観やすさと競技性のバランスに課題

バトルロイヤルのeスポーツ大会ルールが進化中

#eスポーツ

一口にゲームと言っても数多くのジャンルが展開されている昨今、中でも対戦ゲームとして大きな人気が集まっているジャンルが「FORTNITE」や「Apex Legends」、「PUBG」などに代表される“バトルロイヤル”です。

 

バトルロイヤルとは「50人、100人など大勢のプレイヤーが生き残りを目指して同時に戦う」ゲームのことで、タイトルによってそれぞれ特徴はありますが共通したルールとして「広大なマップに散開したプレイヤーがランダムに配置されたアイテムを拾い集めて装備を強化しながら、次第に狭まる『安全地帯』の中で戦い、最後の生き残りを目指す」という要素があります。

 

また、ゲーム配信との相性も良く、アイテムを集める対戦以外の時間などで視聴者との交流もしやすく、人気のあるゲーム配信者がこぞってプレイしたことで、ゲームそのものをプレイしたことのない人や、あまり詳しくない人も視聴しているケース増え、バトルロイヤルは、今の日本で最もポピュラーなゲームジャンルになりつつあるとも言えるでしょう。

 

そんな絶大な人気を誇るバトルロイヤルジャンルは既にプロ選手による競技シーンも展開されていますが、そこにはいくつかの課題も存在します。特に、順位の決定方式は試行錯誤が続けられている部分です。

 

 

ランダム性の影響を減らすための「得点制」方式

 

バトルロイヤルゲームの試合には、運要素がとても絡みます。拾えるアイテムの良し悪しや、接敵するタイミング、安全地帯の場所などが試合ごとにランダムに変わるため、運が悪ければどれだけ上手くても負けてしまうこともありますし、その逆もまた然りです。これがバトルロイヤルの面白さではありますが、大会では一発勝負にしてしまうと結果が運に大きく左右されてしまいます。そのため、試合数を増やして総合成績で競う形式にすることで、運の要素を軽減することが一般的です。

 

ゲームの目的は「最後まで生き残って1位になること」で、チームメンバーが全滅した時点で脱落となり、その時点での生き残りチーム数が自分の順位となります。他のチーム同士でのつぶし合いが発生している状況で上手く立ち回れば、たったひとりしか生き残っていないチームが全く敵と戦わずに1位になることも可能です。しかし、バトルロイヤルでは例え1位になれずとも、画面で確認できる自分の順位を参考に不利な状況から少しでも長く生存する技術や、遭遇した敵を倒して自力で順位を上げていくことが重要な能力だと考えられています。

 

そのため“総合成績”の算出方法も独特で、規定試合数の中で「1位になった回数を競う」のではなく、その試合ごとの最終的な生き残り順位による「順位点」と倒した敵の数に応じた「キル点」を設定し、結果に応じて加算していった合計によって最終順位を決定するという「総合力を競う」仕組みが主流です。これにより「1位になれなくてもコンスタントに上位に残れる技術」や「敵を沢山倒して自らの順位を上げる技術」を評価に組み込んでいるのです。

 

 

△この順位点やキル点の内容を変えることで、その大会の特色が生まれます

 

ただ、この「得点制」は競技としての公平性は高いものの、大会の魅力を高める観点では万能ではありません。例えば、序盤の試合が順調で暫定的に上位となったチームが、後半の試合で他のチームから厳しいマークにあい、上手く得点を加算できず、逆転されてしまうケースはやや平等性に欠いて映る可能性があります。また、マークを受けても大いに得点を積み重ねるチームがいれば、残りの試合数でどうあっても逆転不可能な点差が開いてしまい「消化試合」が生まれてしまうケースもあり、やはり面白さを損ねてしまいます。

 

試合ごとに得点を集計しなければいけないため大会のテンポが遅くなってしまうのも難点で、何より視聴者にとっては状況の把握が非常に難しくなってしまいます。応援しているチームが今視聴している試合では1位になったのに総合順位では下位に沈んでいたり、実は試合の途中でもう優勝チームが決してしまっていたりと、見る人にとって「分かりづらい」と感じられてしまうのがこの方式の欠点とされています。

 

“王手”で分かりやすい「マッチポイント制」が登場

 

そこで最近採用されるケースが増えているのが「マッチポイント制」です。これは、予め試合数を決めずに前述の得点制と同様に得点を加算していき、規定の得点に達したチームが「次に1位を取ったら総合優勝」とする方式です。簡単に言えば、ポイントを積み上げたチームが「王手をかける」仕組みで、マッチポイントに到達したチームは以降の試合では得点をいくら加算しても意味が無いのでひたすらに1位だけを目指し、まだマッチポイントに到達していないチームは「加算を狙いながらも、マッチポイントのチームにだけは1位を取らせない」ことが求められます。

 

そのため最初に王手をかけたチームは「得点制」のルールよりも厳しいマークにあうことが予想されますが、1位になれずに試合数を重ねていけば、段々とマッチポイント持ちのチームが増えていきます。そうなると次第にマークが分散していき、最終的に接戦の展開になりやすいのがこの仕組みの特徴です。

 

△マッチポイントに到達したチームも得点は加算され、優勝が決まった時点での総合得点によって2位以下の順位を決定することも

 

これは得点制の評価システムを採用しつつ、「1位になったチームが優勝」で試合が終わるため華やかさがあり納得感も高いのが魅力です。ただ、優勝チームが決まるまで大会が終わらない形式のため消化試合は発生しませんが、その分終了時間が全く読めないというデメリットも存在します。マッチポイント到達直後の試合で1位を取れるような圧倒的なチームがいればストレート勝ちのような状態になることもあり、逆に拮抗した試合ではその何倍も試合数を要することもあります。

 

大会時間の長期化は視聴者が見づらいのも勿論ですが、大会運営にも緊張感の中で試合を続ける選手にとっても大きな負担です。現在主流となっているオンラインでの大会開催・中継ではまだこの方式を続けていけるかもしれませんが、今後オフラインで大会を開いて観客も動員したいと考えるならば、会場や交通機関の都合を大きく左右するため、時間が読めないことは大きな課題となるでしょう。

 

競技シーンはまだまだ成長過程

 

冒頭でも紹介したように、バトルロイヤルは急速に人気を拡大したとは言ってもまだまだ歴史は浅く、競技シーンも発展を続けている段階です。多数の参加チームから優勝を決めるのではなく上位進出チームを絞り込む予選では規定試合数の「得点制」を導入し、決勝戦に限って「マッチポイント制」を採用するなど、今なおベストな大会形式については模索が続いています。

 

大会方式は試合内容に影響を与える部分であり、技術を突き詰めたプロプレイヤー同士の戦いは睨み合いの持久戦になることが多いと指摘されることも多く、今後さらにルールやレギュレーションが洗練されていくことで、またその魅力を拡大していくことでしょう。

 

ユーザー数の広がりを考えればバトルロイヤルは今最も勢いのあるジャンルのひとつであり、多くの可能性を秘めています。プレイはしたことがあるけれど競技シーンを見たことがないという人も、一度見たけれど分かりづらくて見なくなってしまった人も、最新の大会の「見せ方」がどう変化しているのかに注目して楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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