ITとはかけ離れた分野の仕事をしている人にとって、IT業界はどのようなイメージがあるのでしょうか?今となってはあらゆる領域にITが入り込んでいるため、仕事で関わることがなくとも、ITの先進的なイメージやニーズの高まりを感じる機会は増えているのではないでしょうか。そうしたポジティブなイメージがある一方、IT業界は労働時間が長い、休みが取れない、など労働環境についてネガティブな情報も多く、実際にそうした状況もあり、慢性的な人手不足は業界の課題であると言えると思います。そうした背景から国や各企業の改善への取り組みは、働き方改革が叫ばれるようになってさらに増加しているようです。では実際のところはどうなってきているのか、調査データから説明します。
そもそもIT業界とは、どういった業界を指すのでしょうか?よく取り上げられている分類としては「インターネット」「通信」「ソフトウェア」「ハードウェア」「情報処理」に分けられているようです。こうした便宜上の分類もあるものの、完全に縦割りという訳ではなく、横断的に展開している企業は多く存在しています。
では、実際のその労働実態はどうなっているのでしょうか?IT業界の中でも、その仕事は様々で、業界の分類も合わせて、それぞれの仕事の内容によって労働実態は異なりますが、冒頭でも説明した通りネガティブなイメージを持つ人がかなり多いのではないでしょうか。
まず、IT業界の有給休暇取得率を見てみると、「60%越~80%以下」の企業が最も多く45%となっていて、取得率がそれより高い企業と合わせると全体の52%になります。日本企業全体の平均有給取得率は51.1%となっているため、IT業界は平均よりやや有給休暇取得率が高いと言えます。また、過去3ヶ年における労働時間の実態変化を見ると、有給休暇取得率が改善した企業は54%と、ここ最近でポジティブな変化が起きていると言えそうです。
直近1年間の月平均所定外労働時間は「20時間未満」がほぼ半分(49%)となっており、一日当たりの残業時間は平均で1時間未満に抑えられていることになります。また、過去3ヶ年における労働時間の実態変化を見ると、1ヶ月あたりの所定外労働時間改善した企業は64%となっており、同じくポジティブな変化が起きているようです。
職種の中でも特にITエンジニアは労働時間でネガティブなイメージがより強いようですが、実際は過去数年で見ると緩やかではあるものの総労働時間は減少傾向にあるようです。
有給取得率や労働時間については、もちろん企業規模などによる差はあるようですが、多くの人が抱くようなイメージとは良い意味で乖離してきているようで、概ね改善に向かっていると言えそうです。
IT業界は働き方改革に伴い、徐々に労働環境は改善されてきていることは前述の通りです。一方で、ITニーズの拡大により人材不足が大きな課題となっています。IT人材は2019年時点で26万人以上の人材が不足しているという調査結果が出ており、2020年には30万人以上、2025年には36万人以上、そして2030年には44万人以上の人材の需給のギャップ(需要に対する供給不足)が拡大すると予想されています。
主な解決すべき課題として、生産性の向上や今よりもニーズが高まると予想されている先端技術(AIなど)のスキル習得者の増加が挙げられていますが、既に国や企業が人材不足に対して解決に乗り出していることもあります。日本では2020年より義務教育でIT関連の科目が増えることが決まっており、学生時代にプログラミングなどを勉強する機会を増やしIT企業で活躍する新卒の割合を増やす取り組みや、企業によっては外国のエンジニアを雇用することで、IT人材を確保しようという動きもあります。
今回はIT業界の労働実態や抱える課題について説明しました。IT業界はネガティブなイメージを持つ人もいますが、働き方改革や各企業の取り組みにより労働状況は改善の傾向にあります。そして現在、既にITに接する場面が日常化している中で、特定業界のみならず、あらゆる業界での課題解決に先端IT技術への期待感が高まっています。その点では将来性があり、ますますのIT業界へのニーズ拡大への基盤が出来上がってきていると言えるかもしれません。