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RTA in Japan Winter 2023現地レポート&主催者インタビュー

#eスポーツ

ゲームのクリアタイムを競う「RTA」の大型オフラインイベント「RTA in Japan Winter 2023」が、2023年12月26日から31日の6日間の日程で開催されました。

 

 

「RTA in Japan」は2016年にスタートした日本最大のRTAイベントで年2回、8月と12月の開催が恒例となっています。開催期間は数日間にわたり、リレー形式で多数のタイトルのRTAチャレンジをする方式で行われています。冬は会場でオフライン開催、夏は常にオンライン開催となっていましたが、2020年からはコロナ禍の影響によりオンライン開催が続き、2022年からオフライン会場が復活。2023年8月開催の「RTA in Japan Summer 2023」は配信の同時視聴者がピーク時には10万人を超えるなど、大きな注目を集めるイベントへと成長しています。

 

今回はそんな「RTA in Japan Winter 2023」の模様を、現地レポートと主催者へのメールインタビューで振り返ります。

 

「現地ならでは」の楽しみの味わえる会場

 

会場となったのは東京のイベントホール「ベルサール飯田橋ファースト」。入場登録と新型コロナウイルスのワクチン接種証明書が必要になりますが、入場料は全日程で無料です。

 

メインホールでは最前列にプレイ用のエリアが設けられ、観客はその後ろに200席程度配置された観覧用座席から正面の大スクリーンに映し出される映像でプレイを見守ります。

 

 

プレイ席ではRTAに挑戦する“走者”に加え、タイトルに詳しくない視聴者も楽しめるように補足情報を紹介する解説者が参加するケースもあり、見事なテクニックが披露されるプレイ中にもゲームに関する情報や豆知識など軽妙なトークが繰り広げられるのも本イベントの特徴のひとつ。好プレイには、どよめきや拍手が巻き起こり、時には笑い声もあがるなど、会場内は非常に和やかなムードで進行していました。

 

今回の開催では、6日間の日程で多種多様なジャンルから実に90以上のタイトルがプレイされ、その所要時間は10分程度でのクリアが想定される挑戦から5時間以上を要する長丁場のタイトルまで幅広く、中にはゲームセンターと中継を繋いでのアーケードゲームRTAや、複数人の走者が“並走”してタイムを競う形式など、趣向を凝らしたチャレンジも見られました。

 

タイムアタックという性質上、好タイムが記録されると予定より進行が“巻く”こともありましたが、その場合は「バックアップタイトル」と呼ばれる追加のプレイが随時行われました。また、プレイ席を2ヵ所用意することで、片方の席でのプレイ中であってももう一方で次のタイトルの設営が進められるようになっており、最新タイトルからレトロゲームまで多彩なハードウェアを使用する環境でもスムーズに次へと移れる工夫がなされていました。

 

 

日頃の練習で身につけた技術を披露し、イベントを盛り上げる走者はもちろん、状況によっては出番が回ってこない可能性もある条件下で準備を進めているバックアップの走者や、ボランティアによって構成されるスタッフの努力によって視聴者・来場者を待たせることなく滞りない進行が実現している様が印象的でした。

 

取材日は平日にも関わらず会場内の半分近い座席が埋まっており、あえて後方の席でゆったりと観覧する方から、プレイされるタイトルのグッズを持って走者を応援している方まで、来場者は思い思いのスタイルで楽しんでいるようでした。また、関連したタイトルは連続でプレイされるスケジュール設定もあり、作品をまたいで長時間観覧している方も多く、現地の様子は配信上でも紹介されているため特別感も味わえたのではないでしょうか。

 

夜間でも長時間のインターバルなく一晩中プレイが続くのも本イベントの特徴で、会場周辺に宿を取って観覧する方や、夜通しで観覧する情熱的なRTAファンの姿も。会期の終盤は年末の休暇と重なり、注目度の高いタイトルのプレイが行われたタイミングでは、立ち見が出るほどの来場者が詰めかけた時間帯もありました。

 

また、「RTA in Japan」はチャリティーイベントとして行われており、イベントの収益は今回も「国境なき医師団」へと寄付されています。今回も会場内やオンラインストアで販売されたオリジナルグッズやアパレルの収益が寄付される仕組みになっており、実際に「国境なき医師団」の活動紹介を展示するブースも設けられていました。

 

グッズ販売を介さない直接の寄付も受け付けている他、RTAの条件やルートを寄付額に応じて変更する「寄付額投票」システムも導入されています。これは提示された複数の条件からユーザーが最も見たいと思う選択肢に任意の金額を寄付でき、最も多くの額が集まった選択肢が実際に採用となる仕組みです。

 

