受託開発事業実績

クリエイター自らが窓口になることで外注作業の手間を削減し、制作の効率化 & クオリティ向上を同時に実現。

株式会社ボーカゲームスタジオ

取締役社長 COO

佐藤 一信 氏(左)

代表取締役 CEO/Creator

外山 圭一郎 氏(中)

シニアアーティスト

茂木 大典 氏(右)

初のタイトル『野狗子(やくし): Slitterhead』のこだわり

ーボーカゲームスタジオ設立の背景について教えてください。

佐藤「弊社は外山圭一郎、大倉純也、そして私の3名で2020年8月に設立しました。もともと私たちは株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)に在籍しており、長年一緒に『SIREN』などのプロジェクトに携わってきました。
新規IPを創出することや、次々と新しいチャレンジをしていくSIEのマインドが非常に好きで、そこでの経験は本当に貴重なものでした。しかし、ゲーム業界の流れやSIEが目指す方向性が変わる中で、私たち自身が取り組みたいと思う目標と少しズレが生じてきたんです。それならば、自分たちの得意分野を活かし、まったく新しいチャレンジができる環境を作ろうと考えました。それがボーカゲームスタジオ誕生のきっかけです」

ーエクストリームが制作に参加した 『野狗子: Slitterhead』について概要を教えてください。 

佐藤 「私たちが目指したのは、ホラーとアクションが融合したアドベンチャーゲームです。舞台はアジア風の架空都市。プレイヤーは、他人に憑依(ひょうい)できる能力を駆使して怪物『野狗子』と戦います。この『街の住人に憑依する』という要素が、本作の大きな特色です」

茂木「通常のゲームでは、街中のモブキャラクターは決まった動きしかできません。しかし本作ではほとんどのキャラクターに憑依して操作することができます。憑依するキャラクターによって高速移動ができたり、逆に弱点があったりと、ゲームの戦略性や自由度が非常に高くなっています」

ー九龍城や香港の繁華街を思わせる、リアルな背景に驚きました

茂木「実は私がボーカスタジオにジョインしようと思ったきっかけが、九龍城風のリアルな背景をつくるという本作のデザインコンセプトだったんです。『九龍城や香港の街並みをベースに、リアルな背景を作ってほしい』というオファーは、ゲームの背景アーティストにとって非常にワクワクする仕事ですよね。こんな依頼を断る人はいないんじゃないでしょうか(笑)」

「1週間かかる工程が1時間で解決」エクストリームが外注作業そのものを効率化

ーエクストリームにご依頼いただいた理由を教えてください。

佐藤「最大の課題は内製スタッフの数が非常に限られていた点です。設立直後ということもあり、当時は私たち自身が制作を行いながら発注書や資料を準備しなくてはならない点が大きな負担になっていました。そのため外部に依頼するにしても作業工程を効率化し、コストを抑えた形で進める必要があったんです。エクストリームにご相談したところその点を十分に理解いただき、スムーズに制作体制を整えていただけました」

ーエクストリームはどんな作業を担当したのでしょうか。

茂木「主に3Dモデリングになります。ゲーム内で使用されるプロップ(小道具や背景の装飾品など)を約300個制作していただきました。使用ツールはMAYA、Substance 3D Painter、ZBrushなどになります」

ー効率化につながったポイントを教えてください。

▲アセットの共有にはGoogleドライブを、オンラインミーティングはGoogleミートを活用

茂木 「月に一度行ったオンラインミーティングが挙げられます。まず、弊社で発注書を作成し、その内容を毎月後半に開催されるオンラインミーティングでエクストリームに説明します。この窓口を担当いただいたのが、リード担当者のKeisukeさんでした。翌月1日からエクストリームのクリエイター陣による実制作が開始され、月末には納品が完了するという流れです。このミーティングが非常に効果的でした」

