アメリカのRiot Gamesが開発運営を手掛けるシューティングゲーム『VALORANT』。2020年のリリース以来その人気は高まっており、日本でも数多くのプロチームがプレイしています。
2022年4月には同タイトルの世界大会に日本代表として出場した「ZETA DIVISION」が3位に躍進。その快進撃はテレビなど多数のメディアでも取り上げられ、『VALORANT』の大会を観てみようと興味・関心を持った方も多かったのではないでしょうか。
ただ、現実のスポーツや競技を元にしたタイトルとは違い、銃撃戦をモチーフにしたFPSジャンルは全く知識の無い状態では「何が起こっているのか分からない」と、その観戦の難しさを指摘する声もよく聞かれます。
そこで今回は今もっとも注目を集めているタイトルと言える『VALORANT』に代表される「タクティカルシューター」ジャンルについて、改めてその基本ルールや観戦のポイントを紹介いたします。
『VALORANT』は互いに銃撃戦で敵を倒しあうシューティングゲームの一種です。格闘ゲームが2Dと3Dに区別されるようにシューティングゲームの中にも細分化されたジャンルがあり、『VALORANT』のように「2チームで攻撃側と防衛側に分かれて戦う」「一度倒されるとそのラウンド中は復活出来ない」ルールは「タクティカルシューター」と呼ばれています。さらに詳しく分類すると、本作は一人称視点の「FPS(First Person Shooter)」にあたります。
このジャンルの歴史は古く、1990年代から数多くのタイトルが開発されてきました。現在も『VALORANT』以外にもFPSは『Counter-Strike』シリーズや『Tom Clancy’s Rainbow Six: Siege』などのタイトルが多数のユーザーにプレイされており、根強い人気を誇るジャンルです。ここまでに挙げたタイトルはいずれも「5人1チーム」であり、これが概ねベーシックと言えるでしょう。
タイトルごとにルールの特徴はありますが、いずれのタイトルでも「爆弾の設置」を巡って争われるのが共通点であり、試合(ラウンド)の中でそれぞれの勝利条件が決まっています。攻撃側は「制限時間内に敵陣に爆弾を設置し起爆すること」で、防衛側は「爆弾の設置を阻止するか、設置された爆弾を解除すること」でラウンドの勝利となります。攻守を交代して複数のラウンドを行い、より多くのラウンドを勝利したチームが試合に勝利します。
▲この攻防が1ラウンド。『VALORANT』では12ラウンドで攻守が入れ替わり、先に13ラウンド獲得すると勝利。
戦いの舞台となるマップは入り組んだ構造にデザインされており、敵の視野を妨げる煙幕や曲がり角での待ち伏せやなど多彩な戦略による攻防戦が繰り広げられます。攻撃側は防衛側が待ち構える複数の陣地のひとつへと侵入しなければならず、攻めるタイミングを変えたりフェイントをしかけたりと、チーム全体の意思疎通が重要です。
攻撃側は、爆弾の設置前であれば、防衛側を全滅させることでもラウンドの勝利となります。また時には、防衛側は攻撃側を全滅させても爆弾の解除が間に合わず敗北となるケースもあり、目の前の敵を倒すだけではなく戦術的な駆け引きがポイントとなります。
また『VALORANT』など一部のタイトルでは、ラウンドごとに限られた資金から武器を購入する「マネーシステム」と呼ばれる要素が盛り込まれています。ラウンドを生き残れば武器を追加で購入する必要がなく、資金獲得の仕組みもあって劣勢のチームは相手よりも少ない資金で戦うことが求められます。弱い武器しか購入できない状態で相手に勝つのは非常に難しく、展開を先読みしながら資金というリソースを管理する能力も問われます。
このように「タクティカルシューター」は、シンプルな銃撃戦の強さだけでなくチームの連携力や試合全体を通じたマネジメント力を競う、総合力が求められるジャンルとして人気を集めています。
「タクティカルシューター」ジャンルの中でも『VALORANT』の人気の要因かつ大きな特徴となっているのが「エージェント」と呼ばれるキャラクターが持つ、多様なアビリティー(能力)です。
現在は20人以上のエージェントがゲーム内に登場しており、そのアビリティーの目的や効果は以下の通り実にさまざまです。
・敵にダメージを与える
・味方の体力を回復する
・通常より素早く移動する
・視野を遮る煙幕を張る
・遮蔽物を設置する
・敵の位置を探る
・閃光で相手の視界を奪う
・敵の能力を一時的に無効化する
などなど
これらを上手く活用することで相手より優位な状況を作り上げるのも『VALORANT』では非常に重要です。
試合ではエージェントの中からマップに応じた5人をピック(選出)しますが、相手が何を選んでいるかは対戦がスタートするまでお互いに分かりません。守備に特化したエージェントを多数ピックするチームや、煙幕を使えるエージェントを複数採用して視界のコントロールを重視するチームなど、どんなエージェントを選ぶのかという「構成」の要素もチームごとに特色が出るので、観戦の際には注目です。
環境によってはお互いに似たような構成になることも珍しくありませんが、全く同じ構成であっても使用回数が限られるアビリティーをどう使うかで個性が表れるので、チームや選手の特性によって試合展開が大きく変化することも珍しくありません。
ここまで基本的なルールをもとに「いかに銃撃戦以外の要素も重要か」を紹介してきましたが、この複雑な魅力が初心者にとっては観戦のハードルとなっているのも事実です。基本的に人数やアビリティーが多く残っているチームが有利ではありますが、試合映像では目まぐるしくカメラが切り替わる中で瞬時に交戦が行われるので「今どちらのチームがどのアビリティーを使って何人倒したか」というのは、普段からそのゲームをプレイしている人でも簡単には見て取れません。
初めて観戦する場合には難しい要素にこだわる必要はありませんので、まずはトップ選手の精密なエイム(照準操作)技術を堪能するのが、いちばん簡潔かつ「凄さ」が分かりやすいポイントになるのではないでしょうか。
素早いエイムによる連続キルは一見するとずば抜けた反射神経が際立ちますが、トッププロ選手はマップの形状や現状を完璧に把握して壁や煙幕越しにでも「相手が居る可能性の高い位置」を推察し、目視出来ない敵にぴったりと狙いを定めている例も見られます。試合中のリプレイなどでその正確な準備動作にも注目すると、また違った角度から選手の凄さが感じられます。