投票制のため寄付したからと言って必ず望んだ条件のRTAが見られるわけではなく、直前でプレイする内容が変化する走者にとっても大変さがあるはずですが、条件を柔軟に設定できるRTAならではの特色を生かしたアイデアであり、実際に多数の寄付が集まるきっかけになっているように感じられました。

 

そんな「RTA in Japan Winter 2023」の会場内では、RTAが行われるメインホールの隣に小規模なサブホールが設けられており、走者や来場者がコミュニケーションを取る場として活用されていました。来場者がハードウェアを持ち込み実際にゲームをプレイして交流できるだけでなく、一部のエリアでは「RTA道場」として実際に配信上でプレイした走者からテクニックのレクチャーが受けられるイベントも実施されており、現地に訪れた人ならではの「RTA入門」が体験できるようになっていました。

 

RTAは配信や録画でプレイ映像を見るだけでも十分な情報が楽しめるコンテンツであり、なかなか「オフラインで見る」ことの特別感は伝わりづらいジャンルかと思われます。しかし今回訪れた「RTA in Japan Winter 2023」の会場は現地でしか味わえない体験や臨場感に満ちており、他のゲームショウやeスポーツ大会とも異なる、同じタイトルを愛するプレイヤー同士のコミュニティや結びつきを強く感じられる空間となっていました。

 

主催者にメールインタビュー

 

次回開催となる2024年8月の「Summer 2024」についても告知されるなど、盛況のうちに6日間の日程を終了した「RTA in Japan Winter 2023」。

 

 

年末を大いに盛り上げた本イベントについて、主催の一般社団法人「RTA in Japan」代表の「もか」氏にメールインタビューで感想や今後の展望を伺いました。

 

─「RTA in Japan Winter 2023」を振り返っての所感をお願いいたします。

 

 今回、寄付額が過去最高を超え、今までよりもチャリティに対する関心が広がったと思います。イベントについては全体としてつつがなく進行できたと思います。前回より多くの方に来場いただき、嬉しく思います。

 

──寄付額で挑戦ルートが変化するシステムを取り入れた背景と、それについての反響や感想があれば教えてください。

 

 海外のRTAイベントにてこのような寄付額チャレンジが行われており、視聴者が参加でき、かつ寄付への関心を持ってもらえる良い取り組みだと思い、導入しました。投票を通じて、その投票をしたタイトルの視聴への思い入れや、寄付に参加したことによる一体感をより感じられるようになればと考えています。

 

──次回の「RTA in Japan Summer 2024」は7日間の開催になると発表がありましたが、設備が整っていて長期に渡って利用できる施設の選定は非常に難しいのではないかと思われます。特にRTA in Japan24時間体制というハードルの高さもあると思いますが、施設や日程を決めるにあたって重要視している点や大変さがあれば教えてください。

 

 施設については、イベントに来られる方々をなるべく収容できる広い会場というのを重要視しています。100時間以上連続で借りられる広い会場が必要ですが、現時点で入場料などはとっていないため予算が限られ、その中で借りられる会場を工面してきています。今までイベントに興味のある方が会社に掛け合っていただいたり、周りの方の大きな助けのおかげで成り立っています。

 

 日程について、参加者は日常の生活や仕事がある中でイベントに参加されるので、なるべく休みを取りやすい日程(お盆や年末)にしています。

 

──ここ数年、日本でもRTA人気が高まっているように思われますが、RTA in Japanの主催者としてどのように感じていますか。また、それを実感するような出来事はありましたか?

 

 RTAコミュニティだけではなく、様々な場面でRTAに関する話題を耳にする機会が増えたように感じます。RTAの普及はRTA in Japanの目標でもありますので非常に喜ばしく感じております。

 

──次回以降の開催に向けて「こうしたい」という展望や、意気込みをお願いいたします。

 

 次回は初めて7日間の開催になります。開催期間が伸びたことでより多くのRTAを披露できるようになりましたので、楽しみにしていてください。

 

まとめ

RTAという遊び方もゲームファンにすっかり浸透し、恒例行事として毎年大きな話題を呼ぶ「RTA in Japan」ですが、実はRTAイベントは「RTA in Japan」以外にも時期や地域を問わず各所で行われており、走者が練習の様子を配信することも多いため、意外と触れ合う機会は少なくありません。

 

懐かしのレトロゲームも数多くプレイされ、入り口として自分の好きなタイトルが選べるなど、身近さも魅力のRTA。そのコミュニティのお祭りとも言えるオフラインイベントはこれからさらに盛り上がることでしょう。2024年8月開催の「Summer 2024」に向けて、今からでもRTAの世界に触れてみてはいかがでしょうか。

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