ーどのような点で効率化に役立ったのでしょうか。

茂木「今までのケースではまず発注書を外注先に送り、先方から作業日数の見積もりを受け取り、その結果を踏まえて発注書を書き直して……と、作業が開始するまでに複数の工程が発生していました。しかし、Keisukeさんとのオンラインミーティングではその場で発注書の内容を確認していただけます。Keisukeさんご自身がクリエイターなので『ここの工数は〇日かかる』『この工程は同じデータを流用すれば短縮できる』といった風に、スケジュールの判断はもちろん、効率化の方法までもご提案していただけるんですよね。通常は1週間かかる工程が1時間のミーティングで解決してしまうこともありました。
また、文章では細かなニュアンスが伝わりにくい場面がどうしても発生しますが、Keisukeさんとのミーティングでは口頭でフォローできます。例えば『資料が見つからなかったが、〇〇みたいな感じで』といった微妙なニュアンスも、口頭での説明でしっかりと反映していただけるので、発注書制作の負担が軽減されました」

ー制作物に関するクオリティアップの観点で、お手伝いできた部分はありますかー

▲古い建物にある設備などは古びた質感を再現してもらいました

茂木 「あるシーンで、悪そうな人たちがタバコを吸いながら麻雀をしている空間を制作したいと考えていました。ただ、中国式麻雀については私自身全く知識がなく悩んでいたんです。それでKeisukeさんに相談したところ、『過去に麻雀を題材にしたゲーム「桃色対戦ぱいろん」を制作したことがあるので、うちに知識がありますよ』とおっしゃってくれて、役の揃え方も再現していただきました。実際にX(旧ツイッター)で『この麻雀シーン、ちゃんと中国式を分かって作ってる!』と反応してくれる人もいましたよ。
また、開発スケジュールに合わせたフレキシブルな対応にも助けられました。依頼するアセット数の増加はもちろん、契約期間を延長したいと依頼した際も快くお引き受けいただきました。このような柔軟かつ専門的な対応のおかげで、限られたリソースの中でも高品質な制作が可能となりました」

会社の垣根を超えた、クリエイター同士の会話がクオリティにつながった

ー『野狗子: Slitterhead』に対する反響はいかがでしょうか

佐藤 「リリース直後から、特に背景のリアリティについて高い評価をいただいています。SNSでは『九龍城の描写が圧巻』『ステージを歩き回るだけで楽しい』といったコメントを多く目にしました。先日出張で中国に行ったのですが、現地のゲームファンも描写のリアルさをほめていましたよ」

茂木「ゲームに出てくる九龍城風の都市といえば、サイバーパンク風にアレンジしたデザインが多いと思うのですが、地に足のついたリアルさで再現したゲームは少ないと思います。その点は弊社としても非常にこだわっていて、『この店では肉団子を売っているから、ここに小麦粉の袋を置こう』といった風に、ディティールには非常に気を配りました。『神は細部に宿る』という言葉がありますが、細かな所まで世界観をデザインした結果がユーザーにも届いたのかなと思います」

佐藤「まだ構想中の段階ですが、フォトモードなどのアップデートも構想しています。プレイヤーの皆さんには引き続きゲームを楽しんでいただければ幸いです」

ー最後に、御社が考える「こんなクリエイターと働きたい」という人材像を教えてください。

茂木「一言でいえば、クリエイター同士の会話ができる人ですね。作業者としてではなく、お互いのアイデアを面白がって、よりよいものに昇華できるような方と働きたいです。その点でいえば、Keisukeさんは理想の人材ですね。特にプロジェクト後半は仕事以外の会話もたくさんできて、その中から新しいアイデアが生まれることもありました。会社の垣根を越えて、社員が一人増えたような感覚で仕事ができたと思います。制作物のクオリティにも満足していますが、『一緒に楽しく仕事ができた』と素直に感じられたことが、非常に嬉しい経験となりました」

まとめ

・リード担当者とのオンラインミーティングで課題を共有することにより、制作スピードが向上
・背景の制作イメージを画像共有や会話などでコミュニケーションすることで、仕様書制作のコストを軽減
・スケジュールや依頼内容の変更にも柔軟に対応し、タイトルのクオリティ担保に貢献

佐藤様、茂木様、ありがとうございました。今後も最大限のサポートをさせていただきます。

※本インタビューは2024年11月に実施されました。インタビューの内容は取材当時のものになります。

お問い合わせはこちら