンドや起業家はこうした分野に投資を行っており、今後さらに盛り上がりをみせる可能性があります。
IoTエンジニアには必須となる資格はありません。しかし、資格を取得することで知識やスキルをアピールしやすくなるなど、役立つ資格があります。
IoT検定は、IoTに関する知識やスキルを問う検定です。IoTデバイスそのものの知識だけでなく、クラウド環境のプラットフォームや、ネットワーク・セキュリティに関する知識を広く問われます。また、合格のためにはビッグデータの取り扱いに関する知識も必要です。
さらに、IoTに関連する法的な知識、産業システムや戦略など、エンジニア視点ではなく、ビジネス視点からの知識も問われることが特徴です。IoT検定を取得することは、IoT全般に関する広い知識を有することの証明になります。
IoT技術者の育成を目的として実施される検定で、主に、IoTシステムの構築と活用に関する基本的な知識の習熟度が問われます。
初級・中級・上級の3段階にわかれており、段階的に学習しながら検定に挑戦することも可能です。IoT検定に比べると、技術的かつ実務的な専門知識を問うものになっており、エンジニアとしての能力をアピールしやすくなっています。
IoTを含む、組み込みシステムの専門家を目指す人のための国家資格です。資格を取得すれば、組み込みエンジニアとして一定のスキルやノウハウがあることの証明となります。
組み込み系システムの開発に関する広い知識や技能が問われ、高度なスキルが問われます。組み込みシステムに関する知識・スキルは、IoTエンジニアにとって必須のものといえるため、ぜひ目指したい資格といえるでしょう。
出典:エンベデッドシステムスペシャリスト試験|独立行政法人情報処理推進機構
IoTは将来にわたってさらなる発展を遂げていくと考えられる分野です。そして、IoTを専門とするIoTエンジニアも、IoTの発展に重要な役割を果たし、今後さらに企業から求められる存在になることでしょう。
IoTエンジニアは、IoTデバイスの設計からデータ解析まで多岐にわたるスキルが必要とされる職種であり、その分、挑戦のしがいがあります。IoTエンジニアを目指している人は、ここで紹介したことをぜひ参考にしてください。